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映画の感想: 「銀河鉄道の父」を観て

   

映画「銀河鉄道の父」について、簡単に説明した後、私の感想を述べてみます。

1 監督・出演者など


 監督や出演者は次の通りです。
  監督: 成島出
  原作:門井慶喜『銀河鉄道の父』 
  宮沢政次郎:役所広司
  宮沢賢治:菅田将暉
  宮沢トシ:森七菜
  宮沢イチ:坂井真紀
  宮沢喜助:田中泯
  宮沢清六:豊田裕大
  
※    上記はHP 映画ナタリーから引用しました。 
  https://natalie.mu/eiga/film/191018

2.感想


2.1 宮沢賢治について


 日本で生まれ育った人であれば、宮沢賢治を知らない人はいないでしょう。そして宮沢賢治と言えば、まっさきに「雨ニモマケズ」という詩を思い浮かべる人も多いでしょう。21世紀の今も、彼の書いた物語は多くの人に読まれ続けています。

2.2 「雨ニモマケズ」の真相は?


 有名な人物であるが故に、彼の作品や彼自身について、さまざまな研究がなされたりしています。例えば、映画の中でも重要な1場面になっている「雨ニモマケズ」に関して述べます。この「雨ニモマケズ」という詩は、彼が熱心に信仰した法華経の常不軽菩薩の精神を述べた詩であるとする説があります。(注1参照)また、実際にこの人物のモデルがいて、それは斎藤宗次郎という人がいたとする説もあります。(注2参照)
 これは詩というよりも、賢治が不治の病になり、そのことを知った彼が、「こんなことが出来たら良いのに」と、自分が理想と考える自分の気持ちを素直に書いたメモだったと思います。

(注1)
[こころの時代] 宮沢賢治「雨ニモマケズ」に現れる「デクノボー」の正体とは
https://www.youtube.com/watch?v=R_c1kal2psE
宮沢賢治が「雨ニモマケズ」に秘めた本当の意味とは?|こがみのり
https://www.youtube.com/watch?v=MSXNIa-gYNA
(注2)
飯盛野教会のHPより
宮沢賢治の「雨ニモマケズ」にはモデルがいた
https://iimorino-church.com/work-blog/april-12-saito-sojiro-2021/

2.3 映画は史実と異なる


 この映画を見た人の中には、映画は史実といくつか異なっていると批判する人もいるだろう。例えば「雨ニモマケズ」という詩は、賢治が亡くなった後で見つかったのであり、映画のシーンとはことなるということなどです。しかし、この映画は門井慶喜の書いた長編小説を映画化したものであることを考えると、一つの創作した映画作品として鑑賞すれば良いと思います。

2.4 映画のテーマは?


 この映画は親と子の間の葛藤、対立、和解、そして理解し合うことを描いた家族の物語であると思います。若くして亡くなった妹と、そして何よりも父が賢治の一番の理解者であり、賢治の作品の愛読者だったのだと聴衆に訴えています。これがこの映画のテーマだと思います。それをよく表した1場面が、賢治が自分の作品を「自分の子ども」に例えると、「それでは、それは私の孫である」と父は応じているシーンであると思います。

2.5 印象に残った場面


 この映画のテーマの視点からこの作品を振り返ると、大変印象に残ったことが何点かあります。

第一に、映画の初めの頃、賢治が病気になった時、父親が病院に寝泊まりしながら看病する場面であります。通例であれば、当時は母親が看病したのでしょう。しかも、下手ながらも父は子守唄を歌っていました。

第二に、妹の葬儀の場で、賢治は自分の家は浄土真宗であるにも拘わらず、手太鼓をたたきながら自分が信仰する法華経を唱えながら出て来ました。一見すると、葬儀の妨害とも思えますが、父は「自分の思うやり方で、妹を弔ってやればよい」との趣旨を述べて、賢治を叱りませんでした。父の心の広い一面が描かれています。

第三に、この当時の学問に対する一般の人々の考え方、「へたに学問にはまってしまえば、理屈ばっかり言って、ろくなもんじゃない」との周囲の言葉に同調せず、父は賢治の気持ちを汲んで、進学を認めました。そして、その後も賢治を温かく見守り、賢治の行動を認めつづけたのです。

3.まとめ


「宮沢賢治とはどんな人物だったのか?」という実像を知りたいと思い、この映画を観ると失望すると思います。なぜなら、賢治がなぜ熱心に法華経を信仰したのか、法華経の教えと彼の作品の内容とはどんな関係があるのか、そして彼の思想的な面については触れられていません。(注3)

しかし、この映画は映画の題名通り、「賢治の父が賢治の一番の理解者であったことをテーマにした映画」であることを考えるべきであります。その視点からこの映画を観れば、この映画には父親が息子のことを案じたり、愛情を注ぐ場面がふんだんにあります。この映画はは、父親と息子の間の素晴らしい愛情物語を描いた映画だと思います。

(注3)
宮台真司氏による宮沢賢治の思想的な面についてのコメント
「宮沢賢治は右翼だった 『銀河鉄道の夜』を僕が読み解くと」
https://www.youtube.com/watch?v=7rg5A6-f-Wo&t=688s&pp=ygUZ5a6u5rKi6LOi5rK7IOWuruWPsOecn-WPuA%3D%3D

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