すぐとなりにある命の危機
先日の朝、夫を駅まで車で送っていく途中のことだった。もうすぐ駅に着くというとき、フロントガラス越しに見える景色が二重三重にダブり始めた。それと同時に体の組織もおかしくなった。貧血のときのように体がふわっとして自分の体ではないような感覚になったのだ。
「なんか、へん。物がダブって見える。体もへんだ」
私がそんなことを言い出したので、助手席にすわっていた夫が慌て出した。運転し続けるのはヤバそうだったので、なんとか駅のロータリーまで行って車を停めた。
本来なら夫はそこで車を降り、電車で出社するのだが、私ひとりで帰宅するのはもはや無理そうだった。夫は出社するのを諦め、夫の運転で家に戻った。助手席で目をつぶっていた私は体の異常がどのくらい続いたのか正確にはわからないが、家に着くころにはほぼ回復していた。夫は仕事をテレワークに切り替え、私の医者通いにもつきあってくれた。
まず受診したのは眼科だ。見え方の異常は目の組織がバグを起こしたからだと思ったのだ。しかし、眼科で、視力検査、視野検査、眼底検査などをしたが(左目の視野が少し狭くなっていること以外に)異常はなく、医師からは「目は正常だから一時的に脳梗塞を起こしたのかもしれない」と言われ、近所の脳神経外科クリニックに行くよう勧められた。
その後、脳神経外科に行き、脳のCT撮影、甲状腺の超音波診断をしてもらったところ、その時点で血管の詰まりは確認されず、症状から考えると「一過性脳虚血性発作」を起こした可能性があると言われた。これは、脳の血管が一時的に詰まって脳に血液が流れなくなることをいうらしい。今回、発作が短時間で治まったのでよかったが、今後また同じ発作が起こらないとは限らないそうだ。
血液を固まりにくくする薬を処方してもらい、半年後に再検査することになった。今はなんとか元の生活に戻っているが、今回のことで私は大いに反省した。最近血圧がすごく高めなのに、睡眠不足気味で、長時間PCの前に座り続けていて運動不足なこと、それでいて毎晩アルコールの摂取量が多いことなど、体に悪いことばかりしていたのだ。
命の危機は遠くにあるのではなく、私自身のすぐ近くにあったと気づかされた。自分の健康を過信し、漠然と平均寿命までは生きられるのではないかと高をくくっていたが、それは大きな勘違いだった。今後はもう少し自分の体を労わらなければいけないと痛感している。
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