『パラサイト』ポン・ジュノ

ポン・ジュノ監督の『パラサイト』を観て以来、頭の中をこの映画に支配されているので、吐き出したいと思う。

一昨年の『万引き家族』昨年の『ジョーカー』に続いてこの作品もまた貧富の差を描いた作品である。(両作ともに良作であり大好きである)

画像2

以下この映画を愛する理由。


・テンポがいい。

テンポというよりはリズムか。メリハリがあり一切の無駄が無く心地よいテンポで映画が進行することに加えて、会話のリズムが心地よい。貧しい家族から発せられる言葉は決して貧しくなく、豊かなボキャブラリーによる彼らの会話劇はもはや快楽とも呼べる。↓素晴らしいですね。


・画作りが美しい。

劇中、常に画面内では上側に富者がおり、下側に貧者がいる。半地下という設定とこの画面設定、素晴らしい。

丘の上に住む富者と半地下に住む貧者。富者が“空気が綺麗になったわ”と喜ぶ大雨で半地下の家は水で一杯になり貧者は避難所暮らしを強いられる。大雨が降ろうが机の下に誰かが隠れていようが決して下を見ようとしない富者。

貧者の長男は階段の上から水が流れ込む我が家を見下ろすことで、2階からホームパーティーを楽しむ富者を見下ろすことである決断を下すのも印象的。

2.35:1というアスペクト比による画面設計は本当に美しい。そして富者の家の窓が2.35:1のアスペクト比で作られているというのだから驚きだ。これぞ最高の額縁構図である。劇中では著名な建築家による豪邸という設定であったが、実際にはポン・ジュノの強いこだわりを表現した変態シネマハウスだ。

美術監督のインタビュー。 https://cinemore.jp/jp/news-feature/1157/article_p1.html

画像1


・素晴らしい雨が降る。

素晴らしい映画の条件とは素晴らしい雨が降ることである、と常々考えているが、この映画でも例に漏れず本当に素晴らしい雨が降る。そして雨が降ると同時に映画が転調する。雨が降ると同時に映画が転調するのは定番の手法であり、100年近く前のミュージカル映画でも新海誠の映画でも定番なのである。

『トップハット』で雨が降るシーン

『言の葉の庭』で雨が降るシーン


・画面内に置かれる小物等への拘り

これは宇野惟正氏のレビューを読んで感じたのだが確かに日本映画では社長や高給取りが型落ちのメルセデスやクラウンに乗っていて白けることが多々ある。この映画で富者が乗るのは黒塗りの最新メルセデスSクラスと息子とのキャンプに最適なレンジローバーである。友人は最新のミニクーパーに乗ってホームパーティーにやってくる。実に生々しくていい。そして唯一登場する日本製品がスノーピークのキャンプギアというのも面白い。


・最高の役者陣

ソン・ガンホについては言うまでもないだろう。『殺人の追憶』のラストカットのような力強い目力は本作のラストでも生かされていた。

画像3

『殺人の追憶』の題材となった連続殺人事件の犯人が昨年捕まり(既に収監されていた別事件の犯人のDNAと一致した)話題になっていたが、そのことについてアトロクにて宇多丸氏がインタビューしていた。ラストカットの目線についても言及しており必聴。

貧者の娘役のパク・ソダム、初めてペ・ドゥナを見たとき以来の衝撃。ドアの前のシーンと便座の上で一服するシーン、あと100回は見たいですね。

画像4

と書いていたら落ち着いてきたのでここまで。最高に面白いからみんな観てね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?