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目に見えるもの、肌に感じるもの、耳に届く音、私はどんな風に表現していただろうか

先日、「言葉と遊ぼう」というワークショップに参加した。

その日のワークショップの内容は、「外を歩いて、見えるもの聞こえるもの肌に感じるもの全てを言葉にしてみること」

細かな決まりごとはなく、ただただ文章を書くこと。どんなことでも良いので、書いていく。

10分ほど会場の近くを歩いて、見えるもの聞こえるものを言葉にしていく作業は、想像以上に楽しかった。

と同時に、普段、いかに無駄なく書くかだけを意識しているのかもわかってきた。

そして、自分の中の言葉のストックがなくなっているようにも感じた。
よく使う単語だけがどんどん湧いてくるのが、ちょっと寂しかった。

会場に戻って、みんなで文章を読みあった。
同じような場所を歩いていたのに、浮かぶ情景が全然違っていて、物事をとらえる視線、場の設定の仕方、言葉のチョイスもそれぞれに個性があっておもしろい。

ワークショップが面白すぎてトイレに行くことさえできないという場面からスタートする人、情景描写で空間を表現する人、空を見上げてベンチに腰をかける自分から物語を連想させる人、擬音語や擬態語が豊かな人、固有名詞の選択が読者を置いていかないくらいのちょうどよいけど個性が見える人、ハードボイルドな人、人の描写多くて人が好きなんだなとわかる人。

言葉は多彩で豊かだということをしみじみ感じながら、
自分が普段、わずかな言葉を、小さくねばっこくこねくり回して表現していたのだと気がつく。

私は、誰かの書いた文章を読むたびに、この言いまわしうますぎる、このたとえ私には思いつかないな…、なんだこの美しい終わり方は…と、人のセンスに嫉妬しまくっていた。

だけど、ワークショップの主催者の ヨーリックさんは、自分の表現の特徴や良さを知った上で、他の人の良い表現を知れば、より自分の表現の幅を広げてくれると教えてくれた。

例えば、私が書く文章は、ひらがなと漢字とカタカナのバランスが読み易いと言われた。

この良さを残して、擬態語や固有名詞を上手く取り入れたり、人の外見や内面の描写を変えてみたり、情景描写の視点を高くしたり低くしたりすることで、より表現の幅を広げていけばいい。

羨ましがることはないのだ。

人によって切り取り方も見せ方も違うことを知り、自分の中の表現の引き出しを増やしていけばいい。


周りの変化するスピードが目まぐるしくて、自分が置いてけぼりになるのが怖くて、焦って、見るもの聞くもの感じるものをいかに少なくしていくかに、私はこだわっていたことがある。

見るもの聞くもの感じるものが少なくして、それにこだわっていけばいいと思っていたんだけど、だんだん窮屈になって、どんどんつまらなさが増していくのを感じた。
でも、その窮屈さや退屈に感じる理由に気がつかなくて、焦って、早くなんとかしたいと、もっと苦しくなっていた。

周りの変化のスピードに自分を合わせたり、自分の変化を止める必要なんてなかった。

早い、シンプル、端的にが良しとされることが多い時代ではあるけれど、
柔らかく、ゆったりとした足取りで進んでいく時間があってもいいんだよなぁと思う。


あの日、いつもよりゆっくりと街を歩いて、
浮かんだ言葉を羅列していっただけなのに、
私の視線は、指先から月へと移動していた。

深く深く呼吸をしている自分に気がついた。


言葉と遊ぼうのことを書いている、素敵なnoteがあるので、ぜひ読んでほしい。

人の品は、自分を生きることを諦めないところからくる、とズーニーさんがつぶやいていたのだけど、まさにそんな人!だと思う、きゅうたろうさん。
優しくまっすぐで少しツンとしてくる文章が大好き。

エモいの使い方ってよくわからないけど、私の中のエモい代表のすなふ。
一度、すなふの眼鏡で物事をとらえてみたいと思うほど、選ぶ言葉と描写の視線がすなふ色。


文章は一人で書くものだと思っていたけれど、
文章を構成するあらゆるものは、決して一人ではつくれないものばかりだなぁと感じた夜だった。


何度か歩いたことがある道を2月14日の20時に、スマホだけを手にして歩いてみる。
不思議と赤い色が目に入る夜。
小さな紙袋を持った女性とすれ違う。
渋谷駅から原宿駅に向かう人たち。
原宿駅から渋谷駅に向かう人たち。
道路には行き交う車。
スマホを見ながら歩く男女。
2人の女の子が同じお店の袋を持って歩いている。
マスクをして歩く男性が足早に追い越していく。
お客さんを呼び込むホッドッグ屋さんの店員さんは赤色のベンチコートを着ていても寒そうだ。
ホットドッグは、400円から。
身につけているコートのファーがふわふわと私の頬に触れる。
ビルの2階の美容室の中で掃除をしている人がいる。
ハンバーガー屋さんの入るビルから、音楽が流れ始めた。

ありがとうございます。ロックンロールと生クリームとマンガと物語に使いながら、自分の中のことばを探っていきまます。