宅建士試験で40点取って合格するための最も簡単な方法はこのライトノベル小説を読むことです 権利関係編1-7

「どうも臭い。これは、事故じゃなくて、意図的な殺人の可能性がある」
 崖の上に立った長身痩躯の中年刑事がつぶやいた。洞察力のありそうな鋭い眼差しを道路から崖にかけてはわせた。
 山の中の急カーブに位置している道である。道路から崖までの距離は十分にあるので、カードレールの類はない。それどころか、崖の隅に車を止めて、彼方に見下ろせる街並みを眺める人もいる。知る人ぞ知る絶好の展望スポットなのだ。崖から転落するような事故は、通常、起こり得ない。
「事故じゃないんですか? 」
 如何にも新米刑事という感じの背の低い若者が手帳を片手に鋭い眼差しの中年刑事を見上げた。
「間違いなく、事故じゃない。他殺だ」
「赤城先輩。どうしてそう思うんですか? 」
 赤城と呼ばれた鋭い眼差しの中年刑事――赤城龍太巡査部長は、道路の方を指さした。
「この場所から落ちたとすれば、道路から進入する角度がおかしい。道路に対してほぼ垂直の角度だ。ハンドルをぐるりと切って、意図的にこっちに向かったということになる。自殺志願者でもない限り、こんな進み方はしない」
「それなら、自殺という可能性があるんじゃないですか」
 若い刑事がメモを取りながら質問する。
「天木。亡くなったあの二人がどういう人間か知っているのか? 」
「へえ……。お爺さんとお孫さんですかねえ」
 天木と呼ばれた若い刑事――天木虎夫巡査が頭をポリポリかきながら、発言する。
「あの二人は有名人だぞ。知らんのか? 」
「へっ。有名人……? 芸能人ですか? 」
「違う。経済人だ。去年は、都知事選に出ていた。お前はニュースも見ていないのか? 」
「亡くなったのは、宅本健一さんと宅本春子さん……。宅本健一……、あっ、不動産王の宅本健一氏ですか! っていうことは、若い女性の方は、美人若妻の宅本春子さん」
「そうだよ。お前は気づかなかったのか? 」
「驚きました。宅本健一みたいな人がどうしてこんなド田舎をドライブして、崖から転落しちゃったんですかねえ」
「全くだ。大成功を収めて、何の心配もない不動産王だぞ。なんで自殺なんかする」
「それはそうでしょうね」
「それに、宅本春子さんのお腹は大分大きくなっていて、まもなく子供も生まれるはずだった。なおさら、自殺するはずがない」
「それじゃあ、他殺ですか」
「そうだ。事故ということはまずない。ブレーキ痕が全く無いし、仮に誤ってハンドルをこっちに向けたとしても、止まる余裕は十分にあるはず」
「それじゃあ、殺された後で、車に押し込められて、車ごと落下したと……」
「殺されたかどうかは分からないが、少なくとも気絶させられた上で、エンジンのかかった車の中に押し込まれ、そのまま転落したのだろう」
 赤城刑事の推理に天木刑事は、何度もうなずいた。
「ははあ。刑事ドラマでよくあるパターンですね。それじゃあ、二人を殺したのは誰でしょうか? 」
「言わずと知れているだろう。二人の死によって利益を得る者は誰か? 」
 
 署に戻った二人は、宅本健一、宅本春子の相続関係について調査した。
「犯人は、相続人ですかねえ……」
 天木刑事がつぶやくと、調べ物をしていた赤城刑事が顔を上げる。
「相続人だとしても、そいつが直接手出しするへまはしないだろうな。他の人間を使ってやらせているはずだ」
「どうしてです? 」

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