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デンマークの新デジタルデバイド

デンマーク王国が、市民とのコミュニケーションをなかば強制的にデジタルにしてから、早6年が過ぎようとしている。この6年間にデンマーク市民のデジタル利用は格段に拡大し、私を含めた多くの人たちが、毎日のように政府や公共性の高い組織(銀行など)からの連絡や問い合わせをデジタルメールで受け取っている。

ただ、そんなデンマークでも「デジタルを使えてない人たち」が一定数存在することが課題となっている。いわゆるデジタルデバイドの問題といってもいいだろう。国からの税金や社会保障の事柄についての連絡ルートが電子連絡に限定されつつある今、国からの連絡を受け取っても閲覧してないという事実は、国にとっても困ることだが、本人たちにもとってもデメリットだ。全国民に「無料のワクチン注射希望者募る!」の連絡があっても、その連絡を受け取れないということだから。

昨今は、デンマークに住む人たちの義務として、「国からの連絡をデジタルで受け取る」ことになっているが、そんな中いわゆる情報弱者にカテゴライズされる人たちはどんな人たちなんだろうか。情報弱者の中でも、もっとも課題となっているのは、どんな人たちか想像つくだろうか?

デンマークの新デジタル市民たちNy Digitale Borger

要注意世代として、近年デジタル化庁が対策に頭を悩ましているのは、高齢者じゃない。なんと15−17歳世代だ。えっ?デジタルネイティブだよね?って思いました?

この状況を理解するには、少し背景説明が必要かもしれない。デンマークでは、15歳になると政府からの連絡を直接受け取るようになる(それまでは育ての親が受け取る)。いわゆる国からの子育て支援金のようなものも、15歳児の銀行口座に直接振り込まれる(それまでは親が受け取る)というから驚きだ。なんにせよ、この世代は、一人の責任ある大人としての階段を登り始める世代としてみなされており、よって国のデジタル化戦略に組み込まれ始める世代なのだ。だが、75−84歳の高齢者がデジタルメールをきちんと開封して確認している(2.7%が開封してない)のに、15−17歳世代は、14%が未開封の状態で半年がすぎる。

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15-17歳は、提供されているシステムが技術的に使えないというわけではないだろうが、使おうとする意思はだいぶ欠けるらしい。ここに見られるのは、結局のところ電子政府の課題の大多数は、エンジニアリング的なシステム設計の問題ではなくて、人間側の問題であり、社会的な課題であり、使い勝手の問題だ。15-17歳では、まだ(大多数が)納税しないし、社会保障に対する認識もそれほど高くないし、毎月年金もらったりしているわけではないから、国との連絡チャネルを確立・維持しようと思いにくいだろうし、利用の必要性もかなり低い。国民の義務としてデジタルソリューションの利用が義務付けられているとは言っても、まだ高校生。半分子供だし、責任ある行動をと言われてもなぁ、という不満が漏れ聞こえてくる。

面白いのは、今巻き起こっている議論では、15-17歳の義務と責任の視点ばかりでなく、政府側が「若者が理解できるように伝える責任」を持つべきとの視点が見られることだ。政府が15-17歳にわかりやすいように、若者がよく使うソーシャルメディアを駆使すること、専門用語を使わずに15-17歳が理解できる単語をつかってレターを出すこと、日常生活の「やるべきこと」にうまくサービスを統合すること(使うことでメリットを感じられるような仕組みを組み込むこと。間違ってもクーポンとかじゃないからね)。問題なく使えている15-17歳世代は、親世代がサポートしていたり、学校で事前レクチャーを受けていたりするようなので、親世代や学校を巻き込むことなども提案として上がっている。

この要注意世代が確認された時には、まさか若者が使ってくれないとは思わなかったんだろう、デジタル化庁はものすごくあたふたしていたが、その後、「ストレスフリーでデジタルポスト」を使ってねとYoutubeビデオ群を作ったり(上記)、Facebookチャネルをオープンしたり、電子認証のID(NemID)と政府との連絡チャネル(デジタルポスト)を説明するためのウェブサイトを作ったり、その努力は涙ぐましい。個人的には、アプリ・デザインでの解決方法がみつかる、模索してみたいと思っているのだが、広く該当世代へ「こんなに役立つんだよ!」PRをすることも重要だということを否定はしない。

年代問わず、新しいことに取り組んでもらうためには、それなりの策と努力と時間が必要だ。デジタルネイティブが対象であったとしても、特に、(まだ)ICTに興味がないとか、政治に興味がないとか、電子政策に興味がない人に対して、いかにメリットを示し使ってもらうかは、万年電子政府指数上位のデンマークにあっても模索ポイントである。ユーザビリティとかの視点から鑑みると某国のシステムより格段に使いやすくても、利用者のニーズやメリットや、使わないことでの不利益が本人たちにとって明確じゃないと、使ってもらえない。

あぁ、それにしても、この国は、きちんとデータを取り、分析し、欠けているピースを一つずつ確実に埋めていっているよなぁ。

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