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未知の感染症に対し、老人ホーム管理者の僕が今できること

新型コロナウィルスに対する不安

ハイリスクな高齢者に関わる仕事をしている者として、新型コロナウィルス(COVID 19)の連日のニュースは、本当に心配になる。

軽症の人がほとんどだから大丈夫。
人数はインフルエンザの比ではないから大丈夫。

そう思わなくもない。

でも心配だ。


何が心配?
思いつくままに挙げてみる。

STEP1 心配の具体化

1.もし、自分や社員が媒介となって、お年寄りに感染させたらどうしよう。
それで死亡なんてことになったら最悪だ。

2.施設の中で発生したら、どうなっちゃうんだろう。大混乱で介護どころではなくなる?

3.感染対策が不十分だと、誰かに責められるのかな。(僕は管理者なので)

4.自分の家族にうつったらどうしよう。

5.社員や社員の家族が発症したら、ケアが提供できなくなるかも。


うーん。
あとは……

6.厨房職員が感染したら、食事の提供はどうなっちゃう?

7.衛生用品が足りなくなったら、他の感染症も心配だ。


うー。
えーっと。

とりあえず、そんなところかな。


僕の心配の正体がわかった。

際限なく心配がある気がして、モヤモヤしていたけど、文字にしてみると7つだけだった。

7つなら、それぞれの心配に対して、僕にできることを考える。

僕にできないことについては、考えたところで何もできないので、いったん考慮から外す。


STEP2 心配に対して、今、僕にできること

「心配なこと」1〜7に対して、今、僕にできることを考えた。

<心配1>もし、自分や社員が媒介となって、お年寄りに感染させたらどうしよう。それで死亡なんてことになったら最悪だ。

<対策1>

a.自分がうつらないように、手洗いをきっちりする。社員にも促す→確率は下げられる。それでも完全に防ぐことは無理
b.施設の中にウィルスを持ち込まないようにするため、風邪症状のある人は出社禁止とする。→確率は下げられる。無症状感染者もいるというから、それだって完全は無理。
c.重症化する前に訪問診療医と連携し、早期治療を開始する。保健所等との連携により、スムーズに診断を行えるようにする。→新型に対する診断、治療の体制が不透明なので、不確定要素多い。
d.新型ウィルスに限らず、高齢者が肺炎にかかると生命に関わるリスクがあることを認識する。治療薬があっても命を落とす人は多数いる。家族等ともそのリスクを確認する。

<心配2>施設の中で発生したら、どうなっちゃうんだろう。大混乱で介護どころではなくなる?

<対策2>

a.感染が確定したら、本人は入院だろう。
 施設の中では、まずは消毒。
 そして、本人と同じ生活導線を使用していた人と、そうでない人との行き来をストップ。
 そのゾーンの出入り口には、消毒、およびガウンの着脱スペースを設ける。
 そのエリアに入るスタッフもなるべく限定する(そこに当たるスタッフには申し訳ないけど)
 
b.最低限行わなければならない介護とは?
    清潔を保つこと(排泄、入浴、清掃、換気)
  栄養をとること(食事)
  認知症のある方がゾーンの外に出ないような対策。
  おそらく、感染が発生したゾーンの方が人ではかかる。
  感染の可能性が低いゾーンの介護を簡素化。
c.外部への支援要請
 法人本社、行政、保健所へ連絡し、必要な応援(人・物)を要請する。
 専門家の知見を仰ぎながらも、管理者が全体を把握し、指示系統を一本化する。
 指示系統が複数になると、現場は混乱する。

<心配3>感染対策が不十分だと、誰かに責められるのかな。(僕は管理者なので)

<対策3>

a.外部から批判評論する人は放っておく。批判や励ましに一喜一憂せず、現実に起きていることを整理し、その時点でできることに集中する。
b.施設外への拡大防止に必要な情報は、当事者の了解を得て積極的に公開。
c.誰に連絡するか(行政、保健所、家族)。連絡先と連絡手段(電話、メール)の整理。

<心配4>自分の家族にうつったらどうしよう。

<対策4>予防として、とにかく手洗いうがい。そして適切な受診により重症化を防ぐ


<心配5>社員や社員の家族が発症したら、ケアが提供できなくなるかも。

<対策5> 対策2b、cと同じ


<心配6>厨房職員が感染したら、食事の提供はどうなっちゃう?

<対策6> 対策2b、cと同じ
  自社提供にこだわらず、お弁当や外部からの食事の提供も選択肢としてもっておく


<心配7>衛生用品が足りなくなったら、他の感染症も心配だ。

<対策7> いつもより少しだけ(1ヶ月分)余計に在庫を持つ。市場に出回らなくなるほどの過剰在庫は持たない。自分たちが困らないことと、大切なのは全体に行き渡ること。

  特に一般的なスタンダードプリコーションに必要な使い捨て手袋と消毒液。次にマスクとガウン。
  必要量の確保の見通しが立たなくなったら、在庫のなくなる2週間前には外部へ支援要請。


あくまで個人的な心配と、それに対して僕なりに考えた対策なので、抜け漏れは多々あると思います。介護施設の対策の指針として書いたわけではないので、参考程度に読んでください。

人は不安を感じるセンサーにより自らの生命を守ると言われています。しかし、漠然とした不安は、不安障害となって思考や行動を停止させることがあります。今回の新型コロナウィルスのように”得体の知れないもの”に対しては、不安の正体を認知しづらいものです。

私もこの数週間漠然とした不安を抱えていました。しかし、不安を具体化して整理し、それぞれに対して今自分にできる対応策を考えることで、漠然と不安を抱え続ける、もしくはただ天に祈るだけよりは、心を落ち着けることができましたので、漠然とした不安を抱えている方が、心を落ちつけ次へ進む方法としては活用できると思います。

最後に、今回の新型コロナウィルス(COVID19)に感染されて治療されている方やそのご家族にお見舞い申し上げるとともに、快復をお祈りいたします。



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