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①慌てた転職活動から採用辞退まで

 5年満期の仕事を1年残した、その1ヶ月前、翌年の勤務時間と給料の削減を突然申し渡された。
 元々、業務量に対し、薄給である。楽しく、遣り甲斐のある仕事なので、適職だと迷いなく宣言出来たが、残業代の付かない残業を毎日のようにしていた為、『もうちょっと給料、何とかならんかな~』というのが本音であった。
 それが給料だけでなく、勤務時間まで減らされる!業務量が減ることは想像出来ず、そうなると、表向きは早く帰れるが、給料は減る。つまり、サービス残業だけが増えるのだ。得することがまるで無い。
 生活が懸かっているので、慌てて転職先を探す。興味深く、収入も確保されるであろう求人に運が良く出合い、ダメ元覚悟でばたばたと応募。書類選考から面接に辿り着くまでに時間が掛かり、新年度には間に合わないと思ったぎりぎりの段階で採用が決まった。
 しかし、選考段階で時間が掛かり過ぎていた為、現職の仕事は片付いていないばかりか、退職の手続きすら出来ていない。採用される確約も無いのに、仕事を手放すのは浅はかだからだ。また、本来なら離職1ヶ月前には退職願を出すことが求められている。それを考えると、各種削減の通告が、年度更新の丁度1ヶ月前だったということに、謀られた感が否めない。年度初めの入職はどう考えても無理だった。
 とはいえ採用先は4月1日の入職を求めている。選考までの道筋がタイトであるにも拘らず、目一杯時間をかけた上、直近で入職を求める。考えようによっては、こちらでも逃げ道を塞がれている気がした。
 いずれにせよ、中途半端に仕事を放棄できない。一人職なので託す相手がいないのも理由だが、放棄することで無関係の人々を巻き込み、大迷惑を掛けることになる。無視したとして、私が思っているほど混乱したかどうかは謎でもあるが、責任を持って仕事をしていた以上、それだけは避けたかった。
 熱意のある採用先から、「待ちます」という言葉をいただく。有り難かった。
 しかしいつまで待たれるのか、その辺りの話まで出来ていない。4月1日入職を求められており、そこに添えない自分と、面接時に訊かされた求人票に記載されていない部分の業務やシステムにも一抹の不安が宿る。そして、現職においては年度初めに、例年にはない大きな別業務を抱える予定でいた。
 待たれるのは有り難いが、意に添えない申し訳無さから、「他にも人を探してください」としか言えなかった。噛み合わないまま電話を切り、いつまで待ってもらえるのかを考えながら、何とか現職での第一繁忙期を乗り越える。しかし、採用確約を得た求人先からは、不採用時に返送されるはずの履歴書がまだ帰って来ていなかった。転職するのにようやく時機が訪れたかと思う一方、相手が4月1日を押していたことも引っかかる。GWを明けても返送されないようであれば、連絡を取ってみようと思った。
 もやもやが治まらない連休は、気が気でなかった。
 明けた途端、問い合わせの連絡を入れる。現職を退いてはいないので、業務時間内に電話することが出来ない。手っ取り早くファックスを送信すると、3日も経たないうちに、履歴書が返送されて来た。結局、GW明けから別の人が入職したとのこと。4月1日神話に気を揉んだのは私の方だったようだ。
「縁が無かった」という言葉が励みにはならなかったが、受け容れざるを得なかった。生活が逼迫するのは安易に想像出来たため、新たな転職先を探す日々が続くことになった。

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