夜、歩く。(ウラジオ日記9)

結構マンガに憧れる。スラムダンクを読めばバスケをしたくなるし、GTOを読めば教師を目指す。単純な脳。2,3日で飽きる浅はかな決断。

学校の正門で遅刻をカウントするシーンをたまに見かける。それって経験したことがないなと思って、正門で遅刻をカウントする高校に入学した。その高校の屋上には天文台がついていて、それもマンガっぽい青春をイメージさせるのに十分だった。流川みたいに教室でしゃべらないでいたら、一年間一言も発さずに一年生が終わった。マンガみたいな青春はどこにもなかった。でもそのおかげで更にマンガを読んだ。天文台に入ることも結局一度もなかった。

だからというわけでもないが、めぞん一刻式の出会いを期待して、そのホステルを下宿感覚で楽しむことにした。

気づくとベッドで寝ていた。30分くらいか。起き上がると同じ部屋の男性に話しかけられる。中国人かなと思ったがロシア人らしい。名前はシリノ。英語は喋れないみたいで、コミュニケーションが難しい。でも人の良さは伝わる。自己紹介程度の会話をして、握手をした。

それからシャワーを浴びた。たまにシャンプーと石鹸がついている所もあるけどここはないらしい。韓国のトランジットで入ったシャワーは無料なのに、質のいい石鹸とシャンプーが用意されていて、まだ肌はすべすべとしていた。それから夜の街に出る。

時計を持っていないから門限を気にしつつ、市内の中心の方へと歩き出す。

パソコンのあるカフェを見かける。困ったらここでネットを見ればいい。

やっぱりマトリョーシカはいろんなところで売っている。

何となく夜は男が殴り合いの喧嘩をしているイメージがあったけど平和。

これは治安がいいな。子連れも当たり前に暗い路地を歩いている。

昼間なんだかわからなかった店も暗い中、明かりが灯ると中が見える。そうして見ると、今朝探していた食堂がいっぱい見える。ウラジオストクの町並みは古い建物が多く残っていて重厚なつくりが多い。その所為で入り口も窓もやや奥まっていて入りづらい。何の店だかわかりにくい。ドアのガラスには大体、営業時間が書かれていて、それを見れば、時間がわかる。21が閉まっていれば、九時過ぎ。22が閉まっていれば、十時過ぎ。23が閉まっていたらアウト。

ウォッカを飲んだ。ほんとうに体があたたまるのがわかる。

でも気温は17,8度。だから暑いくらい。

レストランで店員が店内を駆け回ってじゃれ合っている。かわいらしい。時間を聞くと10時過ぎ。ヤバい。門限ギリギリだ。急ぎ足で家に帰る。途中、なんの為に走ってるんだろうと疑問が頭をもたげる。学校に遅刻しそうになって、道を走ってるときと一緒だ。なんで学校に遅刻しちゃいけないんだろうと思って、それを突き詰めるとなんで学校に行く必要があるんだと、家を出なくなるだろうから考えないようにしてまた走った。その感じと似ている。何のために急いでいるのだ。無論、響子さんに嫌われないためだ。

それに門限の感じを知っておく必要がある。さっき通った道、22の扉が閉まっている。近くのバーでは若者たちが盛り上がっている。少し寄って帰りたくなる。そのバーは24時まで。バーの外で5,6人の若者がタバコを吸っている。

ロシアではタバコは外でしか吸えない。室内は全面禁煙。それがいいのか悪いのか、タバコの吸殻がよく道に転がっている。ぼくは外で吸うタバコが好きなので居心地がいい。

22時以降、コンビニやスーパーでお酒は買えない。でもバーやカフェ、レストランに行けば飲める。つまり、23時過ぎにお酒を飲むのは難しいということだ。くぅ。

ホステルに着くと、部屋に戻る。23時ちょうどくらい。真っ暗だ。ホステル中の電気が消されている。シリノに今日の話をしようと思ったが、部屋は寝静まっていて、起きているようではない。タバコを吸おうと外に出ようとするが、23時を過ぎてから外に出てはいけない、寝てろと部屋に戻される。なかなか厳しそうである。


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