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詩「水辺にて」
心地よい風が水面をすべり
ちらほら浮かぶ舟は細かな反射と戯れています
この湖畔をゆったりと散策する人は
ふと歩みを止めては素朴な歌に耳を傾けます
ひたひたと寄せては返すさざ波に
疲れた心もわずかずつ洗われているようです
旅の途中は焦ることも多かったけれど
ひと時水のほとりに佇むと和らいでゆくのでしょう
昨日と変わらない明るい午後に
夏の雲はひと際白く厳かな力を漲らせます
山麓の町には虚飾は何一つなく
護りたいものが全て護られているのです
あんなにも憧れた夢――
全てが幼さゆえの幻にすぎなかったのでしょうか
まといつくものは片端から振り払い
叶えられたものの浅薄さにうろたえて
こんな雑音は初めから求めていなかったと
正直に言える人はまだ幸せなのです
こうしてまた水辺に帰って来て
やがて紅く染まる光景の前に
今まで知らなかった行く末を見遣ることができるのですから
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