将来の夢を目標にしてくれた高校のu先生 へ

将来の夢を目標にしてくれた高校のu先生 へ

 こんにちは。そろそろ高校は年度末に差し掛かる頃ですね。お忙しいところ失礼いたします。いかがお過ごしでしょうか。

 私は変わらず元気に、一つの目標に向かって精進しています。容易いものではないし、人生初めての挫折を味わうかも知れないけれど、それでも頑張っています。先生が開いてくださった道を、真っすぐ進んでいます。

 高校二年生の頃、先生は突如私の目の前に現れました。整った顔立ちに親しみやすい笑顔。おまけだったのは悪い言葉遣い。後者に引っ張られ、先生の印象は最悪でした。先生としてどうなの?授業中に何の話してるの?てか、そんな態度に何で生徒に人気な訳?生真面目な私が苦手意識を抱くのも、ごく自然な流れだったと思います。

 先生が赴任して来られて一か月ほどが経った頃には、授業中は目を合わせないように下を向き、指名されても俯いたまま淡々と答える。そのくせ毎週の小テストでは満点を取り、授業が終わった瞬間は解放感で教室から飛び出していく。そんな日常が出来上がっていました。今思うと、既に私は先生の手中にいたのでしょうね。

 二年最初のテストでは、クラス一位ではあるものの納得のいくものではありませんでした。特に先生の授業では、満点を目指していたのに9割弱という結果。結局、先生が嫌いなままでは成績も上がりきらないのですね。

 そこから更に一か月経った頃、転機は突然やってきました。本当に突然。誰も予想しなかったタイミングで(過言)、転機と先生が私の下へやってきました。

先生「何?どこが分かんないの?」
私「(あんたには聞いてないんですけど~~~~~~)」
先生「ん?ここ?」
私「あ、はい、。」

 なんやかんやで先生との初会話。先生から話しかけて下さったのは、後にも先にもあの一回だけ。結局、私は先生の思う壺コースに入ってしまいましたね。あ~悔しい。

 あの時、先生は私の直接の質問の答えについて、十分すぎる解説をしてくださりましたね。まあこの一連の出来事すら、忘れているのかも知れません。しかし、もっと驚くべきは、関連するプラスαの知識までくださったことです。勉強の停滞を感じていた私にとっては、大きな一歩でした。先生への苦手意識が膨張していた私にとっても、大きな一歩でした。

 それからです。私が先生の下へ通うようになったのは。授業の疑問を抱えては、先生に解説していただく。いつしか、疑問を見つけることに重きを置いて、先生を困れせてやろうと思っていました。ですが、それ自体が、私の学問への興味、そして理解の定着に繋がっていたのです。先生にはここまで見えていたのでしょうか。

 教室の最善ど真ん中の席だった私に、先生は教卓から前のめりでお話をしてくださりました。高校時代の話、大学時代の話、留学先での話、そして、私におすすすめの大学の話。

「はのとは大学決めてんの?」
「まだここって言うのはないです。大学全然知らないので。」
「◎大学とかどう?学力的にも、学びたい内容的にもいいと思うけど。」

 ◎大学。知っての通り、私がD判定から覆して今通っている大学です。先生の言葉通り、その学校は私に最適な大学でした。でも、先生が教えてくださるまで名前も知りませんでした。

 そして季節は流れ、冬のある日。二度目の転機が訪れます。覚えているでしょうか。あの日先生は私に、「はのとは教員にならないの?」と問うたのです。何になりたいの?先生とかどう?そんな言葉ではなく、教員に”ならないの?”。密かに憧れていたその職。否、小学生の頃から思い描いていた理想像である、先生。
 しかし、自分にとって言葉遣いと態度以外は理想である先生の前で、その夢を口にすることはずっとはばかられていました。だからあの時、先生がそういってくださったことで、私には大きな自信となりました。

 結局先生は、三年の始業式にはいらっしゃいませんでした。別の学校で、第二の私を生み出していることでしょう。時は経ちましたから、第四くらいまではいるかも知れませんね。

 先生の言葉遣いと態度は、先生としては最悪でした。でも、先生という存在に一線引いてしまう私にとっては、他の先生には話せないようなことまで話せてしまう、唯一の存在でした。進路の話は勿論、部活の話、クラスの話、持病の話。何かにつけては先生を職員室から引っ張り出し、最終下校時刻まで話につき合わせていたあの時間こそが、私に取っては青春の1ページでした。
 話につき合わせてたというよりも、先生の話を聞いている時間の方が長かったことは確かですけどね。でも、普段家族以外の年上と話す機会なんでない高校生ですから、先生の話すことはすべて新鮮でした。とても楽しかったし、タメになることも多かったです。

 そして、先生のおかげで、職員室は私のもう一つの居場所になっていました。先生の周りにいる他の先生方との雑談、進路の相談、そうやって、新しい人間関係が広く構築されていました。u先生がいないときも、職員室に入ると色々な先生方が声をかけて下さいました。先生という存在が、少し近いものに感じられるようになりました。

 先生のいない学校は、私にとっては少し寂しく、そして穏やかな場所でした。軽口を言い合う相手が一人減り、職員室に入る理由が一つ減り、好きな授業が一つ減り、自分で解ける問題が少し増えました。

 何年後になるか分かりませんが、先生が与えて下さった目標を達成し、次は先生の生徒ではなく同僚として、顔を合わせられる日を楽しみにしています。


2021年2月14日 はのと  

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