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バイリンガル育児がしやすい環境って?

先日、キッズコーチングエキスパートのASAMIさんにお声がけ頂いて、オンライン子育てサロン@KOREAで、バイリンガル育児について対談形式でお話させて頂きました。

私は韓国で1親1言語の方針で子育てをしていて、6才の息子が現在、会話は日韓バイリンガルになり、今後読み書きまでできるようになったらいいなと文字学習を始めたところです。(詳しくは、聞く・話すのバイリンガルになるまで

ASAMIさんは上のお子さんが4才になったあたりでお母さんとは日本語中心から韓国語中心に移行していったいうことで、色々なお話をしながら「海外で育児をしながら、子どもとは母語(日本語)で話せるようになりたい。できればバイリンガルに育って欲しい」というシンプルな願いを叶えるのは、実はとてもハードルが高いということを実感しました。

現時点で(子どもはきれいさっぱり忘れることもあるので、未来は分からないけれど)、私が子どもと日本語で話せているのは、本当にたまたま、幸運が重なった結果なんだと感じるようになりました。つまり、子どもが生まれた時点から、比較的バイリンガル育児がしやすい環境にいたからこそできた、ということです。

じゃあ、バイリンガル育児がしやすい環境ってなんだろう?というところを書いてみたいと思います。

1.やり方を知っている

まずは自分の準備ができているか、という部分ですが、基本的なバイリンガルの育て方について、理論的に知っていた状態からのスタートだったのは大きかったと思います。

私は専攻が言語系だったので、大学院でバイリンガル理論についての授業を取っていました。そこで触れた内容に興味を持ち、専門家の先生の短期講座や講演会に参加したり、後には研究会や学会にも行っていました。1親1言語の原則や、バイリンガルの種類バイリンガルの子どもの言語発達はモノリンガルよりも遅れがちなことなどを知っていました。

そして周囲に留学生が多かったため、子ども時代を日本で過ごしてバイリンガルになった人、ヨーロッパで国際結婚家庭で育った人、大人になってから日本語を超級レベル(ほぼネイティブ)まで身につけた人など、色んなタイプのマルチリンガルやバイリンガルが身近にいて、大人になったバイリンガルってあんな感じなのかな?というイメージを持て、ポジティブに捉えていました。

そのため、うちはバイリンガルに育てたいという教育方針が早く決まり、夫との合意形成も早かったように思います。

バイリンガル理論の知識というと難しそうですが、要となる理論はシンプルです。両親の母語が違う場合、子どもと話す言語をそれぞれ決めて、その言語だけで話しかけるという方法です。学校や講座に通わなくても、本やインターネットの記事から十分知識を得ることができます。時間のある方はこちらの本、お忙しい方はこの記事一本だけでも目を通してみてください。

2.方針が決まっている

まず希望として「きっと長く海外で育てることになりそうだけど、子どもとは母語(日本語)で話せるようになりたい」という気持ちがありました。私の場合は韓国語も仕事で使う程度にはできますが、それで子どもを育てるとなると自信が全くない…という状態でした。

やり方は1親1言語でいこうと決め、夫には「私は日本語を担当するから、あなたは韓国語で話しかけてほしい」と伝え、夫も賛成してくれました。

夫の両親に対しては、予め「母親は子どもに日本語で話しかけるので、皆でいる時にも日本語を使うことがある」ことを夫から説明してもらいました。私の親にも同様に、帰省時に夫が合流したら、夫と息子は韓国語で話すよということを伝えておきました。

つまり、親と子どもの間で使う言語を場所やメンバーによって変えることは特にしない(だけど悪気はないので、理解してもらえたらありがたい)と方針を決め、周りにも伝えていました。

どのような方針にするにせよ、赤ちゃんの時に親が何語で話しかけるかというところから子どもの言語学習は始まっているので、なるべく早く決まっている方がやりやすいでしょう。

3.周囲の理解がある 

その方針がすんなり理解してもらえたのは、今思うと本当に幸運だったと思います。

というのは、ある場である言語が全く分からない人がいるにも関わらず、その言葉を使い続けるのって、やっぱり気まずい……というか、気を使いますよね?

社会の雰囲気もあると思いますが、韓国も日本もまだまだ多言語多文化が浸透しているとは言いがたい現状。英語以外の外国語を使う場合、多少なりとも周りの目が気になります。まだ韓国(特にソウル)における日本語は、学習者人口も多く「一度は習ったことがある」という人やアニメなどで親しんでいる人も多いため、ポジティブに見てもらえる場合も多くありますが、多言語が普通という文化圏とはやはり違う雰囲気でしょう。

私自身、多国籍メンバーでご飯を食べに行ったら、皆が話している言語がいつの間にか会話が英語からドイツ語に切り替わり、何も理解できないまま食事を終えた…という経験や、韓国語が初級の時に夫(当時恋人)の韓国人の友人たちに囲まれて、歓迎されてるのは分かるけど顔が引きつっていく…という苦い思い出があります。

全く分からない言語の音を聞き続けるのって、それだけでストレスになりますね。その辛さを分かっているからこそ、日本語ゼロの義父母、韓国語ゼロの両親に「私達の方針を理解してほしい」というのは、うーん、どうしよう…とは思ったのですが、優先順位を考えて、子どもには自分の言語で話しかける、その言葉が分からない人には事情を説明して、自分で同時通訳する、という折衷案に落ち着きました。

これは、保育園のお友達などと公園で一緒に遊んでいる時なども同じようにしています。最初は「え?日本語?」と戸惑わせてしまったと思いますが(相手もあえて口にしなかったり)、「うちは子どもとは日本語でしゃべるようにしてて」と自分から話すと、「あ、このうちはそういう家なのね」という理解してもらえ、今では息子の友達たちが日本語に興味を示すこともあり…ありがたいですね、ホント(涙)。

もっとも、こういったことができるかどうかは自分の意志だけでなく、周囲に異文化に対するトレランス(耐性・寛容性)異文化に対する好奇心があるかというところも関わってくるので、日本語を使い続けるのが負担になるのであれば、無理する必要はないと思います。

環境が許すのならば、できたらありがたい…という感じですね。

4.協力してくれる人たちがいる

バイリンガル育児とは、その名の通り二つの言語で子どもを育てるということなので、一人が一言語を担当するならば、当然一人ではできません。

つまり、自分が担当していない言語に関して、フォローしてくれる人が必要なのです。

通常は父親、母親で一言語ずつと考えますが、やがて気づきました。父親が外で働いている場合、子どもと接する時間が圧倒的に短く、子どもが言葉を吸収するには物理的な時間が足りなさすぎるということに。

そしてこれはお父さんにもよると思いますが、私の夫は小さな子どもに対する語りかけや本の読み聞かせなどが、得意なタイプではありませんでした(少し大きくなって言葉が通じる子どもと遊ぶのは得意な方)。

そのため、私は子どもの父方のおばあちゃんと、保育園の先生を頼りました。韓国語の絵本の読み聞かせはおばあちゃんに、韓国語の言葉の発達に関する相談は保育園の先生に、短時間でもできるハングルの書きの練習はパパに…というふうに、少しずつ分散してお願いしました。自分ができないことは人に助けてもらう。そのためにコミュニケーションが必須なので、勉強してきた韓国語はここで役立ちました。

お父さんだけでは現地の言葉が追いつかない!と焦って、お母さんが二言語を見始め、更に英語まで…となると負担が大きいですし、子どもがお母さんと日本語を話す必要性が薄くなってしまいます。

不安や焦りの感情をうまくマネージメントしたり、現実的に助けてくれる人を探してコーディネートしたり、というスキルがあると良いのかなと思います。

5.先輩ママや専門家とつながっている

それでも、不安な時。現実的に大変すぎる時。

助けてくれたのが、先輩ママの経験談、専門家のアドバイスでした。

周りに似た環境で子育てをしているバイリンガル育児の先輩ママがいるかどうか、いざという時に意見を聞ける専門家がいるかどうか。これは本当に運ですよね。

アドバイスだって、状況により、経験により、人により違ってくるわけなので、その時その時に合わせて、話を聞きたい人も変わってきます。

本当に困ったら、専門家を探して訪ねていくことになると思いますが、その手前の状態では、色々話を聞ける先輩ママがいたらありがたい。

できることなら、バイリンガルとして育った人の話も聞けるとすごく参考になります。

私はたまたま、話を聞ける人が周りにいる状況だったので、恵まれていました。でも、先日のバイリンガル育児対談をしながら、自分がたまたま恵まれていたから、良かった。……それでいいのかな?とふと思いました。

私はこれまで話を聞かせてもらった、助けてもらっていた立場だったけれど、今まさにバイリンガル育児を始めようとしている人には、少しは助けになれることがあるかも…?

そんなことを考えて、この記事を書いています。

まとめ

ここまで、海外でバイリンガル育児がしやすい環境づくりについて書いてきました。

1.やり方を知っている

2.方針が決まっている

3.周囲の理解がある

4.協力してくれる人たちがいる

5.先輩ママや専門家とつながっている

そして、もしも全部が逆の状態だったら…?と想像してみました。

1.やり方が分からない

2.方針がなかなか決まらない

3.周囲の理解がない

4.協力してくれる人もいない

5.周りに先輩ママもいないし、専門家ってどこにいるの…。

絶対にできなかったと思います。

一つが欠けても難しいし、二つ欠ければかなり辛い…。なので、もしも現状が思い描く姿と違っているならば、周りの環境はどうか、自分自身の準備はできているか、一度点検してみてください。

お母さんが日本人なら日本語しゃべれるでしょう?というのは大きな間違い。

バイリンガル育児って、一人ではできないんです。

逆に言うと、準備と環境が整えば、チャレンジできます。

まずは、基本的な知識を身につけ、方針を決めるところから。

そして方針が決まったら、バイリンガル育児がしやすい環境を整えましょう

更に、仲間の存在も大きいのですが、これについてはまた別の記事で書いていこうと思います。


最後までお読みくださり、ありがとうございました…!

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