少年野球⑪:野球の原点を知る!
もともと別々のチームにいた子が集まる、選抜チーム。
でもそこは、さすが子供たち。仲良くなるのは早いし、野球で勝つ、という同じ目的で一生懸命やっているうちに、互いに気心が知れてきて、信頼感が生まれてくる。
親から見ていても、ちょっと前まで全く知らない他所のチームの子なのに、顔と名前に加えて性格も何となくわかってくると、親近感が(勝手に)沸いてきて、俄然応援に熱が入ってくる。
さて試合になると、いろんなチームから来た寄せ集めメンバーのチーム故、最初は個々の特性や力量もよくわからないので、監督さんは子供たち各々が希望するポジションを試合前に複数申告させ、順番にいろいろやらせていた。
この、希望するポジションを守れるというのは、少年野球では実はすごいことで、なかなかないことだと思う。
所属チームでは、いくら希望しようが、そのポジションに不動のレギュラーがいれば、試合はおろか練習でもやる機会をもらえないことが多いはず。
少なくとも息子のチームでは、そうだった。
息子と一緒に参加した、あるチームメイト。
かねがねピッチャーをやりたがっていたが、お前がピッチャーなんてあり得ないというチームの状況だったので、練習の合間にオマケ程度に投球練習するくらいだったけれど、この選抜チームでは希望が叶い、試合でも登板の機会を与えられた。
勿論、投球フォームをちゃんと教わったことも殆どないから、四死球連発だし、たまにストライク取れても痛打される。
でも本人は、やりたい野球ができることがとても嬉しそうで、実に楽しそうにしている。
これこそ、野球の原点ではないか。
彼は所属チームでは常に控えで、試合に出る機会も少なく、いろいろ叱られることも多かった。
でも、この選抜チームではそんなことから解放され、笑顔でプレーしている。
その姿は微笑ましく、ついついこだわる勝ち負けを超越した、子供の遊びの延長としての要素を思い出させてくれた。
息子もそうだったけれど、子供が最初に体験する「野球」って多くの場合、ピッチャーとバッターの2人だけで、ゴムボールとプラスチックのバットを使って、その辺の空き地や公園でやる遊びではないだろうか。
この、バッターとピッチャー兼全野手の対決。これがどれだけ楽しいかは、野球をやったことのある方々なら、みんなわかるはず。
話が脱線したけれど、最近はそんな野球遊びができる公園や空地がなかなか無いか、あっても近隣住民からの苦情で、禁止されたりするご時世である。
(それでいて、自分たちはそこでゲートボールやったりする。。)
遊びの延長で純粋な野球の楽しさを知る機会を持てないから、いきなりチームに入ってガチで野球やっても馴染めず、親子共に心が折れ、結果として野球離れが進んでしまうのだと思う。
さて、もちろん本人の希望に任せて気分よくプレーさせればよいというものではなく、それで試合に勝てるほど甘くはない。
なので相変わらず、連戦連敗は続く。
しかし、このチームの監督さん。勝ちに行く采配はほとんどやらず、必ず全員を試合に出すことを最優先させる。
序盤にスタメンが頑張ってリードして、今日こそ待望の初勝利か?という展開になっても、試合後半になると全員を交代させ、あえなく逆転負けしたということもあった。
勝利至上主義とは真逆である。
後で聞いたところによれば、この監督さんは自身の所属チームでも同じポリシーを貫き、大事な公式戦でも敗退を続けて一部のレギュラー陣とその親から不興を買ったこともあったらしい。
それでも、オレは絶対に辞めない!と言って、今日に至るそうだ。
頑固だけど、筋の通った、胆力のある監督さんである。
チームメイトの凡プレー連発に苛立って試合中に不貞腐れた態度を見せた子には、即座に交代させて叱り飛ばした。
ゴロを打って走ればセーフになれる俊足の左打ちなのに、怖がってバットを振らない子には、口酸っぱく自信と積極性を求めた。
そしてうちの息子にも、三振して「あぁ~」って顔で首をひねってベンチに帰ってきたら、お前は本当は打てる、だからそんな顔せず堂々としろ、と一喝した。
所属チームの垣根を超え、どの子にも分け隔てなく愛情を持って熱い気持ちで接する。
時に厳しく怒るけれど、嫌らしさが無くわかりやすいから、素直に聞ける。
こういうご年配の方は尊敬できるし、子供にも非常にいい経験になるし、自身も子を持つ親としてしっかりしなければ、と気が引き締まる思いをさせられるのである。
少年野球、選抜チーム、やっぱり素晴らしいと思うのでした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?