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旧日銀京都支店に見る、王道を行く秘訣

昨日、建築家、曾禰達蔵さんの建築についてnoteに書きました。
今日は、曾禰さんの東大時代の同期であり、東京駅や日銀本店(トップの画像です)を設計した、辰野金吾さんの建築について書こうかと思います。

お題になるのはこちら、京都文化博物館別館こと、
旧日本銀行京都支店です!

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出会った日は雨天日で、雨雲に赤煉瓦(あかれんが)がとても映えていました。
実は多くの日銀建築は白い石貼りで、煉瓦な日銀はとてもレア!
これが他県の日銀のように白い石貼りだったら、雲に溶け込んで写真映えは期待できなかったでしょう(^^♪

辰野金吾さんと言えば、東京駅をイメージして頂くと分かりやすい、「辰野式」と呼ばれる、写真のような赤煉瓦に白ストライプという模様を始めた人物で、国家的建築を多数設計するうちに、それを個性とし、ついにはそれを煉瓦模様の王道にまで押し上げてしまった人物です。

本建築の協働設計者である弟子の長野宇平治も、煉瓦でなくとも、その王道精神をしっかりと引き継いだ作品を多く残しています。

そんな、国家的建築を多数設計する立場となった、その秘密は何なのか?
緑青の銅板と赤煉瓦のコントラスト?
天然スレートの屋根?
覆輪目地の外壁?

その秘密は、窓の幅と外壁の厚みにあるとにらみました。
こちらの写真の、地上階と上階の窓にご注目下さい。

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地上階は雨戸で開口を塞ぎ、上階は雨戸を開いて窓が見える状態。
そして雨戸は縦に4分割され、折れ戸となって開くようです。つまり雨戸は、パカ、パカ、と開くと言うより、パタン、パタンと両脇に折りたたむように開くわけです。ここまで意味、お分かり頂けますか??(笑)

そして折りたたんだときの雨戸の幅が、窓枠から装飾(白い石材の持ち送り)までの距離とぴたりと一致しています。
これはつまり、窓の幅の1/4の長さが、装飾を除いた壁厚の、窓の外の幅と一致しているということ。
窓幅と壁厚に、比例関係があったのです!

確かに古典的建築は、ある寸法を基準にその他の寸法に比例関係を持たせる手法をよく使います。窓の幅は、窓の高さの1/4倍、柱の幅の4/3倍、みたいな。それは真正面から見たとき、見た目にバランスを持たせるかどうかの話。

今回の場合、真正面からみたとき、窓の幅と壁の厚みは同時に見えません。だから僕は、そこに比例関係があることを想像していませんでした。言うなれば、窓幅はデザイン屋、壁の厚みは構造屋が決めることだと、無意識に分離させていたのかもしれません。

今回取り上げた旧日銀京都支店には、それらにもしっかりした比例関係がありました。ここまで手を抜かずに全体を1つの法則で統一しきっているからこそ、多くの人が安定を感じる、王道辰野式の、王道たる所以が潜んでいるのではないでしょうか。

王道とは、当たり前のことを「徹底して」当たり前にしていくこと。徹底すると、見る者も気が付かないけど、無意識に求めている領域にたどり着く?

まだまだ自分は甘いことを認識させて頂いた次第です。

(20210412)

位置:京都市、三条通りと高倉通りの交差点


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