細美武士という概念 from ELLEGARDEN Get it Get it Go! SUMMER PARTY 2023

    こんにちは。視覚過敏なところがあります。太陽の光とかすごい弱くて、調子が悪いと外にいるだけで頭が痛くなったりします。それとは別なんですけど、聴覚も時に過敏になることがあります。夜寝るときです。車の音とかあんまり気にならないんですけど、虫の声とか風の音がどうしても気になって眠れない。田舎だから、超静かな夜に虫が気になって眠れないのです。

    はのとです。初めまして。


    なんか気持ちが落ち着かなくて、言語化できなくて、気づいたらこんなにも時は流れていました。時が流れると記憶も薄れます。もう遅いけど、いい加減何かは書いておこうと、書き残しておこうと思って、今ここに至るわけです。

 ライブの話はきっと色んな人が書いているし、プロもレポートを出していると思うので、そっちはその人たちに任せます。私は、事実ではなくあまりにも個人的なことを。感じたことを。受けた影響を。


 8月17日。千葉県はZOZOマリンスタジアム。夜21時半ごろに道を歩きながら、私はふとこう思います。

 「神、いた。」

 なんかもう、どう言葉にしても安っぽくなってしまいそうで、逆に何も言いたくないみたいな気持ちありますね。私なんかが言語化すると、そのものの価値を下げてしまいそうな気がしてしまう。

 そんなこと言っていては何も言えないので、それをご理解していただいた上でこの先に進んでいただけますと幸いです。あのとき、同じ場所で同じ時間を共有した方もいらっしゃることでしょう。同じ記事を書いた方もたくさんいらっしゃるでしょう。それでもなお、私はここに記します。私にとっての、あの空間を。


 Get it Get it Go! SUMMER PARTY 2023に参加してきました。2000年生まれのミレニアムベイビーである私にとって、動くELLEGARDENを見るのは初めてのことでした。もはや架空の存在まであったエルレ。

 5月に当落がありました。その直後に、恋人の影響で聴くようになったBUMP OF CHICKENのツアーファイナルに行ってたんです。恋人につれられて。エルレは、私の影響で恋人が好きになってくれたバンドでした。BUMPとは全然庭の違うバンドだからさ、そんな恋人をエルレのライブに連れていくのはちょっと不安だった。でも、2人で当選を大喜びしていました。

 当然のことながら、2018年の復活ツアーは落選。当時大学受験の年でGWに参加したビバラで受験前最後のライブって思っていたんですけど、復活を知りそんなこと言ってられないと申し込みました。最後まで何度もトライしましたが、結局当選することはなく、黙って勉強をしていたことを覚えています。

 そして次、昨年ですね。Lost Song Tour。Zeppも全部外れました。フェスでもワンマンでも対バンでも、ことごとくチケットにご縁がないまま過ごした日々を私は忘れませんよ。そう、その恨みはイープラスに蓄積されていくのです。嘘、イープラスは何も悪くない。


 高校生のころ、ふとしたきっかけで出会ったエルレ。いや、本当は最初に出会ったのはMONOEYESでした。一発で脳髄を撃ち抜かれ、そこからずるずるとエルレ、エイタスと引きずり込まれ、もう全部曲を聴いて大好きになってしまった。

 知ったころにはもう活動休止をしていて、私にとってはつまり解散しているバンドとほとんど同じような感じがでした。だって、活休してもう当時で8年とか9年とか経ってたんだよ。活動当時のことも知らないし、空気感もわかんないし。

 そして復活を遂げ、ずっと外れ続けてきたチケットがようやく私を拾ってくれました。奇跡かと思ったよ。当時喉をやっていて出ないはずの声が出た気がしたよ。それくらい嬉しくて、でも夢みたいだった。現実味はなかった。

 新しいアルバムの中で、「ティダ ラバダ We get it get it go」っていうフレーズが本当に大好きで、最初に好きになった曲がチーズケーキ・ファクトリーでした。だから、それを掲げたツアーで当選できるなんてね。私ってば新社会人生活頑張っちゃったから、いい加減神様も味方してくれるようになったんだ。


 私の悪い癖ですが、本題に行くまでにすごい長い文章を書いてしまう。まだ当日の話まで行ってない。だから当日の話にします。


 本当は午後休を取るつもりだったんだけど、まあいっかと1日休みに変更し、夕方ごろ着くように、ボディバッグに水と財布と携帯を入れていざ出発。卸したてのグッズに身を包み、電車に乗る。

 途中恋人と合流。合流前から斜め前に座っていたおじさんは、私と同じTシャツを着て眠っていた。ここでは1人のおじさんも、私より元気なさそうなおじさんも、もしかしたら数時間後には知らない人たちともみくちゃになって叫んでいるのかもしれない。不思議。

 日頃運動不足の私。そもそもお外に出ない私。基本的に車移動の私。何が問題って、まずZOZOマリンは駅から遠い。バスという手段もあったけど、なんかテンション上がってるし人たくさん歩いてるから、なんとなく歩くことにしてしまった。失敗だ。到着前にへろへろ。

 グッズはもう買ったけど覗いたり、フォトスポットの列を見て諦めたりしている中で、私の体力は限界を迎えます。よわよわ体質を襲ったのは、シンプルな軽度の熱中症でした。何も驚くことではありません。だって、職場で4階まで階段を上っただけで頭痛なんですから。

 ふらふらとして足が前に進まない。そんな人間が夏の野外ライブに来てはいけません。法律で制定しましょう。幸い大事には至らず、少し日陰で休んで高田のおいしいカレーを食べたら復活しました。元気もりもり。恋人に、「今度一緒に運動しようか。」と冷静に言われました。


 私が高田カレーを食べている目の前で、アリーナの血気盛んな人間がスタジアムに吸い込まれていきます。見ていると本当に面白い。だって、みんな全然若くない。みんな全然可愛くない。どこの界隈にも必ずいるような、ライブなのになんかすごいおしゃれしてメイクして、みたいな人間がいない。全員最低限の装備を身に着け、準備体操をしながら整列している。不思議だ。

 まもなく私たちスタンドの人間も開場となり、さすがに慣れた電子チケットで入場。席に着く前にお手洗いに向かう私は、「BUMPほど女性客の割合多くないと思うから、あのときほど時間かからないと思う~」などと呑気なことをのたまいました。

 確かに、客層として女性のほうが多いということはないのかもしれない。それはきっとBUMPもそう変わらないと思いますが。でもね、なめてたわ。普通に、男性のほうが多かったとしても、女性も当然ながら一定数おりまして、ZOZOマリンにあるお手洗いの数ではさばくのも大変でした。

 まあ自分も女性だし。まだ同じ女性でエルレ好きな人に出会ったことはないけど、よく考えれば、細美武士はかっこよすぎるしエルレの音楽は男女問わず刺さるものだろうから、関係ないわ。よく分からない自信をもっていたことを反省し、おとなしく長蛇の列に並ぶ。早めに入っておいてよかった。

 並んでいる間に何やら他アーティストからのビデオメッセージみたいなのが流れていたみたいで、「今GEN映ってたよ」って恋人が教えてくれました。見逃したぜ。


 開演まで残りわずか。そんなときに現れたのが、細美さんを長年取材しているライターの方でした。彼はこんなエピソードを話し、私は普通に泣きました。

 「細美さん10時なら電話出るって言ったのに、なんで出てくれなかったんですか。」「悪い悪い、今福島の保育園で園児と一緒にアンパンマン歌ってたら楽しくて出られなかったよ。」

 ニュアンスです。概要です。細美さんは、いつだってそういう人だ。情報として知っていた。でも、実際にその話を聞いて、事実としてそれを知った。実感を伴って知った。細美さんって、そういう人だ。

 自分より優秀な人を見ると、私は多かれ少なかれ妬みます。素直に「すごいな~」と思うだけのことのほうが少ないです。醜い人間なのです。でも、細美さんに関しては、「は…すごい…」と言わざるを得ない。納得するしかない。私とは、戦っている土俵が違いすぎる。そう感じるのです。

 だからこそ、私は細美武士という人間をまっすぐに見上げることができる。見上げて、初めて見えるものもある。醜い私でも、新しい一歩を踏み出すことができるようになる。


 そんなこんなで、開演前から涙ぐむ私。しかもさ、このあと細美さん自ら出てきて注意喚起したじゃないですか。細美さんを最後に見たのは前述の2018年のビバラ、MONOEYESでした。だから5年ぶり。5年ぶりだったけど、細美さんは変わっていなかった。細美さんって、そういう人だ。言語化不可。

 細美さんに「ケガをするな。」と言われてしまえば、我々バカどもは「はい!!」と右手を挙げるしかないのです。「ダイブは限界が来るまでしません!」「申し訳ない気持ちでおとなしく転がっていきます!」みたいな宣誓を自主的にできます。なぜなら細美武士は神だから。従うしかないのです。

 そんな様子を目の当たりにし、ああやはり私はエルレを見に来たんだと改めて実感しました。エルレの音楽はさることながら、この人たちがエルレだから、我々はここに集ってしまったのだと。


 高校時代から軽音楽部でキーボードを弾いていた私。大学4年生になるタイミングで、こんなに大好きなのにエルレを自分でできないなんておかしい!! と突然ギターを購入し練習し初めました。教育実習とか採用試験とかあるのに、ギターを片手間練習。本職のキーボードはほったらかし。可哀そう。

 そしてその年の冬、ついに部活のライブでエルレをやりました。そのときにコピーしたのが、Marry me、サンタクロース、風の日、supernovaです。私があまりにも初心者なので、Marry meはすごい好きな曲なのに同じ部活でギターを弾いていた恋人にバトンタッチしました。残念。

 サンタクロースは、エルレの曲の中で1番大好きな曲。Marry meはその次に好き。風の日はメジャーな曲の中でできそうだったから、supernovaはエルレをやる以上絶対にやりたかったから。そんな理由で決めたセトリでした。それとは別の機会にスターフィッシュをやったこともあった。

 Marry me以外は全部聴けた。私がコピーした曲を、本物が、本物の音で魅せてくれた。生形真一のギターはまじでかっこいい。うぶぺじおが刺さる。綺麗で、でもきれいすぎずにエルレっぽいやんちゃな感じが見えるアルペジオ。大好き。

 1番好きな曲が聴けて、自分が軽音楽部時代にコピーした曲も聴けて、それどころか普通に聴きたいなと思っていた曲ほとんど聴けたと思うんだわ。曲数やりすぎなんだわ。さすがエルレなんだわ。


 正直、細美さんの激エモ長尺MCにも期待していたけど、MCにはあんまり時間を割いていなかったような気がする。気がするけど、それでもエルレのメンバーが楽しそうにステージで笑っている、話している様子は、本当に映画を見ているような気持ちになった。

 こんなものを肉眼で見ていいのか、みたいな意味わからん気持ち。これでも必死に言語化してるんだけどね、これ以上は無理だね。感じ取ってほしいです。


 ダブルアンコールも確かあったような気がして、酒を煽りながらステージを降りていく細美さんを見て、ああそうそう、私の好きな、私の憧れたロックスターだ、と感じました。

 どうしても私たち観客を称するいい名称が出てこなかったのか、そもそもそれしか浮かんでいなかったのか、「バカども」と呼称されてしまった私たちバカども。だがそんな不名誉な名称でも懲りることなく、これからもそれぞれバカとして生きていくのだと思います。翌日から、バラバラに。

 それぞれが成長して、またここで会おう。それが、バカどもに課せられた唯一の使命。成長とは言っていなかったと思うの。なんかもっと、なんでもいいから、って感じだった。でも思い出せないから、本当にごめんなさい。とにかく、日々辛いことから逃げたって、それでもいいから、生きて、死ぬまでにもう1回だけやるZOZOマリンでのライブで、また会おうって。


 もうしばらく会わない人もいるかも、ここが最後の人もいるかも。そんな感じのことを細美さんが言っていてさ、あー寂しいなって。急に思ってしまった。今までライブが終わるときは、楽しいことが終わってしまった寂しさ、だった。でもこの日は違った。エルレにしばらく会えない寂しさ、だった。

 この微妙な違い。微妙だけど、実は結構全然違うような気もする。そんな寂しさを覚えながら、私たちは混雑する道をよけて歩き、目的とは違う駅に到着し帰路につきました。全然座れなくてくたくたの私は大変だったけど、なんかもう言葉も出ないくらい打ちひしがれてしまい、黙って電車に揺られました。


 どうしても、やっぱり私にとって細美武士という存在がでかすぎる。これはもはや、存在というよりも概念なのだと思う。細美武士という概念が、私の中にはっきりと存在しているのだと思う。何を言っているんでしょうね。でも、そう感じるのです。

 私はこれからも色んな音楽に出会って、色んな人に出会って、色んなことを経験して、色んな別れがあると思う。そんな中でも、きっとずっと私の人生を救ってくれるのは、心の奥の奥のほうに寄り添ってくれるのは、エルレ、MONOEYES、そしてエイタスなのかなと思います。

 私の人生において、細美武士に出会えたことはあまりにも大きなこと。大きな転機。そしてこれからも、ずっとよろしく、私をよろしく、って思います。

 普段はバラバラに生きている私たちが、エルレのライブに行くときだけ、共通の概念に対してバカになれる。仲間になれる。でもそれが終わったらまたバラバラの人生を生きていく。1人ぼっちかもしれないけど、エルレのライブに行けば、1人ぼっちではなくなる。これって、本当にすごく尊い瞬間だと思うんです。


 久々にこんなに書いてしまった。バカのなっがいたわごとに付き合ってくれた誇り高きバカのみなさん、ありがとう。またどこかで、今度こそどこかで、一緒に笑いましょう。歌いましょう。泣きましょう。


 今年のCDJはさすがに出てよね、MONOEYES。

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