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見ているようで見ていない「空」を見つけに

2024年9月某日
空の発見
渋谷区立松濤美術館


香月泰男のメインビジュアルにグッと心を掴まれて。

「空」がテーマなのね~って、ん?タイトルをよく見ると「空の発見」とのこと。
空を発見するとは、いかに?
ということで改めて展覧会のごあいさつをちゃんと読んでみる。

日本人は近世になるまで、「空」を現実的に描くという意識がなかったって!
空間を金箔や金雲で表現するのって、いつの間にか自然に受け入れてたけど、これってかなり独特なセンスだって!

それから現代へと至る「空」への意識の変化とその表現が体験できる「空の発見」。
時代を超えた作品がバラエティに富んでいて楽しめた。
楽しめたというか、自分でも意外なほど感情の起伏があった。
なんか結構揺さぶられた。


●1章 日本美術に空はあったのか? 青空の輸入

松川龍椿 京都名所図屏風

金雲多すぎ~
先週出光美術館で観た屏風とか、岩佐又兵衛の洛中洛外図とかに比べて、なんか物足りなく感じる。
とにかく金雲多すぎ~


春木南溟 富士曼荼羅図
日輪月輪は宗教的な象徴とのこと


・作者不詳 西洋風俗図
屏風をばらした1枚だとか。連作みたいのをどこかで観たことがある。
ロバに乗った修道士。どちらも上の何かを見てなぜかニヤニヤ。

・司馬江漢 犬のいる風景図
犬以外にもいろいろ書き込んでるけども。
ぱーっとひらけた視界をチョー横長で。
いろいろ学んで西洋画的視覚をゲッツ!した司馬江漢。


葛飾北斎 冨嶽三十六景 山下白雨

浮世絵特有の表現。一文字ぼかしとデザインされた雲と。
そして稲光がかっこよ。すみだ北斎美術館のアイコンはこれ。


●2章 開いた窓から空を見る 西洋美術における空の表現


ヤン・ボト/コルネリス・ファン・プーレンブルフ ニンフのいる風景

個人的に、空の絵と聞いて最初に頭に浮かんだのがオランダ絵画だった。
キャンバスの上半分が空で、雲が低いところに漂ってる、みたいな。

ヨーロッパの画家って、手前に濃いいくて暗い緑、奥や上に淡い青の空が描かれるイメージ。


ジョン・コンスタブル デダムの谷

イギリスも空を含めた風景が好きよね。
なんでもない風景を描き続けた勇気!
ターナーとともに。いろいろあったけども。

・ウジェーヌ・ブーダン ノルマンディーの風景
モネに外で描くように導いた人。空の王者ですって。


●3章 近代日本にはさまざまな空が広がる

・高橋由一 不忍池図
まだ蓮がない不忍池。
日本の油絵といえばこの人。
油絵の具ってツールだけでなく、もちろん西洋画の手法もがんばって取り入れた。

・亀井竹二郎 〈石版『懐古東海道五十三驛真景』油彩原画〉
西洋画の手法で東海道五十三次驛を描く。なかなかおもしろい。


武内鶴之助 雲

ロンドンのロイヤルアカデミー仕込みのどんより曇りっぽい空。
いろんな雲をいっぱい描いていて、ちょこっと杉本博司を思い出した。


萬鉄五郎 雲のある自画像

やっぱりインパクトあるなあこの人の絵。眼力と面構えがいい。
バチッとした色づかい。厚塗りフォーブ。
バイタリティありそうなのに、41歳で亡くなったとは…


岸田劉生 窓外夏景

スカッと暑そうな青空。
そういえば、あの土手みたいな切り通しみたいな絵も青空が印象的だ。


柏木俊一 道

草がうねうねイキイキしてておもろい。
道もうねうね。意志を持っているかのよう。

・阿部正直 雲の写真7 No.16-No.24
(阿部正直コレクション:気象観察記録資料)
近代日本と雲の発見。雲の伯爵・阿部正直

・シュルレアリスムの作品がいくつか
展示は地下だけど



●4章 宇宙への意識、夜空を見上げる

天文への興味が盛り上がってきた江戸時代。

葛飾北斎 『富嶽百景』浅草鳥越の不二図
渾天儀で天体観測。見えないものを見ようとして

・歌川国芳 高祖御一代略図 九月十三夜依智星降
日蓮さんの伝記より、星が梅の木に宿ってみんなビックリくりくり。


高橋由一 中洲月夜の図
真っ暗な中州にびかーっと満月の明かり。テラテラな月。



●5章 カタストロフィーと空の発見

関東大震災

・鹿子木孟郎 大正12年9月1日
大震災直後の人々の様子が生々しい。
鹿子木は重大な事件を描くのがアカデミックと考えていたそう。


池田遙邨 災禍の跡

低い月と一家の表情が胸にずしりとくる。
当時の画壇からは排斥されたらしい。竹内栖鳳先生にたしなめられた。

そして戦争

・北山善夫 宇宙図 この世界の全死者に捧ぐ
ちょっとルドンみたいな


濱谷浩 敗戦の日の太陽
シンプルだけど雄弁かもしれない


香月泰男 青の太陽

これが観たかった。
ん?青空に星出てるん?と思っていたら…
深い穴から空を見ると真昼でも星が見える、という話があるのだとか。
アリの目線?こちらも穴の中にいるような気分になってくる。
シベリア抑留の厳しさの一端を感じる。
実際の体験はこんなもんじゃあないんだろうけど。


●6章 私たちはこの空間に何を見るのか?


ホンマタカシ 「TOKYO SUBURBIA 東京郊外」幕張ベイタウン、千葉県
作りもんみたいな、セットみたいな風景


小林孝亘 Cloud


AKI INOMATA あの日の空を覚えている 1926年4月20日、1929年12月25日、1932年12月12日
雲をごっくん


●余談
ふと思い出したのが、練馬美術館で観た電線絵画。
ユニークな切り口のワンテーマってところに、共通点があるからかな。

いやでも今回の「空の発見」のラインナップ、多岐にわたっていてキュレーションのしがいありそう~と同時に大変そうでもあるけども。

作家をフィーチャーした展覧会、イズムでまとめた展覧会、テーマでまとめた展覧会、といろいろあるけれど、今回のような切り口もいい。
国も時代も縦横無尽に駆け巡るって感じで!

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