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【家族通信】20240403 本当は すまないと思ってる

 頭の中で、スガシカオがぐるぐる回っている。

うまく話ができなくて 本当は すまないと思ってる
しばらく 悩んでもみたけど そのうち疲れて眠ってる

スガシカオ "Happy Birthday"

 回っているというか、”何度も顔を出す”という表現が正しい。
 何度も、何度も話そうとするのに、はじめに戻る。
「うまく話ができなくて」

 スガシカオは、曲を作ったあとに歌詞を載せる。という話を聞いたことがある。

 この曲は、名探偵コナンの最初の映画「時計じかけの摩天楼」の主題歌となっていて(歌唱しているのは杏子さん)
 「時計じかけの摩天楼」は、工藤新一の誕生日の物語なので、”Happy Birthday”なのだろうけれど。
 この歌詞は、見つめるたびに考えてしまう。

 工藤新一が、今は江戸川コナンであることを「うまく話せなくて」と思えば、すべて納得できる。
 あるいは、コナンとして、新一の気持ちをうまく話せないとか。

 そういう側面も確かにあるのだろうけれど、読めば読むほど、もっとありふれた気怠さのような気がしてならない。

 1997年、世界は今よりもっと気怠かった。
 世界はきっと、2000年に滅びるのだと、どこかで誰かは信じて、みながどこかで流されていた。
 それでも世界は急速に回転して、小学生だったわたしは、ワープロで日記を書いていた。フロッピーに保存して。ベッドの上で。
 あまり変わっていないのかもしれない。今は、健やかであろうと”務めている”だけで、世界が勝手に変わったような、いや実際に変わったのだけれど。


何か小さなトラブルで 人だかりにのみこまれ
誰かのつまらないジョークに ほんの少しだけ笑った

スガシカオ "Happy Birthday"

 この横顔に、見覚えがある。
 それは誰か親しい人の、諦めに似た笑顔のような気もするけれど、すべてを投げ出したわたしも、いつかこんな顔をしていた。
 投げ出したくせに、ほっとしたりして
 嘘を吐くことにばっかり慣れてゆく。

 嘘を吐くことにはコツがあって、それを「真実だ」と思い込むことだ。
 そして「真実だ」と思い込むにもコツがあって、それは「嘘の中に、ほんの少しの真実を混ぜること」
 だからいずれ、何が真実かもわからなくなる。
 嘘とは、まず手前を騙すことから始めてゆく。


 何度も何かを書こうと思って、結局もう「うまく話せない」を書くしかないという、情けない状態になってしまった。
 わたしはわたしを、世界でいちばん情けないと思っている。
 「できること」を数えることが、苦手なのだ。
 あるいは「できたこと」。

 今日も、何もしていないながら(やりたいことの半分もできていない)、レターパックを買って、それに詰めるべき書類も準備して、今月号の折本名刺の工作も終わった。新しいフライヤーの入稿をして、そのご報告の連絡も入れた。
 洗濯をして風呂に入ったのはさっきで、それもえらかったと言える。
 ほんとうに苦しいとき、わたしは風呂に入れない。


 一年前、ほとんど始めてcanvaで作ったデータを見つけたら、ガタガタすぎてびっくりした。
 そこは揃えようよ!っていうのも、面倒くさすぎて放置して
 美しさというのは、たいてい手間の先にあるのだ。何事にも。
 おとなになって、自分の未熟さや、できることの少なさに絶望するときは、たいてい「手間を惜しんでいる」からだと思う。字が汚いのは、丁寧に書かないから。
 いまの作業が行き詰まっているのも、手を掛けていないから。
 たぶん、それだけのことなんだと思う。

 兎にも角にも、一年前のわたしは「文字情報と画像を含むチラシのようなものを自分で作れたこと」に感動していた。
 それから考えてみれば、折本名刺も作れるようになったし、印刷会社に自分で発注かけられるようにもなって、挙句の果てにはヒトサマのフライヤーを作ったりしているので、1年間でエラく成長したワケ。なのだけれど。
 今日もグズグズ過ごしてしまったなあ。という思いを、繰り返している。
 誰か代わりに、わたしのことを褒めてくれ。
 君のことは、わたしが褒める。

 誰かの願いを叶えることは得意なのに、自分のことはうまくいかない。

 友達が欲しいって言ってたマグカップ、別の友達に訊いてみたら、すぐに取り置きしてもらえたし
 頼み事をした後輩は「ずっとやってみたかったことだったんです」って喜んでくれたし
 いやはや、本当によかったのである。

 わたしもきちんと「マグカップが欲しい」とか、「ずっとやってみたかったこと」を掲げてゆけばいいんだと思う。
 願いがなければ、願いは叶わない。
 やるべきことが、ただ積まれてゆくだけで

 そしてわたしは今日も、うまく話ができない。



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