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実験 地球の裏側に日本食材を送る

【プロローグ】

「だったら日本から食べ物送るわ~」

はじまりはこんな一言だった。
1か月後に遊びに来てくれる予定の友人に日本の食材を持ってきてほしいと頼んだところ、事前に郵送する、というのだ。

ここは地球の裏側ウルグアイ。
以前にも書いた通り、南米の中でも日系人が少なく日本の食材は手に入りにくい。

申し出はもちろんうれしい。ただ、大きな懸念があった。
派遣直後にJICAの事務所からこう言われていたのだ。
「日本から荷物を送るのは大変だからおススメしません。」

友人に話すと、
「そんなに大変じゃないと思うけどなぁ」
彼は若いころ仕事で東ヨーロッパに7年住んでいて、たびたび日本から荷物を送ってもらった経験があった。
「まあ、社会実験として送るわ~」

さて、実際にウルグアイに日本の食材が届くまでどのような経緯をたどったのか?
結論から言うと…やっぱり大変でした(^^;

①日本からの発送

今回、送ってもらった食材は主にこんなもの
 ・めんつゆ
 ・カレー、シチューの素
 ・乾麺(うどん、ラーメン、そうめん)
それに加えて、
 ・虫刺されの薬
 ・虫よけ
 ・耳かき
 ・菜箸
などもお願いした。

友人はリストを作り、EMS(国際スピード郵便)で発送するため郵便局へ。
郵便局でも詳しい人は限られていて、友人はつきっきりで30分ほどかけて中身の確認や手続きをしてもらった。

まず、この段階で薬関係が除外された。
なんでも薬品はSDSという書類が別途必要で、勝手に送るわけにはいかないらしい。

中身の購入金額は6000円ほど。
それに対し、EMSの送料は18600円…
送料だけで購入金額の三倍だ。
重量に応じた価格なのでめんつゆが重かったようだ。

②ウルグアイ郵便局への事前登録

私自身は届くのを待つだけでいいか?
全然そんなことはない。
ウルグアイの郵便局に事前登録が必要だ。

・まず、IDを作成し、メールアドレスを登録。
・続いて、送ってくる荷物の詳細を登録。
・さらに、友人が作成したリストをスペイン語に翻訳してアップロード。

これらを全編スペイン語のホームページから行わなければならない。
対応する語学力も知識もないのでJICAのスタッフの方に教えてもらいながらやったが、あまり親切な作りにはなってないこともあり、何度もやり直ししながら結局1時間以上かかった。

受け取り側の手続きはまだ続く。

③ウルグアイでの関税支払い

郵便局への事前登録で物品の総額を記入すると、関税が表示される。
そして登録したメールアドレスに支払いの案内が届く。

後日、私はそれを手に郵便局に向かった。
日本ほど郵便局があちこちにあるわけではなく、バスに乗って向かう。

一番近い郵便局 小さい

ウルグアイの輸入関税は60パーセント。
高い。
今回は3600円ほどの関税となる。
窓口でメールを見せるとすんなり支払うことができた。

ここまでで、日本の発送日から土日を挟んで5日ほど(だったと思う)
後は届くのを待つのみ…
というわけではない。

④荷物はウルグアイに到着したが…

EMSの場合、国際的な番号が付与されるので日本の郵便局のホームページでも、ウルグアイの郵便局のホームページでも状況を確認することができる。
当該の荷物も日本発送から9日後に無事、ウルグアイに到着したことが確認できた。

ウルグアイの郵便局のサイト(事前登録が必要)

ところが・・・
そこから、まったく動かない。
ステイタスは「保留中」。
理由はわからない。

JICAのスタッフに問い合わせてもらったが、
「税関で止まっているようです」
としかわからない。

毎日のようにホームページで変化がないことを確認する日々が続いた。

⑤没収?

すでに発送から3週間以上。
何度かJICAスタッフにも確認してもらったが荷物は税関に止まったまま。
「乾麺は問題ないとして、めんつゆが悪いのか?カレーが悪いのか…」

まもなく友人はウルグアイにやってくる。
税関での没収も念頭に、友人は同じ食材を再度購入しスーツケースに入れることを考えはじめた。
こんなことなら最初から素直に持ってきてくれたらよかったのに…
でも、友人の気持ちを考えると言えないなぁ…
と思っていた矢先、変化があった。

⑥郵便なのに

届け先にしていたJICAの事務所に郵便局から電話がかかった。

「荷物が届いたので郵便局本局まで取りに来てください」
ん?
取りに行くの?
郵便でしょ?
なんでも、こちらが登録したリストをもとに立ち合いの上で中身を確認するらしい。

ホームページを見ると、ステイタスが変わっていて受け取り日時の予約ができるようになっていた。

受け取れるのは…最短で1週間後だった。
長すぎ~

⑦最後の難関

そして、ついに荷物を受け取る日がやって来た。

バスに乗って30分。市内中心部の郵便局本局に行く。
警備員さんに聞くと、国際小包の受け取りは入り口が別だという。

本局の国際郵便窓口

入り口で名前を告げ、待つこと10分。呼び出されて窓口に行くと、テープでグルグル巻かれた段ボールを持ってきてくれた。
その場で印刷してきたリストを渡し、中身を確認。
全編スペイン語だったが、途中で税関職員らしき人も加わり「税関で中身を空けたからね」などと説明されたのはわかった。

中身についてあれこれ質問されるかと思ったが、最後は意外とあっさり。
ついに荷物を受け取ることができた。

家に帰って中身を出してみる。

税関のテープが巻かれた段ボールの中から出てきたのは…

感動したぁぁぁぁぁ。
結果的に日本から送った中身は何も没収されず全部届いた。
これまでの苦労がすべて吹き飛ぶ思い。

日本の発送から、実に29日後のことだった。

【エピローグ】

荷物到着の翌日、荷物を送った本人がウルグアイに向け日本を出発した。
大量の日本食材をスーツケースに詰めて。

おいおい、あのドタバタは何だったんや(^^;

ここウルグアイは地球の真裏。
日本食材は貴重で、どれだけあってもうれしい。
ただ、それをEMSで送るとなると、
 ・6000円の食材⇒送料(重量による)と関税で22000円
 ・所要時間⇒29日
 ・発送だけでなく受け取り(全編スペイン語)も極めて煩雑
ということは頭に入れておいてほしい。

この情報、どれだけ需要があるか正直わかりませんが、
「ウルグアイに日本食材を送るのは大変だから、スーツケースに入れて持ってきてもらった方が絶対いい」
ということを皆さんにお伝えしたいと思います。

ではまた。

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