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オリンピックと警察活動

 開催前まで賛否両論あった東京2020ですが、それまで開催反対と叫んでいた人々の一部には毎日行われる競技を心待ちにしておられる向きもお有りではないかと拝察します。この平和の祭典ですが、目に見えないところで数々の人々が陰で支えてくれているからこそ毎日こうしてテレビ観戦できているのではないでしょうか?案内・通訳などのボランディア、パソナが独占している役務系、ガードマン等等。警察の活動もその一つです。

1   物理的な治安対策(検問、交通整理、雑踏警備など)

 まずは、物理的警備からです。皆さん全国に警察官(警察庁を除く)が何人いるかご存知ですか?

 令和2年度の警察白書によれば約26万人で、そのうち東京都に勤務する警視庁の警察官は約4万3千人です。このうち東京2020に割ける人員は限られていることから通常このような大規模警備を行う際には全国の道府県警察から応援をもらって任務を遂行します。今回何人の地方警察官が派遣されているかは定かではありませんが、定員が3000人規模の県警だと概ね一個小隊(約20−30人)ではないでしょうか?彼らは、夜通しバスを走らせて首都東京に向かい大会開始前7日から劣悪な宿泊環境(大抵はどこかの小学校の体育館で雑魚寝)と食事環境(毎日弁当。すぐに便秘になる)でオリパラ期間中主に雑踏警備・交通整理や検問業務に日夜従事します。折りからの酷暑、日中立っているだけでクラクラするような暑さの中、車を一台一台検問したり交通整理をして大会の無事終了まで任務を遂行している姿を想像しただけでもご苦労さんの一言が出てきますよね?

2  情報対策(国際テロリズム対策)

 皆さんご存知でしょうか?古いところでは1972年のミュンヘン五輪、新しいところでは1996年のアトランタ五輪の開催期間中に国際テロ事件が発生したことを。

 (警察白書から引用) 

  オリンピック・パラリンピックは、国際的にも極めて注目度の高い行事であり、過去には、昭和47年のドイツ・ミュンヘンオリンピックにおいてイスラエル選手団襲撃事件が、平成8年の米国・アトランタオリンピックにおいてオリンピック百年記念公園爆弾テロ事件が、それぞれ発生している。
我が国は、開催国としての治安責任を全うするために、万全の警備措置を講じて2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の安全・安心を確保する必要がある。その一方で、オリンピック・パラリンピック競技大会は、スポーツの祭典であり、その警備に当たっては、選手や観客が楽しめるものとすることも重要である。警察としては、同大会の安全・安心の確保に向けて、こうした点にも配慮しつつ、大会組織委員会等の関係機関とも連携して、次のとおり政府における枠組みに参画することなどにより、テロ対策等を着実に推進し、警備に万全を期す必要がある。

(引用終わり)

 今回の東京2020でもミュンヘンやアトランタで発生したようなテロ事件が発生する危険性は排除できません。そのために上記のような対策を実施するための元根本となる情報を収集するのが「国際テロリズム対策」に関する情報部隊です。

 日本にはインテリジェンス・コミュニティと呼ばれる情報機関に似たような組織が警察、防衛、外務、内閣府、法務の各省庁にあり、これにこれらを統合する意味で組織された日本版NSCが存在します。そしてこれらの「カウンター・パート」と呼ばれる情報機関が各国に以下のとおり存在しています。

米国(CIA)英国(MI6)フランス(DGSE)イタリア(SISMI)ドイツ(BND)カナダ(CSIS)

 今回の東京2020の国際テロリズム対策としてこれらの国々から最低限1名が来日し、各自の母国からもたらされるテロ対策情報を持ち寄り毎朝合同会議を開催するなどして上記のような悲惨なテロ事件が東京2020で発生しないよう日本のインテリジェンス・コミュニティと緊密に連絡を取りながら国際テロリズム対策を行なっています。

 私は過去にカナダ・カナナスキスで開催された主要先進国首脳会議(通称:サミット)の日本側インテリジェンス代表として単身カナダに渡航して、カナダのCSIS主催による国際テロリズム対策(当時は大流行していた「反グローバリズム対策」)に協力した経験をもっているだけに今回の東京2020で裏方として活躍されている各国のエージェントのご苦労には頭が下がる思いです。

 今回の東京2020を裏で支える警察活動の一端について簡単にお話ししてみました。最後までお読みいただき、ありがとうございました。







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