友だちに初めての恋人ができて、変わったことがある。

 こんにちは。久しぶりの1日オフ。今日は絶対外に出ないと決めています。次のオフは2週間後? なんてこった。大学生活最後の春休みにして1番多忙な春休みを送っています。内訳ですか? 部活5:遊び3:病院2です。しょーもな。でもさ、そんなしょうもない日々すら二度と送れないかもしれないので、体力は心配ですが、やりたいことは全部やってから卒業します。

 はのとです。初めまして。


 私は軽音楽部に所属していて、3年生のときは幹部をやっていたくらいしっかりと活動してきました。サークルじゃなくて部活っているのがまたミソですね。

 辛いこともたくさんあって、何度も辞めようと思ったことがあります。それでも続けてこられたのは、ひとえに同期の支えのおかげです。その中でも大きかったのが、同期ではあるけど、友だちと言った方が近いようなたった1人の存在。今日は、その子の話をします。


 彼女とは共通の趣味で仲良くなりました。互いにコミュニケーションが下手で、ファーストコンタクトがたどたどしかったのを覚えています。それでも、彼女が私に「〇〇好きなの?」と話しかけてくれて、そこからですね。

 他の同期たちはすでに先輩方と打ち解けていて、異性の同期たちとも普通に話していて、だけど、これもまた珍しい共通点である女子校出身である私たちは、同性の同期と話すことで精一杯で。

 だから、ライブのときとか週に1回の部会のときは隅っこで2人でじっとしていて。困ったものですね。でも、コンプレックスを共有できる人が同じコミュニティにいるというのは、とても心強いものでした。


 紆余曲折あり、彼女はその年の合宿が終わったあとに部活を辞めてしまいました。原因となった先輩方のことを考えると、今でもはらわたが煮えくり返るような感覚になりますが、まあいいでしょう。

 部活を辞めてからも、定期的に一緒にご飯に行ったりと良好な関係を築いていました。だからでしょうね。同期、というよりも、友だちという感覚が強いのは。同期であった期間は、この時点でたったの4か月程度ですから。


 2年生になりました。2020年。コロナの大流行で、私たちは約束していたご飯を延期。結局、それが実現する日は来ませんでした。それどころか、たまにインスタのストーリーで生存確認するくらいで、連絡をとることもなくなって。

 私は私で、部活が禁止になってしまったので、今まで一生懸命取り組んでいたものが突然なくなり、虚無感を抱えたまま過ごす日々が続きました。


 そして3年生。大学がようやく少し解放され、それに伴って、私たち3年生は突如幹部の座を与えられました。何も知らない1年生のまま時が止まっていたのに、急に新入生を獲得するために動いたり、イベントを企画したりしなくてはならなくなって。

 突然の状況に戸惑いましたが、twitterで新歓活動を行っていると、興味を持ってくれた人たちがたくさん現れました。部員のたまり場にも少しずつ人が戻り、そこに新入生を呼んで交流会をしたりできるようになって。

 その日、私は彼女に連絡しました。

 「あの先輩たちも、みんな卒業した。もう、私が幹部になった。部活、戻ってこない?」

 半ば強引だったと思います。それでも彼女は、たまり場に姿を見せて正式に入部してくれました。私たちは、1年半ぶりに「同期」に戻ったんです。苦しい場所でしかなかったはずの部活に再び戻ってきてくれたことが、本当に嬉しかった。

 途中入部扱いですから、彼女は同期の中で唯一役職が与えられなくて、いわば平社員でした。だからこそ変なしがらみとかないから、ただの友だちとして私の背中をずっとさすってくれていたんです。他の同期には相談できないこと、言えない愚痴も、彼女にだけは話すことができました。

 その度に肯定してくれて、労ってくれて、本当に私は彼女がいなかったら3年生の1年間を耐えられていなかったと思います。そして、幹部を終えたあとの、ただ楽しいだけの部活、ライブも、知らないままだったと思います。


 4年生になりました。私は教育実習や採用試験に専念するために一旦部活を離れ、他の同期も同様に就活に専念していました。そんな中、彼女だけは常に部活に顔を出していた。彼女のパートはドラムで、当時ドラマー不足に悩まされていたからです。

 だから彼女がライブに参加せざるを得なくて。就活のいい息抜きになって助かっていると、そう言いながら練習の様子を動画で送ってくれる彼女は、とても楽しそうでした。

 そうこうしている月日は経ち、5月の中頃。久々にたまり場で彼女に会ったときに、こっそりとこんな話をしてくれました。

 「この間、Aと2人で水族館に行った。お揃いのキーホルダーを買った。これって、そういうことかな?」

 Aとは、私たちの後輩。2つ下のドラマーで、今まで彼女との関わりなんて一切なかったはずでした。私が少し目を離した隙に、まさかそんなことが起こっていようとは。

 でも、大好きな友だちの、4年間で初めて出た浮かれた話がとっても嬉しくて、うきうきしながら聞いていたのを覚えています。少し恥ずかしそうに、でも、期待するようなそのまなざしが眩しくて、いいな~、素敵だな~、嬉しいな~、と、そんなことを思っていました。


 正式に付き合ったという報告がきたのはその1週間後でした。


 私が実習を終えた6月の中旬、次に控えているのは春のライブでした。例年6月に行っているライブです。もちろん私は出ることができませんが、このライブからちらほらと4年生が復帰してくるのです。

 私たちの同期から復帰者は出なかったけど、彼女だけは1バンド組んで出ていました。休んでないですね、彼女だけ。でも、楽しそうにドラムをたたく彼女の姿を見るのが、私は好きでした。

 そのライブが行われたのが、少し遅めの7月頭。もはや春でもなんでもないですが、まあそんなことはどうでもいいでしょう。何よりも、私の採用試験の日程と被っていたのです。

 午前中、大学2年生のときから一生懸命準備してきたすべてを動員して試験を受け、その足で猛暑の中ガンダを決めライブが行われている大学へ。バタンとドアを開けると、偶然その場にいた同期たちが笑顔で迎え入れてくれました。

「おかえり!! 試験お疲れ様!!」

 それだけでとっても嬉しかったな。私は部活が、同期が大好きなのです。そんな私が、行われているライブを見られずに過ごしたこの3か月間は、本当にただの虚無でした。だから、ようやく部員みんなが集まっている場所に、部員としてしっかりと戻ってこられたことが嬉しかったのです。

 そうして同期や後輩たちと話をしていると、休憩の終わりを告げるアナウンスが入りました。うきうきしながら会場の扉を開く。そこは、私のよく知っている空間でした。大きい声を出したくなる衝動を抑えて、ステージの前を占領する。

 1年生からしてみたら、突然知らないスーツの女が仁王立ちでステージ真ん前を陣取るものだから、さぞ不愉快だったでしょう。本当にごめんなさい。


 そんな感じでライブを楽しんでいたときに、ふと気づいてしまいました。彼女が、私の隣にいない。今までのライブでは常に彼女が私の側にいて、ずっと一緒にライブを見ていたと思います。なのに、今隣にいるのは別の同期とさっき仲良くなった1年生のみ。

 あれ? と思って会場を見渡すと、隅の方に見つけました。彼女とAが並んでいるところを。いかにも、というような様子で、誰もその間に入っていくことができませんでした。私も。あんなに仲の良かった私も、固く作られた「2人だけの世界」に入っていけなかった。

 心に小さく、ピキッと痛みが走りました。


 結局その日、解散の合図まで彼女と2人になることができませんでした。打ち上げで数人で飲みに行ったけど、その場でも彼女とAは隣に並んで座って、2人だけで話したそうでした。でも、私はその向かいに座って、彼女と話をしようと前のめりでした。

 この時の感情、なんだったんだろう。今でも同じような感情をずっと抱えています。彼女は、恋人ができて、私や同期、別の後輩と関わる時間を大幅に削って、恋人と2人だけの時間を作るようになりました。でも、Aは逆です。今まで誰ともかかわっていなかったのに、彼女と付き合うようになってから社交性がついて、色んな人と話すようになりました。それでも彼女がいるときは2人だけになりますが。


 寂しい、のでしょうね。私は、彼女と1番仲がいいと思っていました。実際、そうだったと思います。抱える生きづらさ、苦労、そういうものを共有して、楽しいこと、嬉しいことも共有して。

 その立ち位置を、ぽっと出の後輩にとられてしまったことが、寂しかったんだと、寂しいのだと思います。嫉妬ですね。恋人にも嫉妬しないのに、友だちに対する嫉妬心が強すぎて困る。

 でも、そんなこと言えないし、2人を咎めることもできないし、もしかしたら過去、恋人がいた大学1年生のときの私も、同じことをしていたのかもしれないと思うと、ね。今は別の恋人がいますが、やっぱり1人目の恋人というのは浮かれ方が違います。多少他を犠牲にしても、一緒にいたいと思ってしまう気持ちは、分からなくもないのです。

 失敗を繰り返し、4年生になった私は、恋人を大切にするのと同時に、同様に、今まで通り友人やその他の人たちとの関わりも大切にしなくてはならないことを学びました。「2人だけの世界」が、それ以外の世界を壊しかねないことを学びました。でもそれは、失敗が教えてくれたものでした。

 別に、失敗なんてしないならしないでいいと思います。私だってしたくないし。でも、それでしか学べないものもあるよな~、学ばなくてもいいのかもしれないけど、と思うわけです。


 別の同期や私は、付き合った当初たまに彼女に忠告していました。「2人でずっとべったりいると他の人が気遣うよ。2人でいたいなら、部活以外でやった方がいいんじゃない。」彼女はその度に頷いて、「そうだよね。」と言っていました。

 でもね、恋愛というは理屈でどうにかなるものではないのです。もう残り1か月もしないで卒業ですから、残りの期間を大きな問題を起こさず卒業すれば、特に気にするようなことではないのかもしれません。


 それでも私は、寂しいです。今までみたいに遊べなくなったこと、今までみたいに一緒にライブを見られなくなったこと、今までみたいに一緒に涙を流せなくなったこと。私は、この心に空いた穴を埋める術を知らないので、もう少し耐えてみようと思います。


 そして、今一度自分のことも振り返らないとね。

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