思春期に聞いた歌

イルカさん初期の頃の歌を、カバーしてみました。

今の中高生もやはりお気に入りのラジオ番組とかあるのだろうか。

パソコン全盛、スマホ全盛の時代で、欲しい曲聴きたい歌はすぐ検索し、どんな時代のものでも音源ばかりか、映像まで見ることができる。ダウンロードできるから、ラジオからカセットテープにわざわざ録音することなど、想像もつかないのだろうか。

一人っ子であり、田舎といっても海にも山にも遠い農村地帯に育った私は、遊びに行くところもお金もない。本を読むことと、FMラジオを聞き、気に入った歌をカセットに録音し、何度も何度も聴くのが唯一の楽しみだった。

中学の頃、本当に狭いながらもプライベートな部屋を得て、本棚には文庫本、教科書やプリントは机に散らかし広げて、そして左にコーヒーカップとポットとインスタントコーヒーを用意し、勉強・・・ではなく詩を書いたり、日記を書いたりが家での日常だった。友達から「深夜放送が面白い」と聞き、右にラジカセを置いて休日や夜を過ごした。眠くて仕方が無いのだが、コーヒーで睡魔を飛ばしたように自分に言い聞かせ、深夜零時をまわればもう教科書は閉じてしまう。「夜食」を覚えたのもこの頃だった。

零時半から「コッキーポップ」が始まった。様々な人がオリジナルソングを引っ提げてコンテストに出て、それらを披露する番組だった。そこから次々生まれたのが、令和の今尚燦然と輝く、昭和の歌の数々。当時はフォークソングの時代は過ぎ、「ニューミュージック」と呼ばれていたと記憶している。ジャニーズ系や、オーデイション番組から出てきたアイドルの子供っぽい歌とは一線を画していて、私は深夜に聞き覚えた歌の方が好きだった。

歌歌歌・・・メロディーと詞が心に響けば繰り返し繰り返し。田舎の少女の心を揺さぶったのはいつも歌だった。

イルカという歌手は最初男か女かわからなかった。女性らしくないオーバーオールとTシャツ。声聞いても、謎だった。その人は正真正銘の女性で、既に大人で結婚もしていて、子供もいると知った。

「なごり雪」は、いつの時代も巷に流れていたように思う。

中2の頃、ひとつ上の先輩に憧れていて、彼はもう卒業してしまう。(以前上げた、バレンタインの思い出 (毛) とは別の人)

だめもとで地元のティーンズなら殆ど聞いている、日曜夕方のラジオのヒットチャート番組にメッセージと共にリクエストを書き、葉書を出した。

読まれるかな・・・とドキドキして正座しながらラジオに耳を傾けていた。ああ・・・ダメだったか・・・と思った終了間際のこと。

「では今日最後の曲です。リクエストが届いてます」

そんなパーソナリティーのコトバと共に静かになごり雪のイントロが流れ出した。

私はスタンバイしていた録音ボタンを押した。

「この葉書は私にとってとても大切なものです。ダイスキな先輩が間もなく卒業します。〇中学の、k.o先輩。高校合格とともに、先輩がずっと幸せでありますように祈りながら、ダイスキなイルカさんの曲を贈ります。」

・・・・

・・・・

私はほーっと深い溜め息をついて、夢のようだった。遠くから見るだけの憧れの先輩。でも、満足だった。

翌日登校すると、私のはがきのことは知れ渡っていた。そして、信じられない事に先輩がつかつかとやってきた。

「ありがとう」

唯一色褪せない私にとって大切な瞬間であった。

思いが通じたとか、その後付き合ったとか、そんなのはない。だけど、私にとってこころ満たされず、華やかなこともない少女期を彩った、本当に素敵な出来事を飾った歌だった。

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