元気か、相棒

よう、ウィル。

こうやって手紙を書くのは初めてだな。

なんだか気恥ずかしいもんだな。

俺たちもいい年になっちまった。

まさか俺に子供ができるなんて思っても見なかった。

子供ってのはなんでこんなに可愛いんだろうな。

仕事から疲れて帰ってきても子供の顔を見れば、一瞬で疲れがどこかに消えるんだ。

不思議なもんだ。

お前の得意な学問でこの謎を解き明かしてもらいたいね。

たまには久しぶりに地元に帰ってこいよな。

おまえを娘に紹介したいんだ。

父さんの相棒は世界一優秀な学者なんだぞってな。

お前は相変わらず頑張っているみたいだな。

昔からお前は少し俺や仲間たちとは毛色が違っていた。

なんだか遠くをみていたんだ。

もちろんみんなで喧嘩もしたし、将来先の見えない五里霧中の日々だった。

けれど、お前はよく本を読んでいたよな。

暇さえあれば本を読んでいた。

それにいつも違う本だったはずだ。

よくそんなに分厚い本を早々と読めるもんだ、なんて俺は思ってたよ。

お前は散々と職を替えたけど、大学の清掃員のときに人生が大きく変わったな。

清掃中に大学の掲示板に張り出されていた問題を読んで、おまえは軽々と解いてしまった。

すると大学は大騒ぎだ。

だってお前が解いた問題は、世界的な数学者でも解ける人間は限られているような代物だったんだぜ。

そこまで頭がいいとはまいったよ。

でも俺はこの話を聞いて確信しだんだ。

お前はいつまでも俺や地元の奴らとつるんでちゃいけないって。

そりゃお前はいいやつさ。

仲間思いだし、両親のことも大切に思っている。

ただ少し環境が悪いだけさ。

職に恵まれない環境でも俺たちは傷を舐め合ったやってこれた。

けれど、お前には才能がある。

だから、俺たちとは少しの間距離をおいたんだ。

仕事が変われば、環境が変わる。

関わる人間も変わってくる。

そして、それはお前にとって必ずプラスに働く。

俺にはそれがわかっていたんだ。

だから、これで仲直りしようぜ。

たまには昔の仲間で集まってパブで飲もうじゃないか。

お前の自慢話を聞かせてくれよ。

いまどんな研究をしているのか

学会とやらはどんなものなのか

ああ、そうそう。

彼女とは結局どうなったかも聞かせてくれよ。

楽しみにしてるぜ。

身体に気をつけてな。

チャッキー

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