多田 葉っぱ

晴れときどきライター

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夕方、スーパー

#創作大賞2024 #詩 この間まで、39円だったはず しばし、目を疑う あーあ 79円になっちゃったのか たかがもやしと ばかにしていたわけじゃないよ ないがしろになんてーしてない ずっと、親密に つきあってきたじゃない なのに急に、79円って 仕事終わりのスーパーマーケット もしもこれがテレビドラマの世界なら きっとここで、あら、と声をかけられる お帰りですか? いやいや、きっと、声をかけるのは私かもしれない 若い主役に興味津々 あら、お帰り? ぱっとしない脇

    • ひっつかむ

      #創作大賞2024 #お仕事小説部門 目黒から品川、品川から総武線に揺られて50分、千葉を経由して、さらに外房線、内房線、総武本線、成田線と線路は伸びている。 高度経済成長期、農村部から都市部へと流入した人々は、東京都の中心部では収まりきらなくなり、東京オリンピックで高騰した土地は労働者には手の届かないものとなり、吐き出された人たちは当然の帰結だが埼玉、千葉のどちらかの県へと落ち着き先を求めることになった。職場の近さで千葉、を選んだ私の両親、のもとに生まれた私は成長し、進学

      • 淡い笑い

        #創作大賞2024 #お仕事小説部門 そうですね。え、新しい職場の話、ですよね。ええ、そこそこやってます。あ、いやな人とかいないです。とくに?パワハラとか?そういうのないし、ああの、みんなそうですね、親切に教えてくれるしうん。あ、仕事の内容、合ってます。めっちゃ好きです今の仕事、資格も取らせてもらえそうだし正社員にもなれそうだし。感謝してます本当。 そうですか。よかったです。なかなか、転職はしたけれど今の職場が合わないとか、そういう人が多いから、何かあったらと思ってね。心

        • ブルーグレーの月曜日

          #創作大賞2024 #お仕事小説部門  最初に消えたのは、々とゝだっただった。  「このたび、長らく皆様に親しまれてきた々とゝですが、来月末日を持ちまして、廃止といたします。」  会社の2階から3階へと通じる階段の踊り場の、ブルーグレーの壁に、そう書かれた通知文が張られていたけれど、誰もその張り紙には気がつかなかった。  月曜日の朝の、重苦しい空気のなかを、パソコンの電磁波が通過していった。  同様の内容が書かれた通知は、きちんと電子メールでも届いていた。  々と

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        • ひとりごと、または生活詩
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        • 小説
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