クラフトビール、ブリューパブの魅力について
世はまさに、クラフトビール黄金時代。
以前から、ビール醸造所に併設されたいわゆるブリューパブが好きで、暇を見つけてはちょこちょこと出掛けている。わざわざブルワリーまで直接足を運び、その場所でしか味わうことのできない出来立てのビールを楽しむ贅沢。これはまさに究極の地産地消と言えるような気がする。特に小規模のマイクロブルワリーとなると、その醸造ロットの少なさを逆に生かして、積極的に斬新なビールを次々と仕込んでいたりして、ブルワリーごとに味やスタイルも様々なのが実に楽しい。クラフトビールの楽しみ方を更に発展させてくれるのが、ブリューパブという場所である。
個人的に僕が気に入った都内のブリューパブをいくつか。
1、RIOT BEER
小田急線祖師ヶ谷大蔵駅から少し歩いた住宅街にひっそりとたたずむRIOT BEER。2018年にオープンしたばかりのこじんまりとしたブリューパブだが、タップ数は10タップもあり常に様々なスタイルのクラフトビールを提供しているのが魅力。
僕は個人的にこちらのブルワリーが作るビールがとても好きで推している。ブリューパブについては難しいことはわからずとも、何となくフィーリングが合うかどうかも重要なところのように思う。醸造されるビールも、フラグシップのような銘柄を除けば一期一会なことが多いので、全体的な傾向で好き嫌いを決めた方が良い。僕はこことフィーリングがとても合う。ヘイジーなビールやIPAが多いのがお気に入り。店内の雰囲気も、地元密着型のようで、常連の方々がわいわいと飲んでいる様子がとても居心地良い。
店長さんは音楽が好きらしく、BGMにはロックがガンガンに流れている。以前、訪れた時に常連さんと「オージーだとJETとかなんだかんだやっぱりいいですよね」という話をしていて、店内BGMにJETの1stアルバムが流れていた。2019年にまさかAre you gonna be my girl?をこうして改めてしみじみ聴くことになるとは……。でも、僕もなんだかんだ好きです、JET。ロックンロールを土壌としたファンキーなブルワリー!
2、アンドビール
高円寺と阿佐ヶ谷のちょうど中間地点。リノベーションされた団地の1階に入るのがアンドビール。ここの立地がとても素敵で、地域に開かれた芝生の広場と、オープンテラスがあり、こちらと同じようなお洒落な店が何店舗か並んでいる。僕が訪問した時には、住民やほかのお店の方々なのか、芝生の広場に集まり餅つき大会をしていた。大人たちはビールを片手に。子どもたちも滅多に経験できない餅つきにはしゃいでいる。何だか都心とは言え、こういう心温まる光景は良いなあとほっこりとした。
醸造されるビールは「レモンヴァイツェン」「ライスラガー」など、個性的なものも多い。おまけにこちらの店では、ビールだけでなく本格的なカレー等料理を楽しむことができるのも魅力。なるほど、比較的爽やかなテイストのビールが多いのは、おそらくカレーに合わせるためであろうか。残念ながら、僕はまだカレーを食べたことがない。ランチタイムとディナータイムを逃すと、土日はおつまみのみ提供のビアバースタイルとなる。こちらのおつまみもどれも絶品で満足はできるけれど、次こそはカレーを……と思いながら、ちびちびとビールを楽しんでおります。
3、高尾ビール
僕の地元八王子のブルワリー。醸造開始となったのは2017年の12月から。個人的に、当時から応援をしていて、プレ試飲の際にもお邪魔させていただいた。それから2年が経ち、段々と味も安定してきて、今では大好きなブルワリーの一つ。
醸造されるビールはどれも八王子産の素材を使用した創意工夫溢れるものが多い。フラッグシップとなるのは「Oh!Mountain」というエールビール。名前はもちろんフィッシュマンズからとのこと(わかる人にはわかるのだ)。それ以外のビールについては「森は生きている」という名前の変わり種ビールがあり、季節によって素材を変え、その時々で様々なスタイルのビールを提供している。梅を使ったり、チェリーを使ったり、どちらかと言えばフルーティーなビールが多いのがこちらのブルワリーの魅力(個人的には最近提供しているミルクシェイクIPAが最高に好きです)。
醸造当初は、恩方にある醸造所にパブを併設し、まさにブリューパブという様相であったが、昨年高尾駅前に念願のタップルームをオープン。こちらは「Lantern」という店名で、高尾ビールとミハラキッチンという小料理屋の2店舗が入る複合店舗となっている。気軽にビアバー感覚でも立ち寄れるし、ミハラキッチンでは食事をしながら高尾ビールを飲むこともできる。おまけにご主人はポートランドで醸造学を学んでいたからか、海外のゲストビールが多いのもこちらの特徴。まさか、中央線最果ての地でここまで本格的なクラフトビールが味わえるとは誰も思うまい。土日は早い時間から営業しているので、例えば高尾山に登ったついでなど、是非訪れて欲しいブルワリー。
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クラフトビールの本場、ポートランドには「ビールに旅をさせるな」という格言があるらしい。要するに醸造された場所、その土地で味わいなさいということなのだろうと思うけれども、まさしくブリューパブはその格言を地で行く場に違いない。……さも自分が見つけたのように話していますが、これは麦酒工房のホームページの受け売りでございます。
ビールツーリズムとまでは行かないかもしれないけれど、やはりその土地にしかないクラフトビールが存在するということはひとつの強みになるように思う。仮にその近くまで訪れた時、わざわざブルワリーまで足を運ばせる魅力がブリューパブには大いにあるのではないか(少なくとも僕は旅先でそこにしかないビールがあると知ったら絶対に飲みます)。それに、自分が住む町に自分たちの町のビールがあるなんて実に素敵なことではないでしょうか。それこそ、誰からも愛されるサッカーチームや野球チームがあるように。ビールだってきっと地元愛を体現する存在になることは間違いない。個人的にはもっともっとブリューパブが増えて欲しいし、そこが誰かにとってのクラフトビールの入り口となれば素晴らしいことだなあと思う。
(最近の面白い取り組みだと、OEMだけど中央線豊田駅で昔醸造されていた豊田ビールを復刻させて、そのビールを提供するためのビアスタンドが豊田にできたらしい。こういうのってやっぱり良いなあと素直に思う)
東京でも探してみると案外色々な場所にブリューパブがあります。そして、一人でも仲間内でも、気軽に訪ねることができるのがブリューパブの醍醐味。次の週末、ふらっと訪れてみるのもいかかがでしょうか。
※最近買ったこのムックが大変素晴らしかったので、おすすめします。都内のブリューパブやクラフトビール提供店舗巡りのお供に!