宅建士試験で40点取って合格するための最も簡単な方法はこのライトノベル小説を読むことです 権利関係編1-5

 古鉄若頭は、自分が斬新な考えをひねり出したとでも言いたそうに、満面の笑顔を見せる。
 だが、侠元先生は、あきれ顔になり、成金組長は眉間にしわを寄せていた。
「バカ野郎! 侠元先生が苦労して偽造した遺言書を無効にするようなことをしてどうするんだ! 」
 成金組長の罵声に、古鉄若頭がビクッと首をすくめる。
「へっ。どういうことですか? 」
「民法の第九百七十五条を読め! 」
 
民法
(共同遺言の禁止)
第九百七十五条 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
 
「共同遺言の禁止。これは、基本中の基本だろうが! 」
「はっ……。申し訳ありません。とんでもないことを口走ってしまいました。宅本春子の遺言書を偽造するなら、別の紙に書かなければいけないということですね」
「そうだ。それに、宅本春子の遺言書を偽造するのはリスクが大きすぎる。宅本春子の遺族に訴えられる可能性が高い」
「それは、宅本健一の場合も同じでは? 甥の宅本建太郎が訴えてくるんじゃないですか。俺だったらそうしますよ。何しろ、数千億からの遺産が転がり込むかもしれないんじゃないですか」
「宅本建太郎なんて言う奴は、もともと、相続人になる可能性は低かったんだ。宅本春子の腹には胎児がいたんだ。その子供が普通に生まれていれば、宅本建太郎が相続人になることはない。分かるだろう? 」
「へえ。それは分かります」
「民法では、一定の範囲の近親者には、最低限の遺産を渡しなさいよ。ということを定めているんだ。何の話だか分かるか? 」
「あっ。遺留分ですね? 」
「そうだ。遺留分だよ」
 
民法
(遺留分の帰属及びその割合)
第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに法定相続分により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
 
(遺留分を算定するための財産の価額)
第千四十三条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
 
「宅本春子の遺族は両親だけだ。両親は、直系尊属として、宅本春子の遺産の三分の一を無条件でもらう権利――遺留分を有しているんだ。これが何を意味するか分かるか? 」
「なるほど……宅本春子の遺言書を偽造しても無効になってしまうということですか? 」
「違う! 民法第千四十六条をよく読め! 」
 
民法
(遺留分侵害額の請求)
第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
 
「へい……。遺留分侵害額の請求……ですか」
「そうだ。遺留分を侵害しても、宅本春子の遺言書すべてが、無効になるという意味ではない。というよりも、遺言書自体は有効だ。我々が宅本春子の遺産をすべて頂くこともできる。だが、その場合、両親は黙っていない。自分たちの遺留分を主張して、我々を訴えようとする。遺留分侵害額の請求を行うわけだ。考えてみろ。我らが法廷に引きずり出されるようなことがあれば、痛くもない腹を探られる。裁判所は我らヤクザに対しては、往々にして厳しい目を向けてくる。マスコミどもも騒ぎ立てるだろう。宅本健一の遺言まで偽造したことがバレるかもしれないんだぞ。はした金に目がくらんだがために、その何倍もの大金を逃すようなことがあれば、それこそ、バカバカしいだろうが! 」
「へえ……。すると、宅本建太郎も、遺留分侵害額の請求をしてくるんでは? 」

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