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ありがとう以外の言葉で感謝を伝える試み。

自宅玄関の土間スペースで開いていた一坪雑貨店「ハニホ堂」は、11月に4日間展示会を行い、それから数日あけて最終営業日を迎えて無事に閉店した。

優柔不断な私にとって、大変だったのは会場の展示レイアウトだった。
「え〜っと、これは保留で、後で考えよ。こっちは〜、えっと適当に並べといて、後でやるわ。ここは、う〜ん、それは明日にでも私が考えるよ」などと虚ろな言葉を吐く私をよそに、仕事を休んで手伝いに来てくれた姉と甥(初日には名古屋から従妹も)は自己判断でテキパキやってくれた。

Twitterに投稿した画像なので文字が入ってますが、当日の展示の様子です。

そんな、最初で最後の展示会。始まってみると、想像していたより多くの(当店比)お客さんが来てくださった。
いつもの方やネットで以前から見てくださっていた方、前に一度訪れて、今回閉店を知って久しぶりに…という方、また、ならまちにある無人書店(普段はIDで入店、イベント時は開放される)「ふうせんかずら」に出店中の『棚音文庫』さんと『うさぎの本棚』さんが知らぬ間にDMをお店に置いて「行ってみてください」と声をかけてくださっていたそうで(涙)、それで知ったという方など、何かしら事前に店をご存知の方が多く来てくだった。

ふうせんかずらさんの案内(裏と表をスキャンしたもの)


お店をしていれば普通のことだけど、展示会では無言で風のように去る方や、扉を開けて中を覗いてすぐに閉める方もチラホラいらした。もしかしたら、ろくに挨拶もしない店主や、混んでいて入りづらい雰囲気に気を悪くされた方も、中にはいらしたかもしれない。

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話が脱線するようだけれど、私はワゴンセールでショーツを買うときについ、可愛い動物の柄やスポーティーで下着っぽくないシンプルな形を選んで、実際に身に着けると変な肉がはみ出たり骨盤にあたって違和感があったりして、ほぼ新品のままタンスで眠らせてしまうことが多い。
一方、何年経っても永遠の一軍というか、見た目はヨレヨレなのに「これが結局一番自分にフィットするわ」という形や素材のものがあり、10買ったうち1つあるかどうかのその「ヒット」に出会えた喜びは大きい。
何の話かというと人との出会いも、少し似ているのかもなって。
自分のお店や創作を面白いと思ってくださる人、さらにわざわざ足を運んでくださる人と出会うのは、ワゴンの山から自分に合うショーツを見つけるよりはるかに難しいことだろう。なんせ、私の方からお客様を見つけたり選ぶことはできない。全て相手の方のお心ひとつなのだから。そう思うとラッキーな出会いに恵まれたなぁ。と会期中と最終日を通してしみじみ感じた。

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展示会の二日前。会場準備の前に、甥と姉を誘い、タクシーで若草山の山頂へ向かった(実はタクシーがなかなか拾えないので、タクシー乗り場までバスに乗ってしまった。何をやっているやら)。

山頂から、自分の住まい(&店)付近がうっすら見える。
映画のワンシーンみたい、と絶景を3人で独占。
撮影は姉。姉は「私毎月ここに登りに来たい!」と繰り返していた。

以前「きたまちお散歩ガイドブック」を制作した際に少し【奈良奥山ドライブウェイ】のことを紹介したので、一度は自分でもドライブウェイ通行体験をしよう(免許も車もないけど)と決めていて、この日ようやく実現したのだった(写真は山頂から歩いた時のもので、ドライブウェイでは写真を撮り忘れ…というか私、スマホを持って出るのを忘れました)。

2020年クラウドファンディングで制作した「きたまちお散歩ガイドブック」。ドライブウェイの会社の方と掲載店の「かじせん」さんで隣り合わせになり、少し紹介(右下)することに。

ドライブウェイは登山道とはまた違うレジャー感や趣があり、帰りの歩き下山も紅葉が美しく空気が美味しいのでハマってしまい、実は10日ほど後にもこの〈タクシーで若草山頂上へ〜徒歩でゆるゆる下山〉を決行。二度とも近鉄奈良駅前や大仏殿前?のタクシー乗り場から二千円ちょっと(通行料530円別)で、徒歩下山時にゲートで別途150円払いました。

その奈良奥山ドライブウェイの方が、「時折お店のホームページを見ていて…それで知って」と、わざわざ展示会を訪れて下さった。偶然、私がドライブウェイ体験をした直後なので、ご縁というのは不思議だ。
他にも、近所のお店の方にはとくに伝えていないのに何人か立ち寄って、というか営業中のはずなのに見に来て下さって(会期中にモーニングや夕食を食べに行ったお店の方なども)、ジーンと来た。

学生時代も社会人になってからも、世の中には気が合うひとばかりいるわけではないし、いくら〈いい人〉や〈自分はその人が好き〉でもしっくり来ずギクシャクすることもある。別の場所で出会っていたらいい流れになれたかもしれないのに、その時たまたま残念な感じになってしまう場合もある。そして、「え、なんで?」という言動の人に会って地味に傷つくことが時々あるからこそ、〈自分と何かが合う人〉のありがたみが一層身に染みる。

私は人に好かれるとか褒められるとか、誰とどれだけ仲良くなるかどうかより、「誰かとほのかな気持ち(善意や好意)を絡めて綿菓子のようなものを作るひととき」を共有するのが嬉しいのかなと…

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ほかにも展示会では、下の画像右奥に見える洋服ラックにかけてある着物地を使った洋服やバッグなどを、「それが似合う人」にそれぞれ持ち帰っていただけたことにも感激した。

手伝いに来てくれた従妹(昔からはにほさんを応援してくれている)が撮影(ヘッダーも)。

この数年、闘病中の友人から託された大切な品々なので、売りたい、と言うより誰かいい人、似合う人いないかなぁと切に思っていたところ、5日間を通して手提げバッグ2種、羽織り1点、バミューダパンツ1点、それらが素敵な人のもとに旅立つのを無事に見届けられて安堵した。奥の襖近くに写っている茶色のワンピースだけが残ったので、それは私が大切に着たい。

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また、印象的な出来事の中から一つ。
以前、ある方が地域住民のためのイベントへの協力依頼に店に来られた際、お断りしたことがあって、それ以来その方は一度もお見えにならず「申し訳なかったな…」と私の記憶の端っこには残っていて…それが先日、展示会で会計を終えられた方が「以前無理なお願い事をしに来た彼女に、こちらにお願いしてみたらと勧めたのは私なんです」と打ち明けてくださり驚いた。せっかくの依頼を断った私の展示会をわざわざ見に来てあたたかな言葉をかけてくださるなんて、自分なら同じように出来るだろうか。その方のお人柄、仕事に対する真摯さが伝わってきて心に響いた。人の本質は、何かがダメだったりうまくいかなかった「その後」にその出来事をどう捉えるかに表れる気がする。

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ところで今回、普段ネット注文で印刷している「ハニホ堂つうしん」を、

右のすみれ色の表紙が展示会用に作った最新のもの。

徒歩数分のところにある新踏社さんという印刷会社に依頼してみた。
いつもはつい、数日で届く安いネットのオンデマンド印刷に頼ってばかりだったけれど、この土地を離れるまでにせっかくだから一度地元で頼んでみようと訪問したら、盲導犬を引退した優しくて愛嬌たっぷり(でもどこかクール笑)なこちらのワンちゃんが出迎えてくれて、人間の皆さんも応対がとてもあったかで。

看板犬ニーナさんの奥の本棚にあるのは盲導犬の育成に売り上げの一部を使われるノートや、奈良公園の鹿をゴミの害から守りたいという思いから生まれた鹿柄のエコバッグなど。

奈良公園の鹿を守るため、ゴミゼロプロジェクトの活動もされていて、11月に刊行されたばかりの冊子『奈良公園の鹿を「殺す」のは、誰か』(リンク先で試し読みできます)という本を読んでハッとすることが多かった。

奈良きたまちの新踏社さんでも購入可能です。1200円。

驚いたのは、私の店の展示会に、会社の皆さん(密を避けて?二手に分かれて)で見にきて下さったこと。普通、印刷を頼んだ客への配慮だとしても少部数の注文だし、よくて「誰か手の空いてる人ちょっと行ってきて〜」となる程度だと思うのだけど、皆さんがそれぞれ会場を丁寧に見て下さって、中には以前にもお店で買い物をして下さった方もいらして、「いい会社だなぁ。皆さんの存在や活動を知る事ができてよかった」と心底思った。

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最後に、お客様にはどの方にも感謝していて個別に取り上げることはできませんが、週に二度の営業で、展示会はたった4日間、最終日も短い営業時間の中で、お忙しい中、また雨の中わざわざ足を運んでくださったことは、宝物のような出来事でした。

中には、御用がなければあまり頻繁に来ないで欲しいです…とお願いして距離ができた方々や、また何がしかのお願い事(作品を置いて欲しいとかイラストを描いて欲しいとか)をお断りするなど、ドライな対応をしてがっかりさせたこともあったかとは思いますが、様々な出来事から創作のヒントを得られて、またあたたかな感想や後々4コマ漫画にしたくなるようなネタもいただき、何より気遣いや優しさをいただいて、園児から人生の大先輩の方まで、様々な方々に出会えてよかったです。

展示会や最終日に限らず、差し入れや手土産、お手紙、遠方からお越しいただいたり、2020年のクラウドファンディングの際にご支援いただいたことも含め、助けられました。
お店を通していただいた優しさや真心を、私が直接お返しすることはできそうにありませんが、善き人にはきっとめぐりめぐって絶対にいい事がある、きっと何かしらの幸せが待っている、そう信じています(他力本願!笑)。

おまけ。

展示会、というからにはと一応ハニホ堂の世界的なファイルを置きました。

 展示会中も基本は奥にいたのでお客さんの様子はあまり分からなかったのですが、「ふふっ、ははは」という笑い声やシャッター音が隣室から聞こえたりすると「何を見て笑ってくださってるのか」とソワソワ。そんな私のために姉がこっそり隙間から様子を伺い「じっくり、一つ一つ見てくださっているよ」と教えてくれました。名古屋から従妹や、東京から、昔4コマ仕事の担当編集だった人(今は友人)が見にきてくれて、「5分で知るハニホ堂の世界」をじっくり見てくれたのも嬉しかった。姉が展示しながら「あ、これ欲しい。私が買おう」と開店直前に予約のメモを書いているのに笑ったり…
会計時にあたたかな声をかけてくださったり、展示室から聞こえる朗らかな話し声、SNSに「行ってよかった」と書いてくださった方や、その後立体はにほさんを連れてイベントに参加してくださった様子を載せてくださるお店の方もいらして、こんなお店をやってくれてありがとう的なお礼をお手紙や直接伝えてくださった方も何人かおられて、見えないメダルをかけてもらうような贅沢な気分になれました。

両親を相次いで見送ってから相続や遺品整理などをして、とりあえず早く実家を出なければならない、そして終わらない遺品整理の延長(ガラクタや捨てられない味のあるものを展示)でお店をしていたようなところがあるので、知らぬ間にずっと走り続けて、クラウドファンディングにしても最新のZINE創作にしても、何かコツコツ毎日を大切にして休みなくやり続けないと許されないような気でいたのかなとも思います。あまり没頭すると帯状疱疹が出てしまうのでヒヤヒヤしましたが、大丈夫だったので、良い2年だったのだろうと。
それでも店を閉めてホッとするというか、店そのものがどうこうではなく、次の引っ越しのために整理していて気持ちの何かが解れるというか、やっと今度こそ本当の意味で、新天地で自由な心で新しいことを始められるかなと、そんな心境です。
来年はのんびり無愛想に生きよう〜(笑)でも毎日を目標に4コマを描くぞと。

最後まで封印した言葉をここで。