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経験するから伝えられること

ツアーコンダクターの仕事をはじめて
身をもって感じているのは
「経験に勝る知識はない」ということ。

どれだけ観光場所のことを調べ上げても
どれだけ誰かの旅行記を読み込んでも
実際に行くことでしか得られないことがたくさんある。

いまは文章に加え、YouTubeなどの動画コンテンツも多くあり
そういったものを見ていると、なんとなく知ったつもりになってくる。
しかし、動画でその場所を見て雰囲気を感じ取っても
カメラのうしろ側にあるものを知ることはできない。
その場所の気温や匂い、音、自分の足で立ったときにだけ得られるその感触は、
やはり知識や雰囲気を感じただけではどうにも埋めることはできないのだと思う。


私は離島の出身なのだが
そのせいもあってか、これまで日本の離島にあまり興味を持っていなかった。
だいたい島は同じようなものだろう…という先入観で
他の離島を訪れようという気が起きなかったのだ。
けれど、ツアーコンダクターの仕事で長崎県壱岐島に行ったとき
その考えがどれだけ浅はかなものなのかと恥ずかしく思った。

考えてみれば当たり前なことだが
島それぞれに歴史があり、それと共に育った文化がある。
その歴史や文化がつくり出す島の雰囲気は、どこか懐かしさを感じながらも
自分の故郷とは異なる新鮮さを味わうことができた。

壱岐島は古事記にも出てくる歴史が深い島でもある。
遺跡や古墳が多く、小さな島ながらそこらじゅうに神社が創建されている。
小さなほこらまで入れると、1000を超えるほど。
実際にバスで走っていると、案内板があちこちに出てくる。
壱岐島随一の観光名所ともなっている猿岩は
その圧倒的スケールと「本当に猿だな…」という驚き
角度を変えて猿からただの岩へと変貌する瞬間を体感できる。
そのほかにも、左京鼻で断崖絶壁に立った時の足がすくむ感触
月讀神社で白夜月を愛でた神秘的な空間など
実際に経験しなければ伝えられないことが山ほどあった。
目に焼き付いているはずの、陸から見渡す水平線も所かわれば…である。

これはなにも旅行だけに言えることではない。
どんなことにも共通して、
経験しなければ知り得ないことがあり、
知っているだけでは人に伝えられないことがある。

これからの人生は
「知っている」ことよりも「経験した」ことを大切にしていきたい。
そんな経験を発信できる人でありたいと
心に留める気づきを得た40歳春の「経験」。


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