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[手紙] 新しい家の中でキャンプ生活です 1921.2.28

音楽も生き方もエキセントリックだったフランスの作曲家、モーリス・ラヴェル。友人や家族に宛てた手紙、他の作曲家についてのコメント、レクチャーやインタビューなどシリーズで紹介します。
ファンタジー小説、評伝、ラヴェル本人の残したものの3部門で構成されるプロジェクト「モーリスとラヴェル」の中のコンテンツです。

タイトル写真:ラヴェルの家の窓辺(from the video by Ville de Montfort l'Amaury)

モネ劇場(ベルギー王立歌劇場)のディレクター各位
モンフォール・ラモーリー、ル・ベルヴェデーレにて

親愛なる皆様へ

 ブリュッセルを離れて、これが最初の手紙になってしまいました。そこ去って2日目には送ろうと思っていたんですけどね! そのあとずっと引っ越しに忙殺されていました。で、引っ越しはまだまだ終わりそうもないです。家の隅っこに野営するように避難して、タイル工や塗装屋、大工たちののんびりした作業を懸命に急がせています。そしてのったりとスローモーな作業から逃れるため、パリとの間を行ったり来たりの生活です。こんなにも遅くなってしまいましたが、皆さんに(例外なくすべての人に)、モネ劇場での『スペインの時』の素晴らしく完璧な上演(他にどんなほめ言葉があるでしょう)に感謝しています。

 親愛なる皆々様、(お礼の遅れを)あなた方が大目に見てくれることを信じています、心からの感謝を送ります。

モーリス・ラヴェル

*オペラ『スペインの時』は1920/1921年シーズンに、ブリュッセルで12回上演された。初演は1921年1月27日。

(アービー ・オレンシュタイン編 "A Ravel Reader: Correspondence, Articles, Interviews"より/訳:だいこくかずえ)


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