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夏のごちそうとスーパードライ

父の法要のため2泊3日の帰省をしてきた。

往復の交通費が約12,000円(この10年ほどの間に約1.5倍に値上がりしてしまった)、自宅を出てから実家に着くまでにかかる時間は(どこにも立ち寄らないとすると)約3時間。交通事情により地図上の距離以上に時間がかかるのだ。交通費を半額程度に抑えることも可能なのだけれど、その場合、所要時間がプラス1.5時間となるうえ、快適さが著しく低下して家にたどり着く頃にはすっかり疲弊してしまい回復に時間がかかるので、俄然12,000円の3時間コース派である。

帰省する数日前、数年ぶりに喪服を試着してみたら、あれ、あれれ、ちょっときつい気がする。そうだった、喪服というものはしばらく着ないままクローゼットに入れておくと小さくなるのだった。すでに購入してから12年ほどが経っているけれど、着用回数は、おそらく10回にも満たないのではないだろうか。長く着られるものをと試着に試着を重ねて厳選したのだけれども、こちらも年齢を重ねて当時は誂えたようにぴったりだった喪服とわたしの間にも少しずつ距離ができてきた(物理的には距離を詰めたというか、もはやゼロ距離なわけなのだけれども)。母から「うちにある予備の喪服を出しておくからわざわざ持ってこなくていいよ。」と連絡があったので、お言葉に甘えることにした。次に喪服を新調するときには、①後ろファスナーでないこと、②ウエスト周りに余裕があること、③10年後でも安心感のある丈であること、はマスト条件だ。喪服は時の経過とともに小さくなることを忘れない。

親戚の集まりの席で頂く夏のごちそうが好きだ。しいたけの出汁が香るそうめん、ねっとりとした食感の甘い胡麻豆腐、夏野菜をふんだんに使ったさっぱりとした和え物、きんぴらやいなり寿司や海苔巻きやお刺身、特別に変わったものではないのだけれども、何を食べても美味しくて感激してしまう。お茶やビールを飲みながら、配膳したり、食べたり、空いた器を下げたり、空いたグラスを満たしたり、さりげなく醤油をパスしたり、と事前に打ち合わせているわけでもないのに、それぞれが上手く立ち回って誰にとってもストレスなく宴が回っていく感じは、親戚という特別なチームワークでこそなせる業だなーと、泣きたいような気持ちになる瞬間がある。「次の二十三回忌の時にはこのうち何人が生きているだろうね」なんていう80代のおばさんからのお決まりのブラックジョークも飛び出すなどして、みんなでからりと笑ってお開きになるいつもの集い。腰が曲がってしまっても、髪の毛が真っ白になってしまっても、耳が遠くなってしまっても、いつまでもみんな元気でいて欲しいと、声には出さないけれども、みんなが静かに祈っている。途中で抜け出して庭のベンチに座って、ビール好きの親戚のおねえちゃんと、おにいちゃんと、わたしと3人で並んで飲んだスーパードライの味は忘れない。まぶしい日差しを受けながら喪服のまま、汗をかいたビールのロング缶を傾ける、そんな弔いもある。

帰省の際に親戚用に準備する手土産として、高確率で選んでしまうのが小倉山荘の米菓の詰め合わせ。

帰省の目的や準備する数によって、1,000円、1,500円、2,000円、3,000円、5,000円、と予算に応じたラインナップが豊富なところもいいし、季節感あふれる上品な包装もいい。米菓はだいたいみんな好きだし、日持ちするというのがなによりも安心だ。そのまま他の人への手土産として横流しもできるので、頂きもののお菓子を開封しないまま消費期限を切らしがちな田舎の高齢者たちに与えるストレスも少ないのではないかと思っている。たまには変わったものをと思ってデパ地下のお菓子コーナーをパトロールしてみるのだけれども、結局毎回小倉山荘の米菓に落ち着いている。お盆やお正月の帰省だと他の人と小倉山荘かぶりすることもあるのだけれども、包みまで同じものを選ぶことはそうそうないので、もう冒険はしない。これからも小倉山荘に頼り切って生きていこう。

今回の帰省中、LINEの返信をしていたら隣で見ていた妹に「おばさんみたいな入力www」と笑われてしまった。フリック入力を練習したほうがいいよと言われたので、えー今更と思いつつ、やり始めたらフリック入力が断然早いし、すぐ慣れると教えられたので、この機会にフリック入力を始めた。た、たしかにまだまだ不慣れとは言え、確実に早いような気がする。妹にならまだしも、見ず知らずの若者に「おばさんみたいな入力の仕方www」と思われるのはひどくショックなので、遅ればせながらフリック入力を一刻も早く習得したいと思う。どうしようもなくおじいちゃん化が止まらない。

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