黙ってたって過ぎてゆく - 2020.11.13
食物連鎖のピラミッドは薄氷のバランスの上に成り立っていて、乱獲は生態系を破壊するだけでなく、捕食者にとっても不利益をもたらしかねない。路上喫煙者とその取締りをする人らも、同じような生態系を維持しているに違いない。路上喫煙の罰金は二千円。都心部の路上喫煙者の数を考えればその漁獲高は決して少なくは無いだろう。ただし、短期間での乱獲が続けば、路上喫煙者は絶滅に追いやられ、少なからぬ税収は立ち所に消え去ってしまう。生かさず殺さず搾り取るのだと、上層部が悪い顔でほくそ笑む姿が目に浮かぶようだ。この日記はフィクション、実在の団体とは一切関係のない僕の妄想です。
でも本当に、実際のところはどうなのだろうな。あのオレンジのジャケットに身を包んだ彼らの目的は間違いなく路上喫煙の撲滅と街の治安維持だろうが、仮に完全にクリーンな東京が完成した時、あの雇用は一体どこに向かうのだろう。昔ロシアに住んでいた時に、国が路上生活者や失業者に仕事を斡旋していたことを思い出す。冬は歩道の雪かき、春夏は道路の分離帯に花や草木を植えていた。あの極寒タウンに雪が降らないことなどあり得ないので、あの事業は半永久的に存続していく。
ところが路上喫煙はどうか。街のモラルが高まれば必然、路上喫煙者はいなくなる。次は傘を後ろに振る不届き者や、駅のホームで二列に並ぶところを一人で占有するうつけ者を取締るのだろうか。ありとあらゆる悪を取締り、オレンジジャケットの前では赤子も泣き止む。正しさの化身となった彼らは令和の魔女狩りを断行し、人々から怖れられるのだ。
あなたのおかげで生活苦から抜け出せそうです