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【雑記】全てを捨てた日〜第二日目

バーベナ(宿根バーベナ  学名:Verbena rigida Spreng.)
クマツヅラ科の一年草および多年草の総称
花言葉は「家族の和合」

全てを捨てて実家を後にした僕が向かったのは、サービスエリアの駐車場だった。
バンの後ろのシートを倒せばフラットになる。
そこに、持ち込んだ毛布を敷けば、睡眠スペースの出来上がりだ。

横になると、僕を異変が襲う。
激しい動悸と嘔吐。
嘔吐しようにも、失踪を決意してから何も喉を通らなかった。
そんな小心者の胃の中には、何も無い。
出すもののない嘔吐は、胃の痙攣だけを引き起こす。
僕は嘔吐が苦手だ。後々調べてみると、嘔吐恐怖症なる症状があるそうだ。
あまりの辛さに、僕は生まれて初めて119番通報をした。

場所を伝えなくとも、スマートフォンのGPSから現在地情報を取得。
遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた。

「情けない」
これが一番の感想だった。

このまま実家に逆戻りなど、情けない事この上ない。
しかし、この苦痛は耐え難かった。

虐げられても、家族は家族だから、離れる事に抵抗があったのか―

程なくして救急車が到着したが、一つ問題があった。
搬送先がないのである。

僕は田舎にいたから、コロナ騒ぎは都会の話、対岸の火事だった。
しかし、都市部では病床が埋まっているのだと。

しばし横になり、救急隊員と会話をすると、症状も落ち着いてきた。

「自分で帰れます。大丈夫です」
僕はそう言うと、救急隊員にはお帰りいただいた。

残された僕は、車を少し走らせてから、別のサービスエリアの駐車場で一夜を明かした。
今思うと、これを乗り越えられるかどうか。これが人生の分かれ目だったと思う。

この日以降、睡眠前に吐き気を催す事はなくなった。
僕の車上生活者人生の始まりだった。

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