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初めての沖縄③

沖縄2日目、初めてのダイビングの日だ。
曇り空ですごく寒かったように記憶している。

こんな身体でも潜れるのだろうか?
こんな寒いのに海に潜るのか・・・

ワクワクする気持ちと大丈夫か?と言う気持ちが交差する。

今までも挑戦して、ダメだったら次に行けばいいと思いながら生きてきたので、案外リラックスしていた。

出かけたのは10時ぐらいだったような気がする。

海パンを着て直ぐに海に入れる格好で、迎えに来たかなさん号に乗り込んだ。
記憶が20年近く前でうる覚えだが、途中に球場?スタジアムのような場所の前を通ったと思う。ホテルから30分から40分ぐらい車で走って、堤防脇のような所に駐車した。

そこで待っていたのは、Y子さんと耳の聞こえない男性と女性の3人だった。

寒空の下、海パン一丁になりボロボロのウエットスーツを着せられた。

初めて着たウエットスーツはとても温かかった。
今思えば、あのウエットスーツは3ミリだったような気がする。
知らぬが仏。冬ではありえない薄いウエットスーツだった。

真冬のパン一から着たウエットはとても温かく感じた。

一通り着替えが終わると、レクチャーが始まった。
レギュを咥えて吸って吐いて~
「これが出来れば呼吸ができます。」と言われた。

本当に簡単なレクチャーだった。

それから、ポイントの説明。
ビーチエントリーで潜ります。 水深は5mぐらいで岩場にソフトコーラルが群生していて魚もいっぱいいます。

はい!気をつけて行きましょう!の声。

こんなんで大丈夫か?と思っているうちに「じゃー行きますか!!」と言われ、手話の合図と共に男性が後ろから抱え、女性は足を抱え2人で持ち上げた。

意外に慣れてる。
ちょっと安心した。男性は、大柄で力も強く感じた。

安心したのも束の間、堤防から海岸まで下りる階段が滅茶苦茶狭く急だ。
人が一人通るのがやっとの階段を2人に抱えられて下りる。
スリリングだった。

海岸は、岩場で足場が悪かったように記憶している。

S君が機材を下す手伝いをしているのが見えた。

それから、海の中に引きずり込まれ、機材を装着させられた。
海の水は冷たく、ぼろいウエットの穴から海水が流れ込むのがわかった。
自分が何をどうされて、どうなっているのか?当時は全くわからなかった。

機材を装着し終わるとレギュを咥えさせられ、吸って吐いてをやり、呼吸できますね。と聞かれ「OK」とレギュを咥えながら言った。

では行きますとY子さんに言われラッコのような格好(仰向け)で引きずられ沖へと連れて行かれた。

波があり、天を向いてる顔に容赦なく海水が降り注ぐ。
海水の降り注ぐ力が強く、レギュのマウスピース脇から口に海水が流れ込む。

おいおい、咥えてたら呼吸ができると言ったが海水が入ってきたら呼吸できねえじゃねーか!と叫びたいが話せない。

潜る前に・・・死ぬのかな~

と思った。

今まで楽しかった事が走馬灯のように脳裏を巡った。

ふと我に返った時に顔が海面に出ているんだから波の合間に海水を噴き出して呼吸すればいいんだと思った。

若干海水が口に残るが何とか呼吸できた。

そんな時、顔を戻され身体を垂直にさせられた。
どうやらポイントに来たようだ。

Y子さんは、間髪入れず潜りますの声。

僕は、慌てて海水が口に入ってることを伝えレギュを口から抜いてもらった。
口から海水を排出し、大きく数回呼吸。息を整えた。

また、死にかけるところだった。

息を整え終わったところでレギュを再び咥え呼吸を確かめる。

準備はOK

海に潜って行く。
ちょっと潜ったところでマスク越しに鼻をつままれ耳抜き。
と、書いたがここら辺の記憶がない。

記憶があるのは、海に潜って3mぐらいのところは水温が温かかった事だ。
そして、下を見るとS君が岩にしがみついていた。

いつもかっこいいS君を見下ろすのは、少しだけ嬉しかった。
これ本人にも当時言ったように思うんだけどどうだったかな?

でも今思い返してもS君は器用でスポーツマンなんだろうと思う。
レクチャーは僕と同じ事を受けて、後はすべて一人で潜ったのだから。今でも感心する。

海の中の景色は、とても美しかった。
何とも言えないぐらい楽しくて、そして、嬉しかった。
まだできるスポーツが残っていた事と出会えた事に感謝した。

当時、写ルンですのハウジング付きで撮ったと思われる唯一の写真。S君と

楽しい時間はあっという間に過ぎる。

浮上のサインで海面から顔を出す。
帰りも行きと同じでラッコ状態で岸まで連れて行かれた。

帰りは口に海水が入らないように工夫した。

しかし、水から上げてもらった瞬間、息ができない状態になる。
またしても、死にかける。

水に濡れた身体に風が当たり、寒いのを通り越し呼吸困難になった。
お湯をかけてもらい冷え切った身体は一瞬生き返るが、まだ寒い。

ちょうどそこに、Y子さん達の知り合いの女性が来て僕をワンボックスの後ろの席に担いで乗せてくれた。
人肌のぬくもりは、とても温かく身に染みた。

座席で沢山のバスタオルをかけてもらい温かい飲み物を口にすると生き返った。

女性にお礼を伝えると、その女性は看護師でダイビングをしたいために沖縄に移住したと話してくれた。

僕の身体も回復し、かなさん号に戻ると死にそうになったことより、ダイビングができた幸せを感じた僕は、夏にまた来てダイビングすると宣言した。

ここから僕はダイビングにはまっていくことになる。
が、これ以降冬に潜ることは絶対にしないと誓ったのである。

つづく


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