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年賀状係いちおしの素材集と山田さん(仮名)

10月23日、丸善にて忙しそうに動き回る店員さんに「年賀状の本はどこですか?」と尋ねなければ見つけられないほど隅っこにひっそりと設置された年賀本(年賀状の本のことを年賀本と呼ぶことにしましょう)コーナーで、年賀状の素材集を買った。ここ10年で一番早い取り掛かり、だった。

表紙は「昭和か!」と突っ込みたくなるほどの信じられないダサさだけれども、中味はしっかり定番のものから和モダン、華やか、カジュアル、マルチデザイン(?)と幅広い品揃えで、母の分、姉の分、妹の分、わたしの分、と離れて暮らす家族の年賀状をまとめて作る年賀状係のわたしにも大満足の内容となっている。「おしゃれな人は自分でおしゃれなんて言わない」が我が家の家訓なので(嘘です)、表紙に「おしゃれ」なんて書かれていないところも気に入った。しかしながらよくよく見たら、右下の「元祖!」なんて突っ込み待ちかなと思うほどダサいな。ダサいが大渋滞して一周回ってかわいい。もう一度言いますが、中味はほんとうに充実しています。我が家の年賀状係(わたしです)が太鼓判を押すのだから間違いない。

ぺらぺらと眺めてデザイン案をいくつか頭に浮かべては、あんまり早く取り掛かっても後々やることがなくなってしまっては困るのでまだ先延ばしでいいだろうと思っていたところ妹から「そんな山田さん(仮名)みたいな仕事の仕方はやめろ」と的確な指摘を受けた。

山田さん(仮名)は妹が勤務する職場でパートタイマーで働く60歳くらいの女性の方で、仕事がなくて暇になると途端に不機嫌になるらしい。しかし周りはみんな忙しくて、山田さんのご機嫌取りのためにわざわざ山田さん(仮名)のためのタスクをひねり出す余裕などなく「自分の機嫌くらい自分でコントロールしなはれ、ばかものよ」と思ってはいるけれども口には出さず、山田さん(仮名)を温かい目で見守っているらしい。優しい職場だ。山田さん(仮名)にまつわるエピソードを電話で妹から聞くのがわたしは大好き。

そんな山田さん(仮名)にまつわるエピソードのひとつが、「いつでもいいよ」と言われた仕事はいつか暇になった時のためにストックしておく、というもの。「頼まれた仕事は一刻も早くしかし丁寧に」をモットーとしているわたしには信じられない話ではあるが、山田さん(仮名)を見守る会の優しい人々は、そんな山田さん(仮名)の性質も把握したうえで、山田さん(仮名)のストック用にあえて「いつでもいいよ」と仕事をふっているのだそう。優しすぎる。山田さん(仮名)いい加減にしろよ、とわたしが代わりに叱りにいきたい。

そのエピソードを踏まえたうえでの「そんな山田さん(仮名)みたいな仕事の仕方はやめろ」。的確過ぎる。

そんなわけで先週末からやっとこ年賀状を作り始めた。時間をかけて作ったデザイン案はあっさりと却下されて、ちゃちゃっと適当に作ったものが採用されたりするのも年賀状係あるあるで、忙しい家族に代わって暇なわたしがみんなの年賀状を今年も作っている(楽しい)。

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