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ネオ・ミドルイースト事情(その二、「運転手は君だ、お客は僕だ」続編)

 中東湾岸会議のメンバーであるオマーン・スルタン国ではタクシードライバー(というか、プロの運転手は全て)はオマーン国籍者のみに限定されるという話の続き。

1 産油国ならではの悩み、それは国民が働かなくなること

  オマーンのみならず、GCC(湾岸諸国会議)のメンバー国は石油や天然ガスなどの化石燃料の輸出国であり各国の歳入は化石燃料の売り上げで賄っている。

  実は1970年代まではそうではなかった。

  例えばオマーンやアラブ首長国連邦のドバイ首長国では小規模な漁業、真珠採取やベドウィンたちによるラクダの放牧で日々の生活を送っていた。

  が、湾岸地域に莫大な石油の埋蔵が確認されるや、それこそ「濡れ手に粟」状態で掘れば掘るほどお金になるから、これまでの漁業やベドウィン生活のようにあくせく汗水垂らして働く必要がなくなる。

  資源最貧国で、小さいころから「勤労こそ美徳」的道徳を学んできた日本からしてみればまさに夢のような話。

  そういう状態が数十年も続いたらどうなるのか?

  言わずと知れた「不労人口」が溢れかえり、働くことの喜びや苦しみを味わうことのないある種特殊な、言葉はきついが怠惰な人々が生まれることとなった。

  その後誰が何の根拠で言い出したのか知らないが、「いずれ地下資源としての化石燃料は枯渇する」という言葉が独り歩きし、湾岸諸国(産油国)は将来に不安を抱え始める。

 政府は、化石燃料が枯渇するよりも早い段階で国民に勤労意欲を植付け、将来に備える必要性を強調し、国民に働くことを強要しだす。

 ところが、それまで怠惰な生活を送ってきた国民が今更汗水垂らして日中摂氏50度を超えるような炎天下で土方仕事などをするはずがない。

 そこで政府が考えたのが仕事内容は比較的楽で、かつ炎天下に汗水垂らして働く必要のない限定的な職種・業種を自国の国籍者に優先的に準備することだった。

これがサウジアラビアにおける「サウダイゼーション」オマーンにおける「オマナイ(オマニ)ゼーション」である。

  これにより「比較的楽な仕事」の代表例として

◎ 乗り物の運転手(四六時中エアコンが効いた車内で運転のみを行う)
 ◎ スーパーや市場でのレジ打ち(エアコンの効いた店内での仕事)
 ◎ 公務員(エアコンの効いた職場で仕事ができる)
 ◎ 外資系企業の事務仕事(エアコンの効いた事務所で仕事ができる)

が準備され、そしてその職(業)種には多国籍者は一切罷りならぬというお達しが出される。

 更に酷いのは、外資系企業に「オマーン人を一定以上雇用しろ」と強制し、達成できない場合はノルマ未達分一人当たり幾らと罰金のような金を徴収する。

 とにかく暑い国なので「エアコンが効いた・・・」という枕詞は必須条件となる。

 かくして、オマーン国内を走るタクシー、トラック、バス、観光用4WDのドライバーは全てオマーン人という状態が完成したのである。

 オマーン人のみがタクシードライバーができる(オマーン人しかできない)という背景には、もう一つの深い意味が。。。

 これは次回の投稿にてご説明させていただきます。

 ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
  (以下次号)






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