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小林幸子の“目線と仕草”を語る #妄想noteフェス

小林幸子を語る第二弾!
前回の記事の中で、独自の世界を作り出すのは歌声・歌い方のみならず、目線と仕草も大いに影響していると書きましたが、それを語るにふさわしい動画が小林幸子のさっちゃんねるにありましたので、今回は”目線と仕草”について語っていこうと思います。

第一弾の『小林幸子のうたうLemonを語る』は色々な方が読んでくださったようで、本当にありがとうございます。Twitterで紹介してくださった方までいらっしゃって…感謝です!
ファンで集まったら『美しい!ヤバイ!神!』ぐらいしか言わないので(それも狂ってる)一介の歌い手の感想文を”面白い”と言っていただけたことが新鮮でした。

なので今回も調子に乗って書き散らかしていきたいと思います。

1.夢の世界から届いた動画

今から6年前。
芸能生活50周年記念コンサートツアーのファイナルが2014年11月17日、日本武道館で行われた。
『夢の世界』と題されたこのコンサートに私ももちろん参戦した。
(両親とファンじゃない友人たち計11名を引き連れて)
(そしてこんな頭で。臨を担当)

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号泣だったり爆笑だったり驚愕だったり歓喜だったり、この世の感情全てを詰め込んだような世界だった。

緊急事態宣言が出されstayhomeが合言葉になっていた5月の始め。
皆さんが少しでも笑顔になってくれればとの小林幸子の思いで、この日本武道館公演から抜粋された13曲が小林幸子のさっちゃんねるに一日一曲ずつ公開された。

その中から二曲、恋桜大江戸喧嘩花をとりあげて小林幸子の目線と仕草について語っていこうと思う。
(いきなりオリジナル曲の話なんて読んでくれる人いないんじゃないかと思うけどいきます)

2.恋桜

2007年発売の恋桜。
コンサートでは定番の曲で、後半幕開けで披露される口上コントの後にうたわれる曲。人には言えない、秘めた恋をうたう切ない曲だ。

もう最初から最後まで、得意の日舞に裏付けされた動きが美しい。
冒頭(0:22)の後ろ姿。なんでこれだけで切ない感情が画面から溢れ出てくるのか。

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以下に特徴的な仕草・目線の見所を載せていく。

・1:08〜『今夜は嘘がつけません』の恥ずかしがるような仕草
・前から続けて〜『隠しきれない帯の息』の帯に手をやる仕草

・1:23~『はらはら女 吹雪きます』の掌を下にし手を動かす仕草(これ良く出てくる)
・1:28~『人に言えない恋ですか』の傘を抱き締める仕草
・1:48〜間奏の傘を使った舞
・2:05の目線
・3:02〜『あなた気づいてください』の頬に手をやる仕草
・3:21〜『二千年目の星が降る』でふらっとするところ
・3:33〜『愛しすぎてもいいですか』で自分で自分を抱きしめるところ
・ラスト〜傘を持って決めるところ

あぁ切ない。。
表情と仕草で切なさ倍増だ。
声も張り上げることなくやさしくうたい、裏声を多用している。
なので時折り出てくる息の勢いがある『h肌の音』や絞りだすような『あなた』が印象に残る。
こういう切ない曲の表現が本当に巧いし、小林幸子にはよく似合う。
はぁ切ない。。。

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3.大江戸喧嘩花

続いて、2006年発売の大江戸喧嘩花。
こちらもコンサート定番曲で、恋桜の後にセットでいつも披露されている。
売られた喧嘩はなんでも買っちゃう、かっこよくて粋な曲だ。

もう最初から最後まで、得意の日舞に裏付けされた動きが美しい(2度目)
舞台袖から出てくる時(0:15)の歩き方!
これだけで恋桜とは全然違うのがわかる!ただ歩くだけなのによ?

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こちらも見所を書いていきたい。

・0:18〜笑顔がイケメンすぎ!続けて襟を正す仕草も!(後々よく出てくる)
・0:33〜掌は上向き(これも何度か出てくる)
・0:42〜同じ帯に手をやる仕草でも恋桜と全くの別物
・0:54〜『おっと野暮だねおにいさん』の仕草と握り拳
・1:04〜『肩がふれたのいちゃもんかい』の仕草と目線
・1:12〜ここの目線で相手が複数なのがわかる
・1:25〜『売られた喧嘩は買ってやる』の表情
・1:28〜間奏のミニ殺陣
・1:34〜マイクを帯にしまう仕草マジイケメン
・1:44〜見栄を切った!
・1:46〜『女だてらに〜』の手の位置!
・2:00〜ここのマイクの扱い
・2:09〜はい!また見栄!
・2:22〜ここの踊り
・2:52〜ここから最後までの仕草がイケメンすぎる
・2:56→こんな笑顔で目線もらったら即座にオチル

イケメンしか言ってない気がするが、こちらは恋桜とうって変わって最初から最後まで格好良くて粋!
裏声はあまり使わず、声をはり威勢の良さを出している。
『さぁ!さぁ!さぁ、さぁ、さぁ、さぁあ!』の潰れたような声音は、正に若衆!若衆を演じさせたらここまで格好良い女性歌手って小林幸子以外にいないのではないだろうか。

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4.相反する引き出し

二曲の動画をみてきてもらったがいかがだっただろうか。
2つに出てきた仕草と目線(と印象)をざっくりまとめてみたい。

恋桜
・女
・伏し目がち、空間をみている
・柔らかい、流れるような動き
・何かを抱きしめる
・掌は下向き
大江戸喧嘩花
・イケメン
・目力、キリッとしてる、目線は大体上、目標を定めている
・キビキビしている、いちいち決める、見栄を切る
・拳を握る
・掌は上向き

まさに真逆!引き出しの多いこと多いこと、小林幸子の芸の幅の広さを実感する。
それを見せたい、狙っているからこそ、きっとこの曲順なんだろう。

ちなみにYouTubeの動画でわからないが、この2曲の間に早替えがなされている。
芸者姿から着流し姿に早替えする、その時間はなんと30秒!
会場ではお客様からわぁ!と驚きの声が上がる見所である。

✳︎

小林幸子は10歳でデビューした。
当時は歌手と同時に子役としても仕事をしていて、勝新太郎など名だたる俳優とも共演している。

だが売れない期間も15年と長かった。

15のとき年齢を18と偽りキャバレーでジャズでも何でもうたっていた
日舞ができないから仕事がもらえなかった
役も決まり衣装合わせも終わっていたのに、運転免許を持っていなかったから役を下ろされた

なにくそとの思いで増やした引き出しは、50年の年月でなお増え続け、この日の武道館公演でぜーんぶ開いていた。

私もいつか日本武道館でコンサートをしたい

10歳の少女が見た夢を、50年かけて叶えた瞬間。
涙無しには観られなかった。

5.詩の行間をうめるもの

歌い手は行間をうめるためにうたっているんです。でも、その行間は、一生かけてもうまらないんです。

私がファンになった20年前から小林幸子がインタビューで常々話していることだ。うたのうまさだけではない、彼女のこのうたに対する姿勢があったからこそファンになったと言ってもいい。

歌詞の行間に込められた感情、隠されたメッセージを表現するために歌っている。でも、それは一生かけても完成しない難しいこと。

お芝居の脚本には“ト書き”がありますよね。歌だとしたら歌詞の行間です。映画は2時間で起承転結を描きます。でも歌謡曲は3分なんですよ。
 3分で人生、その人のドラマを伝えるのは、ものすごく難しいことです。
ト書きをしっかり読むためには、自分の中で印象的な感情や昔の匂い、感じたことをずっと貯める必要があります。そこはお芝居と歌が似ている点かもしれません。ーーー https://social-trend.jp/25826/ より抜粋

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このnoteを書くまでは、小節やビブラートなどのテクニックによるメロディーの装飾、ブレス(息継ぎ)の仕方、日本語の発し方…そういったもので“行間をうめている”のだと考えていた。

でも、それだけではないかもしれない。

うたうときの表情、仕草、己の感情、果てや衣装や舞台装置や照明だって、それをうめるのに一役買っているのかもしれない。
まさに自分の持てるもの全てをぶつける総力戦で“行間をうめる”ということにチャレンジしているのではないか。そう思うようになった。

うた、音楽、お芝居、詩、小説、映像、写真、造形、手芸・・・この世にはたくさんの表現がある。
それぞれに、それぞれの“行間”や“余白”があるんだろう。

私もうたっていて“行間をうめる”ことにかすったことはある。でも全然うまらない。まだうめるには全然足りていない。
noteで素敵な文章を生み出している皆さんは、どんな”行間”を、”余白”を持っているんだろう、意識しているんだろう。そんなことをきいてみたくなった。

6.終わりに

やばい。
今回は目線と仕草に特化して語り散らかすはずだったのに、
行間。行間を語るnoteになってしまった。
行間のことだけで一つnoteが書けてしまいそうだ…!

こちらのnoteは大麦こむぎさんの #妄想noteフェス のコンテンツ会議に、名前を挙げて頂いたので書きました!5~10分のミニコーナーとされているのに大幅に超過してしまってすみません。。
1と4だけ語ったら10分に収まりますかね?

もう4000字を超えてしまった…!最後までお付き合い頂きありがとうございました!

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――忘れたくない感情や匂いを、鮮度を保ったまま覚えていられるのはなぜですか?
「本当に悲しかったり、本当に悔しかったり、本当にうれしかったりすることは忘れないですよ。感情だけじゃなくて映画のシーンや歌のフレーズもそうですね。
 自分が『本当にいいなー』と思ったものだけが、知らず知らずのうちに、自分の中に残っていくんです。音楽がドレミファソラシドだけで構成されているのに、多くの歌が存在するのは、それぞれの音楽家が色んな場所から集めた“いいなと思った曲”がフレーズになっていくからなんですよね。色んな場所から積み重なった“好き”こそがオリジナリティだと思うんです。
 私も『美空ひばりさんのあのこぶしの効かせ方いいなー』と思ったから、身体のどこかで覚えています。すべて一緒だとモノマネになってしまいますから、全部が残っているわけじゃないんですけどね」ーーー
https://social-trend.jp/25826/より


私たちの内に降り積もるものに感謝を。

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