山ちゃんのこと③
2021年の梅雨は、ことのほか蒸し暑く、雷雨・強風が多かった。
京都は本当にうんざりするほど湿度が高い。
ヤギさんにとっては良い環境とは言えないのかも知れない。
会社の土地は、北側に山があるのですが、樹木の間を吹き抜ける風は突風のごとく。なかなかに厳しい環境の場所です。高台にあるので、眺めはよいのですがその分日陰が少ない。
ヤギさん達にとっては強い日差しも辛いものだと思います。
簡易テントを張ったり、シートで陰を創ったりしましたが、環境が厳しく施設してもすぐに壊れてしまいます。
そんなことを考慮して、小屋を敷地の南側に作られたのだと思います。
が、そこは…
私がいる事務所からはとても遠くて、7月の頭には既に雑草が膝の上位まで伸びてきていました。そして、なにより水栓がない。レンタル会社の方は数日置きにしかお水を換えに来ていなかった。そして、その時に簡単に小屋掃除をして帰っておられた。
せめて小屋は綺麗に保たれている…そう思っていた…
そんな時、雨の続く日が数日。
食べ物のなかったヤギーズは遠くから見てもお腹を空かせているのが明白でした。普段のお世話はレンタル会社の方がやる…そう言っておられた。
でも、どう考えてもあまりにも何も出来てない。
見かねて、山からどんぐりの樹を切り、竹を切り、小屋まで届けました。
そこで見たのは…
うんちや枯れ葉でどろどろに汚れた小屋でした。
※どんなに酷い状況でも写真を載せようかと思っていましたが…やっぱり今見返してもとんでもない状況で。どうしても載せられませんでした…
愕然としました。
急いで小屋を掃きました。
ヤギーズは飢えたように切ってきた樹木を食べました。
なに、これ…こんなことでええの?
あかんやん!!!
怒りでいっぱいになり、レンタル会社の方へ連絡。食べ物も届けるように要請しました。
その時も山ちゃんは、チョウロウに食べ物を取られており、雨宿りも床下でしかできない状況でした。やっぱり角のある雄には勝てないよね…
この頃のチョウロウは、私たちにも頭突きしてきました。あの大きな角で力いっぱいかかって来られると、本当に怖くて…。対処の仕方も分かっていなかったので、迂闊に近寄れない、というのが本音でもありました。
その翌日の7月9日の午前中。
強風と落雷と稀に見る大雨がありました。
私はヤギーズが気がかりでならず、防犯カメラのモニターで数分おきに様子を見ていました。なんとか4匹とも雨は凌いでいるようでした。
午後…山ちゃんが、朝からずーーっと同じところに同じ姿勢で座っているように見えた。嫌な予感がして取る物も取敢えず小屋へ駆けつけた。
傾いてしまった小屋の奥は雨水で浸され、うんちとおしっこが混濁していました。その中に、山ちゃんは座り込んでいました。動かそうとしたけれど、後ろ脚が固まっていて動かせなかったのです。
弟も駆けつけました。二人でなんとか小屋の中の水を掻き出し、山ちゃんを抱えられないかやってみましたが、無理でした。
その場から電話でレンタル会社の人に悲鳴をあげました。
数時間後、数名で来られて動けなくなった山ちゃんを、隔離できる場所へ運び込みました。その悲しい様子に言葉も出て来ず。
山ちゃんは、なぜ動けなくなったのか…。
その時はまだ「要麻痺」というものが有る事も知らず。
冷静に考えれば、激しい冷えで人間も動けなくなる。温めてやればよかったのか…それすらも分からず…何も出来なかった自責の念でいっぱいになりました。
山ちゃんは、お腹を壊した状態で、後ろ脚が動かなくなりました。
身体もどろどろになって…タオルで拭いたりもしましたが、あまりきれいにならなくて。ありあわせで敷いたスノコの上に座らせて、食糧になる草と、お水とお塩を傍に置いてレンタル会社の方は帰られました。
ちょうど土曜日でお医者様を呼べず…
様子を見るという事に。
でも、傍に置いた草など、あっという間に無くなった。
私も草を刈って山ちゃんに届けました。その時はガツガツと生命力ある様子で食べてくれていた。警戒心が強かった山ちゃんが逃げられなくなり、やっと私は傍に座って体を撫でてやれました。その時の山ちゃんは、私を嫌がる風でもなく、隣に座ると安心したような目をしてくれたように思います。
触れた背中はガリガリでした。毛足も短くなっていた…。
劣悪な環境が引き起こした結果なのかと思うと申し訳なくて。
また、この時期にタイミング悪く母が入院・手術。私は付き添わなくてはならなくなり、十分に山ちゃんの様子を見てやることもできず。
何とか月曜日まで生きてほしい。
お医者様に診て頂くことで回復してほしいと願うばかりでした。
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