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(短編小説)あの空に

見たくないものがあるならば、
暗闇にすればいい
目を隠して、明かりを消して
見なければいい


聞きたくないこと音があるならば、
他の音で上書きすればいい
霧雨のような優しい音ではなく
ゲリラ豪雨のような大きな音で


話したくないことがあるならば
口を塞げばいい
むやみに否定するのではなく、戯言をならべるのではなく
無言でじっと誰かを見つめて


それでも知りたいなら、聞きたいなら、告白したいなら
全部抑えずに、目を開けて、雨音を消すくらい大きな声で
告白してみろ、あの人に、あの場所に、この世界に。
否定されてもいい、笑われてもいい、
君がその後笑って涙を流せるなら
きっと後悔しない、きっと好きになる。
そんな風に告白できるのは、
若者の特権でもある。
だから、あの空に、あの星空に、声を響かせ
壁は何度も押し寄せる、生きてる限り、夢が、欲望がある限り。
でも、それでも、決して生きることを、告白することをやめないでほしい。
私は正直羨ましい、そんな君達が、
青春を謳歌している君達が。
嫉妬ではない、名前の知らない感情が僕の鼓動を早くする。
生きていれば楽しいから。
なんてことはいわない
それは結局のところ人それぞれ。
楽しくない人もいるだろう、
私もその内の一人だったからわかる。
それでも、もう少しだけ、少しでいいから
この世界を見てほしい、聞いてほしい。
楽しくはなくとも、どこか心踊らされる、
高揚する。

そしていつか、きっと好きになる。

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