高校生活を共にしたm へ

高校生活を共にしたm へ

 久しぶり。元気?最近連絡の頻度も減ったし、私はインスタあんまり見ないから、mがどんな感じか全然分かりません。かく言う私のことも、mはほとんど知らないよね、大学生になってからのことは。

 高校入学して、隣の席に座ってた、今まで15年間生きてきて出会った人の中で一番可愛い子。何度も伝えてる第一印象だけど、ほんと、時が経つとこの第一印象がバカバカしく思えてくるね。
 可愛いは見慣れる。そんなこと言いながら、よく二人で笑いあったね。お互い顔面には多少の自信があって、周りからは可愛い子が二人で、みたいなこと言われてた時期もあった。それも入学したての頃の栄光だけどさ。

 mはギリギリで入試通った子で、私はその真逆。mはインスタとかこだわるの好きで、私はその真逆。mは恋愛経験豊富だけど、私はその逆。だけど、私たちには共通点も沢山あった。同じアイドルを同じ時期から好き。歌うのが好き。男にちょろい。名前が珍しい。声が似てる。人間関係は狭く深く。

 そんなこんなで、私たちが仲良くなるのに時間はそうかからなかった。今まで出会ったことがなかった同じアイドルのファンが隣の席なんて、それがもう奇跡。席が近い六人で仲良くなったけど、既に私とmはセットだった。

 カラオケに行ったり、ディズニーに行ったり、原宿に行ったり。思えばJKらしいことなんてほとんどしてこなかった私だけど、mと過ごした時間は、JKそのものだった。部活が忙しいからテスト期間しか予定が合わせられなくて、テスト期間は毎日放課後残って一緒に勉強。週末は近くのモール(1駅先)かマック(徒歩25分)で勉強。勉強しながらクラスのこと、部活のこと、先生のこと、恋愛のこと、色々話すのが本当に楽しかった。
 同じルーティーンで勉強してたはずなのに、何故か私はクラス一位でmは中盤。だけど、それでよかった。だってmは、私が教えた英語と日本史だけは、すごくいい点を取ってくれたから。私が教えたところは絶対テストに出るって、茶化しながら勉強教わるmを見るのが好きだった。

 受験期になると、どのクラスにも一般入試を受ける人は三人しかいないような状況で、私は指定校もAOも公募も選ばず、一般入試の決意をした。mは、全国トップクラスの部活に専念していたこともあって、AOを選んだ。うちの学校では、一般入試は希少な存在だったから、AOを選ぶことの方が普通だったね。

 周りが着実に合格を手にしている中、夏休み明けの私の精神はどんどん脆くなるばかり。でも、mはもうすぐ全国大会。心配なんてかけられないから、接触頻度も減っていった。例年だったらmの愚痴を沢山聞いていたところだったのに、ごめんね。

 結果mの全国大会は晴れ晴れしく幕を閉じて、mにとって高校生活初めての、部活がない日々が訪れた。季節はもう、カーディガンが必須の頃になっていたかな。放課後にエントリーシートと面接練習に追われるmと、ひたすら受験勉強に身を捧げる私。別の方向を見ているようで、そんなこともなくて。
 添削から戻ってくるmを、私は待っていた。普段は放課後に学校で勉強なんてしないけど、mと話したくて、待っていた。勉強勉強の毎日の中で、ほんの少しの安らぎは、mがくれてたんだよ。ありがとう。

 挑戦校の一校だけを受験するという暴挙に出た私の受験も無事終わった。季節は巡って、花粉が飛び始めていた。慢性鼻炎のmと年中花粉症の私。共通点もう一個あったね。

 三月には卒業旅行に行ったけど、私にとって自分たちで計画する旅行は初めてだった。と思ったら、mにとってもそうだったよね。てか、友達同士でディズニーに行ったのも、私もmも互いが初めてだった。私の初めては沢山mで埋め尽くされてたな、いつの間にか。
 卒業旅行では四日間も一緒にいて、狭いベッドで二人でくっついて寝たね。毎日毎日交通費をケチっては歩いて、足パンパンよ。体力あるmはいいけど、私はほぼ一年間座って勉強してただけの日々だったんだから、ちょっとは勘弁してほしかったな~。

 卒業して、大学に入学して、私たちは前ほど互いに鑑賞しなくなった。何かあればすぐに連絡してきたmの恋愛事情も、何も知らないままインスタの投稿で驚くなんてこともあった。あれは少し寂しかったよ。夏休みに一回会ったのが最後だ。もう一年半以上会ってない。


  JK時代は、あんなに毎日一緒にいたのに。あんなに色んなものを共有したのに。人の縁なんて、案外こんなもんなのかな。
 部屋には、mから貰った不器用なアルバムと手紙が沢山ある。携帯には、mと撮った数えきれない写真がある。記憶には、mの無垢な笑顔と涙がいっぱいある。
 そう思ってるのは、実は私だけなのかもね。私だけが、過去にしがみついてるのかも、mはとっくに、私の助けなんていらないくらい大きくなったのに、私はmを世話する習慣から抜け出せない。mに頼られる日常を捨てられない。

 お互い二十歳になったというのに、コロナ禍でお酒を酌み交わすことも出来ないけど、いつか、状況が良くなったら、絶対にまた、あの日から唯一変わらないもの、mの笑顔を見せてください。
 私もそれまでに、少しは成長しておきます。頑張っちゃおうかな。

 最近鼻水が止まらないけれど、お互いこの季節を耐えましょう。どうかご自愛ください。


2021年2月17日 はのと

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