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教え

茎の細いスカビオサが、頭を垂れている。
その横で、どっしりと構えた茎の、ガーベラがこちらを向いている。

茎の細いのは、自身の重さに耐えきれなくなって、くたりと折れてしまうことがある。
茎が太くても、しゅうっとダメになることもある。
カラーが、2本ともダメになったときは悲しかった。
あれは、茎の中が空洞だった。
かと思えば。スイートピーの茎は細くて、先月に買ったやつが、まだきちんと咲いている。

「強く生きるよ」と、わたしは言った。

おじさんは笑って、「やさしく生きなさい」と言ってくれた。
あの夜のことを、いまでも覚えているし、思い出す。

強くならなくては、と思う。
そのたびに、ああ違った、と思う。
やさしく生きなければならない。
他者にやさしくすること。
それはとても健やかなことだったし、
そのための自身にもやさしくする必要がある、ということも学んだ。

やさしさは、古今東西の正義である。
というふうに、言えるような世界を生きてゆきたかった。
でも実際に、そうだと思う。そうであればいい、と思う。
やさしさが、いちばん強いのだ。

あの言葉をもらってから何年も経って
折れてしまったいくつもの花を見ながら

いま、わたしは愚かにも「強く生きたい」と思っている。

強く生きることが、自分と何かを傷つけても
やさしさに抱かれない人生だとしても
幼い頃の、気力と体力を持ち合わせないとしても
ブルドーザーみたいに、がんがんぐいぐい進んでゆけるような
わたしは、強さが欲しい。

枯れない細い茎のスイートピーを見ながら
わたしは、強さの意味を考えている。



※now plyaing




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