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あなたの知らない千と千尋

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宮崎駿監督の映画『千と千尋の神隠し』。2001年の公開から20年を経た今も、多くの人を魅了し続けています。何故、これほどまでに人気があるのか。その背景には -アニミズム- が醸す…
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#互井観章

あなたの知らない千と千尋 第8回「トンネルの向こうの不思議の街」

テーマパークの残骸だと思っていた街は、驚くことにすべて食べ物屋だった。ガラーンとした食堂街の一角から、何やらいい匂いが漂ってくる。その匂いに連れられ父と母は誰もいない食堂ののれんをくぐり、勝手に食べ始める。両親の思いもよらない行動に、千尋ははっきりと嫌悪感を示す。大人の父母より、子どもの千尋の方がよっぽど常識的だ。母は「人が来たらお金を払えばいいんだから」と言い、父は「カードも財布も持っているから俺に任せておけ」という。このあたりのセリフは宮崎監督のメッセージに聞こえる。

あなたの知らない千と千尋 第5回「神隠しの謎(その2)」

神隠し。人がある日忽然と姿を消してしまうことを神隠しという。現代でも理由も分からず唐突に失踪した事件が起こると神隠しと言われる。 はるか縄文の時代から信じられてきた神の存在。人が行方不明になる原因を神の仕業と考え、神隠しと呼んだ。子どもが神隠しに遭うと、村中総出で太鼓や鐘を鳴らして、大きな声で山に向かって子どもの名を呼び「返せ・戻せ」と叫んだ。これは「魂呼び」(たまよび)といい、死の直後に死者の名前を呼び、魂を呼び戻すことによって蘇らせる風習である。 神隠しは、神経質だっ

あなたの知らない千と千尋 第4回「神隠しの謎(その1)」

この映画の題名にもなっている「神隠し」。なぜ千尋一家は神隠しに遭ったのか。今回はその謎を探求してみよう。 【道と土】 千尋の父が運転する車は、引っ越し先の家を目指していた。ところが、杉の老木の手前、舗装道路が途切れているところで、道を間違えたことに気が付く。そこから先は未舗装の土むき出しの道。母は、周りを見渡し、丘の上に引っ越し先の家を見つける。父は、この道をまっすぐ行けば抜けられると言い、母は、いつもそういう判断がうまくいかないことを知っているので反対する。 物語冒頭

あなたの知らない千と千尋 第3回「車に関する謎 車中編(その2)」

千尋を乗せた車の窓から、濃い緑に包まれた山が見えてきました。その向こうに、山を切り拓いて造設された家並みが登場します。急な坂の上に突然現れた家々。これから千尋たちが引っ越す新しい家がその中にあります。 画面に道路標識が出てきます。国道21号線。そのまま行くと「中岡」、右折すると「とちの木」と書いてあります。実際の国道21号線は岐阜瑞浪市から米原市に至る道です。ネットでは、車の窓から見える店などは八王子付近に実際にあることから国道20号線、甲州街道の富士見付近がモデルと言われ

あなたの知らない千と千尋 第2回「車に関する謎 車中編(その1)」

この映画は、本当に不思議な映画です。 特に前半部分には意味深なシーンやセリフが多く、色々な場面にメッセージが込められているかのようです。ではその不可思議な世界へとご案内いたします。 映画は冒頭、スイートピーの中に埋もれるメッセージカードのアップから始まります。「ちひろ 元気でね また会おうね 理砂」と幼い字で書いてあります。スイートピーの花言葉は「門出・別離」で卒業式によく使われます。 やがて映像には、車の後部シートで花束を抱えうたた寝している少女が登場します。ちひろで

あなたの知らない千と千尋 第1回「7つの謎」

「鬼滅の刃」に興行収入が抜かれたとはいえ「千と千尋の神隠し」の人気はいまだ衰えるものがありません。なぜこの映画が、これほどまでに人気があるのか。その理由は、なんといってもミステリアスな要素がいっぱいあることに尽きます。そのミステリアスな部分を担っているのがアニミズムです。 アニミズムとは何か。千と千尋がどうしてこんなにも人気があるのか。映画に隠された謎を探求したいと思います。 七不思議 このアニメはミステリアスな要素満載。そもそも神隠しって何?なんで神様がお風呂に入る?