フラミンゴnote制作日誌

非商業的な絵本制作とは?

現在進行中の絵本『フラミンゴのあしはなぜ赤い』の制作日誌を綴っています。この企画は今年(2019年)2月ごろ持ち上がって、ボチボチと進行しています。

手順としては、まずわたし(訳者・編集者だいこく)が、シーンごとの台本のようなものを作りました。元のテキストは『南米ジャングル童話集』の中の「フラミンゴがくつしたを手にした話」なのですが、絵本にするために、大幅にテキストをカットし(というより、テキストから核になりそうな言葉やセリフを選び)、それを各シーンに入れていきました。

ここで使うテキストは、前回の「絵本のコトバは、何語?」でも書いたように、日本語と英語の2言語です。原語は作者がウルグアイ人でスペイン語なのですが、日本語訳は主としてリヴィングストーンというアメリカの翻訳者の英語版を使用したこともあり、日本語と英語を選びました。

英語を入れている理由は前回も書きましたが、教育的な意味合いではまったくないです。そもそもこの絵本には、教育的なところがぜんぜんありません。ストーリーはなんの科学性もなく、いわば大嘘です(よく言えば作者の創作の結果。ただし作者のキローガはジャングルに何年も住んでいたので、野生動物には詳しいのですが)。また日英のバイリンガルといっても、両テキストが必ずしも対応しているわけでもありません。

シーンごとの大筋はもちろん同じですが、日本語の流れ、英語の流れとあって、ときに日本語のセリフに対して、英語のセリフが答えている場合もあるくらいです。訳ではないんですね。でももし「教育的」という観点から見たとき(見てませんけど)、こういうのもありではないかと。

こんな風にテキストはかなり自由なつくりになっています。この台本とテキストに基づいて、絵を担当するミヤギユカリさんが絵を描いています。デザインの角谷さんも、このやりとりの最初から全面的に参加して、意見やアイディアを出してくれています。テキスト、絵、デザインが同等に近い絵本と言えるかもしれません。この三つのどれか一つが別のものに入れ替わっただけで、まったく違う絵本になるでしょう。

第一回目の絵が10月にミヤギさんから送られてきました(かなりの量で、ストーリー全面にわたっています)。ここから最初のラフなデザインに入ります。基本の体裁は2018年に出した『ワニ戦争』と同じ予定です。

ここまで読んで、ずいぶんのんびりしているなあ、と思われたかもしれません。でも葉っぱの坑夫の制作ではよくあることなのです。通常はプロジェクトを始めるとき、スケジュールとゴールを決めて動きはじめると思うのですが、葉っぱの坑夫のプロジェクトでは、必ずしもそのやり方ではありませんん。

絵本プロジェクトに参加している3者は、それぞれ商業を含む複数のプロジェクトにかかわっていることから、その合間を捉えて、絵本制作に集中できるときに作業をするというやり方です。『ワニ戦争』もそうやって作られました。

制作の手順も、絵本のつくりにおいても、かなり非商業的だと思います。どんな出版物も商品であるかぎり、売れることがまず大きな目標となります。そのための配慮(出版の時期や予告の仕方、絵本の内容や仕立てなど)は、最大限にされているはずです。そういうところからは、この絵本プロジェクトは解放されています。

制作者の自由意志に基づいて、つくりたいから、世の中に自分たちが良いと思うものを提出したいから、作っているわけです。あるいは世の中的に今こういうものは難しいという場合も、必ずしも大きな障害にはなりません。大半の人が良しとするものを同じように作ろうとしているわけではないので。また制約はなくとも、創作への意欲が減るわけではありません。こう書くと一般論として、制約によって意欲が支えられているように聞こえるかもしれませんが。

この非商業的な絵本づくりを支えているのは、制作者の純粋な創作意欲とアマゾンのオンデマンド印刷という、制作コストが初期投資としてはかからないシステムのおかげです。


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2000年4月からウェブ上でさまざまなコンテンツを公開してきました。海外文学や音楽家インタビューの翻訳もあれば、写真家の世界紀行、ゾウやイルカのストリーなどいろいろです。またコンテンツの中から紙の本や電子書籍も作っています。
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