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本阿弥光悦の宇宙を浮遊してきた

2024年1月某日
特別展「本阿弥光悦の大宇宙」
東京国立博物館


昨年、チラシを手にしたときから気になっていた展覧会。
さまざまな場面で目にすることが多い本阿弥光悦。
センスあふれる多才な人ってイメージ。
その懐の深さは、まさに大宇宙(マクロコスモス)や~

なのでこうやってまとめて観られるのはとってもありがたい。
東京で本阿弥光悦をフィーチャーした展覧会が開催されることに感謝!

本阿弥光悦ネットワーク


●第1章 本阿弥家の家職(かしょく)と法華(ほっけ)信仰―光悦芸術の源泉

舟橋蒔絵硯箱

トーハクの本阿弥光悦といえば~な作品。
何度か観ているけど、改めて360度じっくり拝見。
そんなに大きくはないんだけど、存在感がすごい。
もりっとしたフォルムとぼてっとした鉛のインパクトがあるよね。


本阿弥光悦坐像

面構えがいい。ふくふくした顔。
日蓮の逸話の星降梅で作られたとか。ほえ~


・刀がいく振か
本阿弥家といえば刀剣の鑑定などを生業にしていたお家。
本阿弥家が出していた鑑定書を折り紙と呼んでいたことから、折り紙付きって言葉が今に残る。
ということで、ハンコに和紙の繊維が付着しているそうなので、めっちゃ鑑定したんだろうな~

個人的には刀にはあまり興味がなく…刃文はおもしろいとは思うけど。
光悦の指料とされる小刀はかっこよかった。

光悦が20代後半に描いたとされる鑑定書が。すでに達筆。
さらには鑑定書にデザインが入ってきたりして、さすがだなと。


・日蓮法華宗との関わり
今回新たな発見だったのが法華宗とのかかわり。
光悦は熱心な法華信徒だったとのこと。

日蓮の「立正安国論」を書写。
行書と楷書でメリハリ効いてて読みやすい。

日蓮宗のお寺の扁額も手がけている。
直に見たことがあるものもあって、「あれ光悦が書いてたのか~」とグッときた。


●第2章 謡本(うたいぼん)と光悦蒔絵(まきえ)―炸裂さくれつする言葉とかたち

・桜山吹図屏風
俵屋宗達とのコラボ。(伝)俵屋宗達だけど。
桜と、特に山吹の絵の具の盛りぐあいがすごい。厚盛り。
その上に、光悦作の古今和歌集の色紙がペタペタとランダムに貼られている。
結構大胆よね。そこが好き。

・謡本
能楽の謡のテキスト本。
色味は抑えめだけど、金や銀が効いていて綺麗。
お稽古のテンションが上がりそう。
表紙のデザインが内容を反映したものになっているんだけど、ものすごく細かい絵柄なんかもあって。
いろいろ懲りたくなってくるの、わかるわ~

・光悦謡本シリーズ
雲母摺りが効果的。
光の加減で濃く見えたり淡く見えたりして楽しい。


花唐草文螺鈿経箱

法華経のお経を入れる経箱。螺鈿細工で細い曲線を表現。


・硯箱たち

舞楽蒔絵硯箱

蒔絵の手法が炸裂。
金を蒔くのに加えて、結構ゴテゴテな螺鈿細工を組み合わせていて立体感がすごい。
ちなみに国宝の舟橋蒔絵硯箱に代表されるように、角がカクカクしていなくてまるっとした硯箱は光悦好みだったのかしらね。



●第3章 光悦の筆線と字姿―二次元空間の妙技

・いろんな書
法華関連や知人とやり取りした書がたくさん。
ちなみに日蓮の書も展示してあって、独特な力強さを感じた。

光悦は自由自在に筆を操っているかのよう。
行書草書を使い分けつつ。
「肥痩をきかせた筆線」なんて表現されている。

晩年は中風をわずらっていたらしく、字が揺らいでいくけども…
その後はそれも受け入れていったのかな。


鶴下絵三十六歌仙和歌巻

ご存じ、俵屋宗達とのバチバチコラボ作品。
金泥銀泥で描かれた鶴が素晴らしい。
その鶴がまたいっぱい。群れたり飛んだりリラックスしたり。
バッサバッサ羽ばたく音が聞こえてくるかのよう。

その上に絶妙に散らされる光悦の書。
気合い入っただろうな~
こら、こちらも負けてられまへんな~とか言いながら。


・花卉鳥下絵新古今集和歌巻
・松山花卉摺下絵新古今集和歌巻
鶴もいいけど花もいい。
桜・浜千鳥、梅・竹・藤・薄・蔦などがこちらも金泥銀泥で表現されている。


・蓮下絵百人一首和歌巻断簡

法華宗との関わりから、蓮は重要なモチーフだったんだろうな。
結構な部分が関東大震災で消失してしまい、その後分断されて各所へ。


●第4章 光悦茶碗―土の刀剣

この章がもっとも宇宙ぽかった。
茶碗の見せ方・ライティングの影響かと。

赤楽茶碗 銘加賀


赤楽兎文香合


楽家と親交があり茶碗づくりを始めた光悦。
手捏ねなので、厚みや形がそれぞれ個性があっておもしろき。
赤楽が多めな印象。
艶がありつつ、ちゃんと使ってたんだなあって雰囲気も。
出光美術館の兎の赤楽香合もいた。
ただしスペースの奥には黒楽茶碗が鎮座している。
時雨・村雨・村雲の雨シリーズ。

・本阿弥光悦肖像
展示の締めは、光悦の肖像画。
神坂雪佳筆/富岡鉄斎賛。
冒頭の坐像を元に描いたとのこと。
どうりで似てると思ったわ!
雪佳なりの想像やリスペクトが乗っかっているようで感慨深い。


刀に法華信仰、謡いに蒔絵、書に茶碗って、かなり渋めのジャンル。
でもそこにとどまらず、のちの日本文化へ影響を与えていったのが本阿弥光悦。
いわゆる美意識。

「一生涯へつらい候事至てきらひの人」で「異風者」
by本阿弥行状記

スキルとセンスがあると、人に評価を求めずに自分の価値観で生きていけるんだねえ。
尊敬する。
いつの時代でも通用する人なんじゃあないかな~

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