すりきれることはないけれど

 電子書籍は、いつでもどこでも端末があれば読める、なんて便利なのか、そんな当たり前のこと皆が承知だろうが、わたしはずっとあえて避けてきた。

「やっぱり紙だよ、ページをめくるのがいいよね。」

「すりきれるくらい読んで味が出るんだよ。」

「好きな本や漫画をつめこんだ本棚の背表紙を眺めるのがたまらない。」

 こうやって買わない言い訳を自分の中で延々めっちゃしてました。わかっていたから、電子書籍を買い始めたらもう止められないことを。そう、際限なく興味をひかれた瞬間に買ってしまうことを。紙媒体で買うときはあれほど熟考するのに。小説ならまず図書館で借りて、また読みたいと思ったら購入する。でももう耐えきれない、ずっと我慢してきた電子書籍。ついについに手を出してしまった。オンラインの買いやすさは何ごと。場所をとらないし、決済は秒だし。だから嫌だったのに。いまさらながら電子書籍デビューをしてしまいました。


 ついに電子書籍デビューしたわたしを待ち受ける次のハードル。すでに持っている漫画を電子書籍でも買うか否か。ずっと好きな漫画の購入だけは自分に許可を出した。そんなわたしの厳選した大好きでやまないシリーズを紹介したい。学生の頃から少女漫画といえば白泉社の花とゆめ一筋。花とゆめが好きなのは、なんといっても少女漫画が恋愛一色ではないこと。恋愛一色の漫画はだいたい嫉妬から蹴落とし合いとか記憶喪失とかキャラが亡くなるとかの展開になる。ハッピーエンド至上主義のため少しでも暗い展開はNG。中でも一等好きなのが、仲村佳樹先生の「スキップ・ビート」。このシリーズだけはもうずっと一途に読み続けている。

 !あらすじ!幼馴染の歌手デビューの夢を支えるため上京した主人公。学校へも行かずバイトを掛け持ちして家賃を稼ぐ彼女はある日、幼馴染が自分のことを家政婦としか思っていないという発言を聞いてしまう。純粋に幼馴染を好きですべてを捧げてきたのにと怒りが爆発。自分が芸能界でスターになって幼馴染をひれ伏させてやると復讐を誓う。復讐のために芸能界入りするが、役者という仕事を経験する中で新しい自分が作り上げられていく喜びを知る。いろんな役を演じられる役者になりたいと夢を持って突き進んでいく物語。

 主人公キョーコがおもしろくて魅力的でとにかく目が離せない。幼馴染への復讐が動機で芸能事務所を探し始めるから、大切な感情を失っているけど惜しい人材として大手芸能事務所のラブミー部にいれられることに。事務所の社長やそこで出会う初めての親友という存在と脇役も皆一癖あっておもしろい。仕事を受ける中で、日々演じることへの楽しさにはまっていく。役どころによって見た目がガラッとかわるのも見どころ。たちはだかる困難にも根性で乗り越えていく。過去に経験してきた辛い経験も糧にして成長していく姿がたまらない。見ていて痛快さもあり、応援したくなる。逆境に立ち向かっていく場面での、やってやる!という表情にこちらもニヤリとしてしまう。幼馴染の裏切りがあったからこそ、もう二度と恋はしないと思っていて、周囲からの好意に疎いため恋愛の進展がじれじれなのもまた良い。単行本は最新48巻まで発刊されていて、意中の人と関係にも目が離せない。ここ数巻で進展があり、やや恋愛に焦点もあたるようになったのに、おもしろい。個人的見解だが、恋愛メインの展開になると途端に面白くなくなって気づいたら不自然に最終話で終わる漫画は少なくない。でもスキップビートはいい意味で展開を裏切ってくれて安心して読める。単行本派だが本誌を買おうか悩むくらいおもしろい。

 こうやって長く好きだと思える漫画に出会えたのは幸せだ。何回も読み返したいと思うのも、何回読んでも面白いのも幸せだ。そういう意味では電子書籍はありがたいな。もっともっとそういう漫画とか小説とか物語に出会いたいな。願わくば、スキップビート好きな人と語り合ってみたいな。




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