10年お世話になった空手のk先生 へ

10年お世話になった空手のk先生 へ

 お久しぶりです。覚えていらっしゃるでしょうか。小学二年生から高校二年のときまでお世話になっておりました、はのとと申します。

 私が空手を始めたのは、言ってしまえばついででした。本来は両親が弟のために探していた道場で、なんとなく一緒に始めたのが私です。
 ところが始めてみると、最初にはまったのは私の方でした。

 当時道場には女の子が少なく、常に男の子相手に稽古をしていました。空手と言っても、今注目を浴びているような形のかっこいい空手ではなく、ほとんどK-1に近いものでしたので、最初は男の子と組み手をするのが怖かったです。それでも頑張れたのは、先生が親身に教えて下さったからでした。

 級が上がり時間も変わると、そこには同じ世代の女の子が何人かいました。みんな私よりも年下で、でもとても強くてかっこいい子ばかりだったのを覚えています。
 小学校二年で始めるの遅い方でした。だから、周りにはいつも年下ばかりだったのです。

 そんな中でも、彼女たちはすぐに私を輪に入れてくれて、女の子たちのコミュニティの中で私は空手を楽しんでいました。年が上と言うこともあり成長が早かった私は、いつの間にか彼女たちより前にいました。でも、誰が急を上げても、私たちの関係性は変わらず、みんな友達でした。はのとちゃん、と笑顔で寄ってきてくれる年下の先輩たちは、みんな可愛い友だち。

 気が付くと、後輩が沢山出来ていました。中には今までいなかった同級生の子、そして年が三つ以上下の子。長く同情にいるほど後輩は増え、いつの間にか私は、女の子たちのコミュニティのリーダー的存在になっていました。小学校で学級委員をやっていたこともあり、そういったポジションに向いていたのかも知れません。

 先生は子どもたちの様子をいつも見て下さっていました。変わった様子の子がいると、私伝えに声を掛けてくださいました。「〇〇は最近元気ないけど、何かあったのか。」「〇〇はそろそろ昇級試験を受けていいと思うんだけど、何か言っていたか。」など、頼られているようで本当に嬉しかったです。

 女の子が少ない世界だったので、新しく入った女の子には必ず声をかけ、輪の中に入れるよう努力しました。中には、コミュニケーションが苦手なこと交換日記をしていたこともあります。先生は、そのことを知ってくださり、ありがとうと言葉をかけてくださいました。私こそ、ありがとうございます。

 五年生で初めて出場した大会では結果を残せませんでした。ですが、その後もっとやる気を出した私は、次に出場した大会で準優勝をすることが出来ました。極めて背が低い私に、先生は間合いを詰めた戦い方を教えてくださったのです。この間合いで力を出せるのははのとだけだ、と、笑顔で教えてくださったことをよく覚えています。

 六年生で出場した最後の大会では、入賞こそ出来なかったものの、敢闘賞を頂くことができました。今までの大会で、私が支部の女の子たちをまとめている姿を見た他支部の先生が、私のために用意してくださったようです。

 力で結果は出せませんでしたが、それ以上のものを得ることが出来たように思います。先生のご指導、ご支援があったからこそのものです。本当にありがとうございました。

 小学校を卒業してから、大人に混ざっての稽古が始まりました。今まで面倒を見てきた子たちに沢山のプレゼントや手紙を貰いましたが、それは余計に私に後ろ髪を引かせました。だけど前進しました。

 大人に混じると、余計に自分が小さく感じました。その中で教わったことを活かし、沢山の先輩方を困らせることが楽しかったです。変化する蹴りが入るときが、一番の快感でした。仲間の面倒を見ることがなくなり、反対に面倒を見られる側になってから、私の戦い方は伸び伸びとしたものに変わったと思います。

 高校一年の冬、大きなケガをしていまいました。それは稽古中に起きて、しばらく右手を使うことが出来なくなってしまいました。自分のケガと道場内の問題が重なり、結局数か月後、フェードアウトするように空手を辞めました。

 あの頃はそれでよかったのですが、今になって、空手をやりたくてうずうずするのです。身体を鍛え、大人に向かっていき、激しく転ぶ。そんな風にめちゃくちゃだったかも知れないけれど、その時間はとても楽しいものでした。

 それに、道場の先輩方は皆さんとても優しかったのです。一回りどころか、両親と同世代だったり、それ以上に高齢だったりする方々と一緒に稽古をすると、自分の人生がまだまだこれからなんだということを実感させられます。辛いことがあっても、まだまだ頑張れる、という気持ちになります。

 小さなことでもアドバイスを下さり、同じ時間に女の子が一人もいないと皆さん気を遣って声をかけて下さったり、美味しいご飯を教えて下さったり。何気ないことですが、当時は年上の方と触れ合う機会がなかったので、毎日が新鮮でした。

 空手を通して学んだことは、武道だけではありません。継続の大切さや年長者を敬う気持ち、そして助け合う精神など、上げて行ったらきりがありません。そんな道場で稽古が出来て、私は幸せ者でした。

 もう空手とは遠いところにいますが、空手を習っていなかったら出来なかったことが沢山あります。確実に、空手が当時の私を形成していました。

 大変お世話になりました。沢山面倒を見て下さり、ありがとうございました。この時期になると、花粉に負けそうな先生の姿が思い出されます。どうかご自愛ください。


2021年2月27日 はのと

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