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加曾利貝塚から歴史教育を考える①

新年あけましておめでとうございます。2023年もよろしくお願いします。

さて新年あけて最初の投稿は、「貝塚」です。「なんでだよ」というツッコミが聞こえてくるようですが、特に理由はありません。強いていうなら、新年と日本の黎明期を重ね合わせたくなったから、といったところでしょうか。

とにかく今年も突っ走っていくので、引き続きお付き合いのほどよろしくお願いします。では始めましょう!

①不人気な古代

千葉県千葉市にある加曽利貝塚は日本有数の貝塚で、学術的にも非常に価値の高い遺跡です。「日本最大級」と名を打つだけあって、貝塚の展示には目を奪われます。私も昨年の夏に行きましたが、教科書からは味わえないような形容しがたい感動を覚えました。

大げさな、という声が聞こえてくるようですが、いたって真面目です。愛好会の方の縄文土器づくりの様子も見られて、幸せなひと時でした。

しかし、一般に縄文時代や弥生時代など、いわゆる”古代”はあまり人気がないようです。古代マニアの私にとって嘆かわしいことですが、同時に少し納得できてしまう面もあります。

たしかに古代は、戦国時代や幕末(どちらも子供から大人まで幅広い層に人気な時代です)と比べると、どうしても地味で迫力に欠けます。文字の記録がなく、遺跡や出土品等の状況証拠から当時のようすを推測しているので、教科書も「・・・であったと考えられている」「・・・が有力な説だ」とぼんやりとぼかした書き方になっています。また学習内容も稲作文化や農耕、狩猟や信仰など、「織田信長が長篠の戦いで鉄砲を用いて勝利した」といった英雄の華々しい活躍に比べると、どうしても多くの中高生にとって、動きがなくつまらないものに見えるでしょう。

②不人気の原因は何かー知識と思考力のバランス

しかし、これは古代という時代ばかりに問題があるのではなく、むしろその教え方の方にこそ大きな問題があるのだと思います。

たとえば、次の一節を見てください。

・・・食生活の充実で人口も増え、地面に穴を掘り屋根をつけたたて穴住居に定住するようにもなりました。住居の近くには貝塚ができました。また、食物が豊かにみのることなどをいのり、まじないに使うための土偶もつくられました。

「社会科 中学生の歴史 日本の歩みと世界の動き」 帝国書院


学習指導要領の制限もあると思いますが、それにしても淡々としていて、ただ事実が列挙されているだけです。はっきりいって、読んでいてまったく面白くありません。これでは中学生が飽きてしまっても無理はないでしょう。(私のような例外も一部いるでしょうが)

誤解のないようにいうと、私は出版社をやり玉にあげたいのではありません。出版社の高品質で素晴らしい教科書がなければ、日本の学校教育はまったく成り立たないでしょう。問題は出版社ではありません。

問題なのは、文部科学省の指導要領です。

いくらリベラルアーツや思考重視の教育といっても、学校現場では依然としてつめこみ型教育が行われており、知識を偏重しています。もちろん、知識がなければそもそも歴史を学ぶことはできませんし、思考力の側面を過度に強調して、知識の習得から逃避する行為は間違っています。大切なのはバランスです。生徒一人ひとりに確実な知識の基盤を構築しながらも思考力を育成する。これこそが今日の歴史教育の本来の使命です。それを蔑ろにしている日本の歴史教育はやはり間違っています。


しかし、ただ文部科学省を批判してばかりも建設性がないので、次回はいよいよこれからの学校教育を、まずは歴史の側面から、提案してみようと思います。キーとなるのは「縄文犬」です。


では今回はこれくらいで。
最後までお読みいただきありがとうございました。
(よいお正月を!)