見出し画像

味覚のサイエンス

「好きなスーパーはありますか?」
私が好きなスーパーはお酒コーナーが充実しているスーパーだ。お酒のパッケージのイラスト、文字、商品名、産地やウンチクを読んでどんな味わいの酒か想像しているだけでワクワクしてとても楽しい気分になる。あっという間に10分くらい時間が過ぎる。

小学生のときに「好きなスーパーはどこ?」と聞かれていたら・・・どう答えただろうか?きっとお菓子コーナーが広いスーパーを挙げたはずだ。あめ、グミ、チョコなど甘いお菓子が大好きだったから。

子どもってそういうものですよね。

・・・でも、それってどうして?
お酒もあめ玉も甘いが、甘さの質が全然違う。お酒は熟成された複雑な味わいだし、お菓子は単純な味だ。果たして年を取ると味覚は変わるものなのだろうか?

調べてみた。やはり、加齢による味の感受性の変化については多くの報告があった。では、その理由は?

人の舌には、味覚を感知する味細胞の集まり「味蕾」が存在する。ここで甘味、苦み、塩味、酸味などを感じる。味蕾の数は乳幼児で約1万個、成人になるにつれて減少し74~85歳では1/4程度にまで減少するという報告がある。この報告は「老齢者は味蕾の数の減少の影響で味感受性が衰える」ということを示唆している。

ところが近年「加齢により味蕾の数は変化しない」という報告も複数報告されているようだ。となると、分からなくなってくる。加齢による味覚の変化の理由はいったい何なのか?ホルモンや中枢神経との関わりを示唆する新たな研究報告も挙がってきているようだ【*】。味覚と加齢のサイエンスにはまだまだ奥がありそうだ。

先週引っ越しをした。新たに居を構えた町のスーパーで見つけた「芋焼酎と米焼酎」のブレンド焼酎を飲んでいる。芋焼酎らしくないクリアな味の新体験に感動しながら、ふと「20代の自分はこの味を好んだだろうか」という疑問が頭をよぎった。好きでなかった気がする。

ということは、これも加齢により味覚の感度が衰えた証拠なのかも?
そう思うとちょっと悲しい気持ちになる。

けれど、見方を変えれば、歳を重ねるごとに美味しいと思える体験のバリエーションが増えていくことは、その分人生が豊かになるということかも。
「味覚が衰える」ではなく「味覚が進化する」と開き直った方が良さそうだ。

新たに見つけたお気に入りスーパーで、新たな味との出会いを探し続けよう!

参考【*】味覚のサイエンス ~加齢と味覚の関係~東京大学大学院農学生命科学研究科(日老医誌 2020;57:1―8)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?