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ヒガンバナとリコリス・リコイル~第三回 「人の意思、triploidy」

ごきげんよう、はねおかです。
このnoteも第三回目となりました。

皆さんは、スイカの種を見たことがありますか?
では、ブドウの種を見たことがありますか?

見たことある方が多いと思います。

では、ヒガンバナの種を見たことがありますか?

ヒガンバナは種子を残しません。
それは、ヒガンバナが三倍体植物だからです。

三倍体植物は、その名の通り染色体数が三の倍数になっている植物です。
三倍体植物は生殖細胞を作る際に、正常に減数分裂が行われないため、種子を残せない不稔性の植物となります。

詳しく話すと生物学的な話になってしまうので、詳細はこの辺りとしておいて…

とにかく、三倍体植物は種子を残せない、と覚えておいてください。

先程挙げたスイカやブドウの品種には、種のないものもあります。
これらは人為的に三倍体植物にしたために発生したものです。
種無しスイカは四倍体と二倍体をかけあわせて六倍体のものを作り、種無しブドウはジベレリン処理を行い、それぞれ作り出します。
食べやすさや、果実の肥大化などの理由で作り出されます。

ヒガンバナは、珍しい「自然発生した三倍体植物」として有名です。
他にはシャガ(アヤメ科アヤメ属 学名:Iris japonica)など少数が知られる程度です。

では、ヒガンバナはどのようにして子孫を残すのでしょうか?

ヒガンバナは鱗茎(要は球根)を株分けすることで増やすことができます。
花が枯れたあとに鱗茎を掘り返し、増えた鱗茎を分球させて植えてやれば完了です。
育成に手間もかからないので、園芸初心者も育てやすいでしょう。

ちなみにですが、このnoteを書くにあたってヒガンバナの球根を買いに行ったのですが、植え付け時期でないからか売っていませんでした。

さて、前回のnoteでは「ヒガンバナには毒性がある」という話をしました。

田んぼや畑にヒガンバナが植えられているのを見たことがある方もいらっしゃると思いますが、それらはヒガンバナの毒性のためにわざと植えられたとされています。
鱗茎に含まれる毒が、田畑を荒らす害獣除けになるとされているからです。

三倍体植物であるが故に自ら繁殖手段を持たず、人の手によってのみ生息範囲を拡大したヒガンバナ。
よって、人のいないところにはヒガンバナは生息しません。

リコリス・リコイルの世界においても、人のいるところにのみリコリスは存在します。
社会正義実現のため、人のいるところに巣食う悪を排除するために。
平和な日本、という、誰もが望む意思のために。

死人花、葬式花という、不吉な名前を付けられても咲くヒガンバナのように。

ですが、希望もありました。

第9話 What's done is doneでは、人工心臓を破壊された千束の新たな人工心臓を確保するため、たきながDAへ復帰することを決意しました。

吉松が用意した人工心臓。
真島と繋がっているであろう吉松を探すため、同じく真島の身柄を捜索しているDA。
そのDAに戻れば、吉松にも接触できる。
余命宣告をされた千束との残り少ない時間を捨ててでも、人工心臓の存在に賭けたたきな。

クルミやミズキのバックアップ。
そしてミカの手によって、人工心臓は千束の元へ渡りました。

千束には生きてほしい。

これは、たきなの意思であり、喫茶リコリコのメンバー全員の意思でもあります。

人の意志により生息し続けたヒガンバナ。
人の意思により活動を続けるリコリス。
人の意思により生きることができた千束。

受け継がれた意思が、物語を持つ。
そう思えてなりません。

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