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初心に戻る。

奥の部屋で仕事をしながら、玄関付近で一坪のお店をするようになってから一年半と少し。

お店というか、どちらかというと「古民家の土間で時々やっているガレージセール」って感じですが。

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以前、京都の北野天満宮で毎月25日に開かれる市「天神さん」へ出掛けた時に、露店から結構離れた民家の玄関脇にもひっそり食器などが並べられ、寄せ集めの紙袋と貯金箱の横に置かれた厚紙に「どれでも50円」「こちらはご自由にどうぞ」などとあって、なんかいいいなぁと思ったことがあって。

ある一軒では本が入った段ボールに「ここにある本は今日中に古紙回収に出しますので、よかったら無料でお持ち帰りください」と書いてあり、その隣のハンガーラックに幅広い世代の洋服(家族分?)が吊ってあったりして。

その時500円で買ったワンピースを愛用している私。今、自分がやっている店の原点はあの縁日の外れの住宅地のイメージなのか、誰も来なかった日に「このところさっぱりだね…どうしたものか」と思うよりむしろ、「さて、そろそろ表の戸を閉めようか。やれやれ、なんだかんだ気ぃ張ってたからコーヒー飲も」とホッとしたりして。

もう一つ、私が真似しているのは、以前千葉・佐倉であるデザイナーさんが営んでおられた仕事場兼古雑貨販売スペース?で、ほとんどのものに値札はついておらず、こちらが尋ねてようやく「それは…100円でいいですよ」「それはねぇ、300…円くらいかな」とその場でテキトーに思いついている様子が面白くて「なぜ値段をつけてないんですか?」と聞いたら「売りたくない人には〈それは飾ってるだけなんですよ〉って言うんですよ」と飄々と。

そこで300円で売ってもらった「干支合わせ」が、後日お洒落な古書店で1000円の値がついていたり、ヤフオクで2000円近くなっていることを知って私はホッとしたのだけれど、それは自分が安く買えたことへの安堵ではなくて、「そんな値がつくものを、安く売りすぎてしまう無頓着さ。私も安くしすぎてもあのお兄さんほどではないだろうから、大丈夫だ〜」という「ホッ」なのだった。

姉が最近、「ハニホ堂みたいなパン屋さんが近所にあって…」としょっちゅう話題にする店は、「どれでも一個100円のパン屋さんなのに、どれだけ買っても、10個以上買っても〈えっと900円で…〉とか、ろくに数えないで〈そしたら…700円で〉とか言って絶対に千円超えないの。そんなので大丈夫?って思うんだけど、夕方までには絶対売り切れてるの!すごい!」のだそうだ。いい人すぎるのかテキトーなのか、はたまたちゃっかりした戦略かはともかく、そのパン屋さんはハニホ堂とは違って、本当に安くて親切だと思う。

実は姉は知らないだけで、うちはそう安くも親切でもない。
他のお店でもっと安く(たとえば100円などで)売っているレコードに300円の値をつけたり、50円のぬいぐるみの横に900円の人形を置いていたりする。お釣りを渡し忘れたりもする。ただ、あまりに10円、50円というお客さんが続いた後に650円くらい買ってくれる方がおられたりすると、600円でいいです〜とか、ポストカード(100円)は一枚おまけです〜とか、どうかしてるんじゃないのという値引きをしてしまう。普段の仕事とは桁が違うというか、10円や30円などの方が続くと頭が麻痺して、400円以上の方に「すごい買い物をしていただいた!」と恐縮したり、3000円程度の人の後に600円買ってくれた人に「どうも〜」とくじ引きさえ勧めずにお見送りしたり。素人感覚があり過ぎて、まぁいろんな「うっかり」が多すぎて不公平なこともあるかもしれない。キチンとしなきゃなぁと思う点が色々とある。でも、そう思えば思うほど、「店を開ける」ことにハードルが上がって閉める日が増えてしまうような…

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今日なぜこんな話を書いているかというと、先日、お客さんが30円だと思って買おうとされたものが200円とわかるとギョッとして「じゃあ、やめます」と言われたことがあって、「200円でも高いと思わせてしまう店って何…」と頭を抱えてしまったもので(いや、さんざんおまけしたり値引き、サービスしてしまっている自分のせいなんですけど…)。

他にも、いつも安くしていただいて悪くて…と結構なお菓子をいただいたり、寄付のような意味合い?でお金を置いて行こうとされる方がちらほらいらして、やはり安すぎはお互いにとって問題があるのかなと、このところ思い始めた私。

そもそも、このお店を始めた大きなきっかけの一つは、仕事でいただくサンプルの雑貨がどうしても部屋で嵩張ってしまうので、欲しいと思ってくださる方に「いい形で」お譲りしたいということだった。お店をする以前は、フリマに出したり、お子さんのいる友人宅や親戚に送ったり忘年会などに持ち込んでビンゴの景品にしてもらったり、とにかく年中そのことに追われて、「どうしよう増えてきたなぁ…」ばかり考えていた記憶がある。

いっそサンプルを受け取らないという手もあるのだけれど、自分で直接作業した以外に、デザインやイラストを一部利用されて他の商品に展開されることも多いので、その利用料をくまなく請求できているかの確認のために、たまに売り場で「何これ聞いてない」という発見があったりするのを避けるために、量産品についてはなるべく送っていただいている…というのが長年続いているのです。

かつて、あるフリマ会場で、もともと安い値をつけているコーナーのものを、勝手に10個以上掴んで「これ全部で10円にして。はい10円ここ置くね」と強引に持っていこうとする人が結構いて、フリマに参加するたび「人間嫌い病」が悪化したのだけれど、今、お店でくじ引きをしてサンプルを丁寧に選んでくださるお客さんの様子に、「ああ、ものの扱い方がぞんざいじゃない人、きちんとした人が多いなぁ。この街の落ち着いた佇まいや、古い建物がいい方を招いてくれているのかなぁ…」と感嘆する。

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さて。そんな、ガラクタや「くじ引き」中心のこのお店で、このたび2016年ごろから続けている木工制作のFQDESIGN 奥田さんとのコラボ、ISSHOシリーズの商品を、レトロなショーケースで展示することになりました。

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以前からネットショップのiichiでも販売していただいているシリーズだけれど、開店当初は古雑貨やガラクタ中心のこの店に置くと場違いで「安売りできるものではないし、ここでは作品の良さが伝わらないかもしれない」と思っていて…

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けれど、「安いものばかり」ってのもなぁと思い直したのが一つと、もう一つは小さなお子さんがくじ引きのたびに本の箱を避けて畳に上がって身を乗り出して…というスタイルがとても危なく選びづらそうなので、安全のためにも、くじ引き関係を床付近に下ろして、空いたスペースに奥田さんにご無理を言って制作をお願いした作品を展示することに。

色とりどりの布のコースターは、もともと店に置いている「缶バッジ」を制作してくださった福島県相馬市の工房もくもくさんのメンバーによる一点ものの作品で、自分ではまず思いつかない配色が端正な木製コースタートレイと合うので、飾っているだけで幸せな気持ちになる。こちらもお願いして特別に制作していただいたものです。表にかけている「のれん」も、同じ「さをり織り」です。

実際に飾ってみて数日ですが、まぁどなたも見えていても見ていないような(笑)。10円〜300円くらいのものが中心のこの店で、またくじ引きを目当てに来る方には、そこに何を置こうが、風景の一部なのだろうなと。逆の立場ならきっと自分もそうだと思うので、それで全然問題ないなぁとも思うんですが、この空間が変化することで私自身の気持ちが変わるので、きっと、それが一番大事なんでしょう。

先日、長く闘病中の友人から電話があり、「古い反物を使ったり着物をリフォームした洋服がたくさんあって、この先それらをどう処分しようかとずっと悩んでいたんだけど、お店をやってるって聞いたから、もし置いてもらえるなら古着として売ってよ。ダメなものは捨ててもいいからさぁ…」と相談された。彼女が病気を抱えているからというより、誰しも先々の荷物整理については考えることだろう。聞けば、東日本大震災のあと、売り物にできなくなった反物を知人から譲り受け、色々作ってみたそうだ。「ぜひ、いつでも手放したくなったらどうぞ。捨てたりせず大切にするし、売れそうなら売るよ〜」と伝えると「よかったぁ〜ずっとそれが気がかりだったの」と喜ぶ声がして、私の方こそ、今こんなことをしていてよかったと思った。

着物柄の洋服を置いて売れるかというと、今の店の客層では難しいと思うけれど、そんな目先のことだけを気にして展示内容が小さくまとまるのはつまらない。

おそらく後2年ほどしたら引っ越すので、それまでは自分の尺度で、この空間や時間をエンジョイしたい。

この記事をお客さんがご覧になることはないかなと思うんですが、ハニホ堂は今後、おまけや値引きをしすぎないよう気を付けます。と同時に、時々お釣りを渡し忘れるようなことは今後もあると思うので、「あれ、合計額違うんでは?」とか「お釣り出てこないな…」という場合は遠慮なく声かけてくださいませ(言い訳っぽいですが宣言だけしてみた)。

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