見出し画像

慣れていないだけ

3分ほどで読めるエッセイ16本を一冊にまとめて、kindleで出版させていただいています。

発売から2か月と少したっても、時々ご感想をいただけて、とても嬉しく思っています。

読んでくださる方それぞれの立場で、響く言葉や受け取り方が違うのがとても興味深いところ。

その中でも、「この考え方、私も実践します」と言っていただいた記事をこちらにマルっとコピペします。
あと3分、お付き合いいただけると、嬉しいです。

ー-----------------------

人から言われて、とても心に響いた言葉があります。

「慣れていないだけ」

私にこう教えてくれた人は、「難しい」という言葉を使うとすぐに、「慣れていないだけ」と言い直してくれます。
人には、「できること」と「慣れていないこと」があるだけだと。

それは、大人になってから初めて、今まで未知の領域だった心理学の勉強に興味を持ち、その世界へ片足を突っ込んだ時のことでした。
横文字多めの講座に参加していると、見るもの聞くこと全てに馴染みがありません。
むずっ……
私は頭の中で終始、「難しい」と感じながら、講座に参加していました。

一通り講義を聞き、「それでは二人一組になって、お互いの価値観を出しあってみましょう」と言われても、むずっ。
それが終われば、「今の経験をシェアしてみましょう。自由に話してみてください」と言われてもまた、むずっ。

つい、シェアするお仲間に「難しいですよね」とぼやいたところ、「難しいんじゃなくて、慣れていないだけですよ」と言う声が聞こえました。

どういうことですか? あなたが今言った言葉の意味さえ難しいんですけど? と講師にハテナ顔を向けた講座の初日。
帰ってからも頭から離れなかったのは、講義の内容そのものではなく、難しいと言った私に講師がかけてくれたこの言葉でした。

「慣れていないだけ」
この8文字が勝手に脳内で無限に再生されます。
その答えを探しながら夕飯を作っていると、ふと気づく瞬間がやってきました。

確かに、今当たり前のようにできていること全てが、最初から簡単に出来ていたわけではありません。
ご飯を炊いてお魚焼いて、お味噌汁を作るだけでも最初は難しくて、1時間以上かけていた可愛い時代もあったなぁ。
お肉を焼いて、冷めないように保温のつもりでフライパンに蓋をして置いておいたら、お肉がカッチカチになっていて残念なこともあったなぁ、と。

今では考え事をしながらでもご飯を作ることができます。
ザ、日本の朝ごはんメニューに1時間以上かかることもなければ、お肉は最後に調理することも自然にできるようになっています。
そっか、慣れていなかったからうまくできなかったんだ。

お料理に関しては、毎日やらなくてはいけない環境が私にそれを慣れさせ、簡単に出来るようになったことの一つです。

逆に、最初に難しいと思ってしまったことが原因で、それ以上何もできなくなってしまったこともありました。

それは、高校生の時にお小遣いを貯めて買ったギターです。
ピアノも弾けるし楽譜も読める。ギターくらいすぐに弾けるようになるでしょ、と思って練習を始めたものの、難しい!

難しいと思うと、それがどうしてもやらなくてはいけないことでなかった場合、チャレンジする気持ちを維持できなくなります。そして、やりたくない気持ちが大きくなり、できないというゴールへあっという間にたどり着きます。こうなると、それ以上の成長はありません。

高校3年生の春に買ったギターは、その年の秋にはもう私の手元にはありませんでした。
あの時、「慣れていないだけ」だと思えたら、買って半年足らずで、お友達に譲ってしまうことはなかったのかもしれません。

難しい、の先に待っているのは、できない。やりたくない。だからやらない。
慣れていないだけ、の先に待っているのは、慣れればできる。じゃあやってみようかな。

初めてのことに出会ったとき、どう思うかは運命の分かれ道なのかもしれません。
慣れていないだけ、という考え方に慣れるまでにも多少の時間はかかりましたが、今ではすっかり慣れました。

なので、誰かが「難しい」と言っているのを聞くと、「慣れていないだけだよ!」と言ってしまい、私が講師に向けたのと同じハテナ顔を見ることもしばしばです。

現代は、スマホがあれば、どこにでも行けるしなんでもできる便利な世の中。
でもそれを、「難しい」と感じて使いこなせなければ、その便利を享受することはできません。

私の親世代のスマホとの付き合い方を見ていると、むしろ掌の中に難しいを携帯しているようで、もったいないと感じてしまいます。
そういう私自身も、インスタのストーリーに動画を載せてみたくてもやり方が分からず、娘に教わりながらSNSを楽しむレベルではありますが。

初めてのことに出会ったら、それがたとえ、どこからどう見ても難しそうだったとしても。
「難しい」と思って道を閉ざすのか。
それとも、「慣れていないだけ」と思うことで、前へ進むのか。
私は後者を選択して、楽しいこと、できるようになることを増やし続けていきたいと思っています。

とはいえ、最近の便利な物や機能って、もうちょっと使い方が簡単にならないものかね?と、ぼやいてしまうのでした。

そして、「買い替えたスマホの操作が難しい」と、すぐに文句を言うくせに、最新機種を欲しがる母の対応が難しい…… 
いえ、慣れている途中です。

≪終わり≫

残り15本のお話は是非こちらから!


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?