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詩「病理」

嘘の嘘を見抜こうとして
私達の神経はじわじわと傷んでいる
受け容れるのは馬鹿げていて
拒絶するのが賢いのだと
自分に暗示をかけている

雑音を忘れたくて
別の雑音に身を委ねる人々
絆を信じられなくて
より細い絆に群がる人々

私達は何かに追われるように
自分より幾らか不幸な人を見つけては
指先ほどの慰めを得ている
優しくなったつもりでいて
真の不幸からは目をそらしている

いつもすたすたと先回りをして
思ったとおり駄目でしたと
孤独な安堵に甘んじている
さらに先を歩む人を
胸の底では羨みながら
心ない冷笑で見過ごしてしまう

もともと仮病なのだから
いつか熱も冷めるだろうか
昨日の道化がなかったかのように
素直な顔を見せるだろうか

要らないものは溢れているのに
大切なものが見つからない
現代という病室
安らかに眠れないのなら
せめて関係の証として
真っすぐな拳骨があれば


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